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第157話 『カルミア村での再会』





 感動の再会を目の当たりにして、私は思わず泣いてしまった。


 ――――リアとミラール君の再会。


 二人はお互い無事だった事を確認すると、抱きしめ合った。話を聞くと、ミラール君の他にも3人がエスカルテの街で元気よく生活しているそうだ。そして、もう一つの重大ニュース! リアはこの話を聞いて、天が裂けそうな程わんわんと泣いて喜んだ。なんと、リアのお姉さんであるルキアが生きていたのだ。


 しかもこれも重ねて驚いた事だけど、そのリアのお姉さんルキアは、今はエスカルテの街で皆と暮らしている訳ではないらしい。



「お姉ちゃんは! お姉ちゃんは何処にいるんですか?」



 縋りつくように、必死にバーンさんに問いただすリア。うーーんと、唸るバーンさん。すぐ教えてあげればいいのに、何か問題があるのだろうか?」



「お願いです、バーンさん! お姉ちゃんが何処にいるか、教えてください! お姉ちゃんは、もう……私の唯一の肉親なんです!」

 


 ミラール君からもバーンさんに願い出た。



「師匠! 僕からもお願いです! リアに……どうか、リアにルキアの事を教えてやってください! それで、何かあったとしても僕が全責任を負いますから!」


「そうだな。まあ、セシリアは国王陛下直轄の王宮メイドだっていうし、テトラも同じく王宮メイドだ。リアとルキアの事を考えても、言っちまっても問題はなさそうだしな。特別に喋ってもいいかな」



 セシリアと顔を見合わせた。そんなにこの姉妹の事が重要な事なのだろうか。それにリアのお姉さんの事を話すのに、私達が王宮メイドって事といったい何の関係があるのだろうか。


 次のバーンさんの一言で、私とセシリアはバーンさんが唸っていた理由を要約理解する事ができた。



「実はな。ルキアは、アテナとパーティーを組んで冒険者をやっているんだ」


「アテナ? アテナって……」


「ま……まさか!!」



 セシリアは、驚いて立ち上がったが、あまりの事に一瞬よろめいた。私も同様で、口が開いたままになっている。



「アテナ・クラインベルト。この国の第二王女殿下だ。アテナ王女は、冒険やキャンプが大好きという変わり者で……ってメイドさんは、知っているんだっけな。まあ兎にも角にもルキアは、アテナ王女といるって事だ。安心しろ」


「アテナ王女様……」



 そう言ったリアにセシリアが声をかける。



「良かったわね。リア。アテナ様は、物凄くお優しくて慈愛に満ちた方よ。それにとんでもない剣の達人。ルキアにとって、アテナ様のお側にいるという事は、一番安全だと断言してもいい事だわ」



 それを聞いて、驚くリア。王女様と一緒に行動を共にしているというだけでも、おつりがくる程に驚く事なのだからそれも理解できる。更にミラール君が言った。



「僕達はあの日、カルミア村が襲われた日に奴隷商が雇った賊に捕まって、奴隷にされて売り飛ばされるところだったんだ。しかも、その賊は僕達を捕らえた後、人を人と思わない扱いをして…………レーニとモロは死んでしまった」


「うそ!! そんな嘘でしょ? レーニとモロが!!」


「僕達も死ぬ一歩手前だったよ。でもそんな状態のまま馬車で運ばれていた時、たまたま出くわしたアテナに助けてもらったんだ。僕にルキア。クウにルン。それにロン。アテナは、5人の命を助けてくれた。僕達を救ってくれて、傷の手当てやご飯まで作ってくれた……」



 アテナ様の事を話すミラールの目が潤んでいる。アテナ様は、やっぱりアテナ様だ。慈愛に満ちた優しい女神のような王女。



「僕達は、皆アテナが大好きだ。姉のように慕ってもいる。そんな人に、ルキアは冒険者になりたいと言って好きでついて行ったんだ。だから……とりあえず、ルキアの事は安心して欲しい」


「…………ルキア……お姉ちゃん…………」



 私はリアの肩に手を置いた。



「お姉さんに会いに行きたい?」



 リアは俯いて暫くした後、首を横に振った。



「本音はすぐにでも会いに行きたいですが、まずはこのカルミア村に平和を取り戻したいです。だからテトラさん、セシリアさん……それまでどうか私に力を貸して下さい」



 私はにっこり笑って頷いた。セシリアも続ける。



「カルミア村の件が解決したら、エスカルテの街へ向かいましょう。リアは、会いたい人もいるでしょう。私達も一緒にいくから」


「ありがとうございます。セシリアさん、テトラさん」



 リアとミラール君、そしてリアのお姉さんのルキアの話が一通りできた所で、バーンさんの仲間と思われる男が1人、バーンさんに何か伝えに戻ってきた。エスカルテの街の冒険者ギルドから来た者は、他に5、6人いたようだったけれど――今は、捕らえた盗賊達を見張って尋問している。


 バーンさんが手を叩く。



「ちょっと皆注目してくれい。賊共のアジトが解った。どうやら『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』は、この王国に蔓延る盗賊団のアジトを利用して支部にしているようだ。ここから馬を少し飛ばした距離に、そのアジトがあるそうだ」



 リアは、真っすぐにバーンさんの目を見つめて聞いた。



「そこに……そこに、私のお父さんやお母さん、レーニやモロ、村の人達の命を奪った人達がいるんですね」


「そうだ。いる。俺はこれからそこへ行って、そいつらにこれまで自分がやった事への責任を取らせに行ってくる。誰だって、ちゃんとやった事の責任はとらにゃならんからな」


「…………」


「ここへ一緒に来た俺以外のギルドの奴らには、今捕らえている盗賊共をエスカルテの街へ護送し、王国へ報告しに行ってもらう。そのあと、リオリヨンの街の冒険者ギルドなど、他のギルドへも報告してもらわにゃならん。だから、盗賊団のアジトへは俺とミラールで行く事になるんだ……だから……」



 バーンさんはそう言って私とセシリアの方をチラチラと見てきた。わかってますよ! ここまで来たら私達も戦います! リアやミラール君、パルマンさんにカルミア村の皆さんを放ってはおけない。



「バーンさん、私達も一緒に行きます!」


「そうね、ここまで来たんだからそれがいいわ。私は兎も角、テトラはかなりの戦闘力になると思うわ。一緒に行きましょう」


「おおーーやった!! 一緒に来てくれるか、ありがたいね! じゃあ、ひとつよろしく頼む!」



 バーンさんと握手を交わそうとした所でリアが言った。



「私も行きます!」


「お…おい、リア……」


「いいの、ミラール! 私も絶対に役に立ちますので連れて行ってください!」



 思い切って決断したという、リアの表情。バーンさんが「どうする?」って顔で私とセシリアの顔を見た。


 盗賊団のアジトっていう位だから、もちろんそこには盗賊が沢山いるだろう。できれば、リアにはそんな危険な場所へは連れて行かず、このカルミア村で待っていて欲しいけど…………


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