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第156話 『正義の味方』




 村に侵入した盗賊団を、背後に回り込んでから攻撃した。2人倒すと、残りの6人は武器を抜いて構えた。



「なにもんだ!! 貴様!!」


「あなた達は盗賊団ですね。私は正義の味方です!」


「正義の味方だと? ふざけやがって…………何処かのメイドがか?」



 しかし盗賊は、私の手に持つ涯角槍を見て異常に警戒する。以前のように、モップやデッキブラシを持って構えていれば、何処かのメイドが何かの為に戦おうとしている位にしか思わないのかもしれない。だけど、涯角槍なんて一級品の槍を、手に持ち戦おうとする者なんてそうそうはいない。簡単に手に入る武器でもないし、警戒をしている。だけど、盗賊達は更に次の私の質問で、警戒をもっと強める。



「あなた達は、『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』という盗賊団ですか? だとしたら、あなた達の行いを許せません!」


「お前が持っている武器は、一介のメイドが手に持っているような物でもないし、俺達の事を詮索するのも普通は考えられない。キサマ、いったい何者なんだ⁉」

 

「その様子から察するに、やはりあなた達がこのカルミア村を襲った盗賊団『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』ですね」


「このアマ!! 質問していいのは俺だ。質問に答えやがれ!!」



 盗賊の一人が凄んできたので、私はそれを睨み返して撥ね退けた。



「私がそれを答える必要はありません! 質問に答えるのはあなた達の方です! あなた達には、少なくともこの王国内にある、あなた達盗賊団のアジトの場所と、これまで行ってきた数々の犯罪を洗いざらい告白してもらいます!」


「このアマーー!! おまえ達、この女を捕らえろ! 腕ぐらいは、斬り落としてもかまわん! こいつが何者なのか、聞き出すんだ!」



 盗賊達が武器を構えて私を囲もうと、近づいてきた。私は槍を掲げ、近くにある家の二階に潜んでいるセシリアに合図を送った。


 ――――矢!!



「ぐあっ!!」



 セシリアが放ったボウガンの矢が、盗賊の一人の肩を貫いた。



「チクショウ!! 他にも仲間がいやがるのか⁉」


「教えてあげません!! やあああ!!」



 私はその隙をついて、更に一人、盗賊を打ち倒した。



「ほ、他にも仲間がいるぞおお!! 矢で狙われている!!」


「に……逃げろおお!! この場は一旦引けえええ!!」



 残る盗賊4人が蜘蛛子を散らしたように、別々に逃げ始めた。できれば全員取り逃がしたくはないんだけど! セシリアの方を見ると、セシリアはもう家の二階にはいなかった。すでに、村のゲートの方へ逃げた男を追っている。


 私は、村から近くの森へ逃げ込む二人を目に捉えたので、そっちを追いかけた。



「ま……待ちなさい!!」



 森に入り込んだ所で、2人と打ち合いになった。



「死ねええええ!!」



 片方の男がシミターで斬りかかってきた。



 ――方円撃(ほうえんげき)!!



 くるりと回転しながら攻撃をかわすと同時に涯角槍(がいかくそう)の石突部分を、斬りかかって来た男の脇腹へ押し込む。すると、男は「うげっ!」っと言って、倒れ込んだ。


 残る一人がそれを見て逃げる。



「ちょっと! ま……待ちなさい!!」



 追いかけようとした所で、何か大きなものが側面からのしかかるように、迫ってきた。私は咄嗟に素早く前転してそれを避けた。


 振り向くと、そこには梟の頭を持つ、大きな身体の熊がいた。首には魔石が施された首輪をしている。あれは魔装具? っていう事はこの魔物は盗賊団の使い魔⁉



 ホーーーッ ホーーーッ



 この魔物――――私が子供の頃に、フォクス村近くでも見た事がある。アウルベアーだ。


 アウルベアーは、腕を大きく振りかぶって私に向かって攻撃を仕掛けて来た。攻撃を避けると、アウルベアーの空振った腕は、すぐそばの木を叩き折った。


 とんでもない腕力と爪。あの攻撃は、とてもまともに受け止められない。



「テトラ!! 大丈夫!!」


「セシリア!!」



 セシリアが助けに来てくれた。アウルベアーの後ろから、その背中をボウガンの矢で撃ち立てる。



 ホーーーーーッ!!

 


 私もアウルベアー目がけて、腕を前に突き出した。涯角槍が、アウルベアーの腕を突き刺した所でアウルベアーはのけぞり、逃げ出した。



「セシリア。盗賊は? 他の盗賊は捕らえて情報は聞き出せれた?」



 セシリアは、首を縦にふると向こうを指さした。見ると、盗賊を拘束してこちらに歩いてくる数人の男がいた。明らかに冒険者のような、いでたちをしいる。カルミア村の者でもない。



「あの人達は、いったい誰なんですか?」


「この人達は、カルミア村を救う為に街からやってきた救援よ」



 ――――救援⁉


 セシリアがそういうと、大剣を背負った大柄な男と、その男と同じように大人用の長剣を背負った獣人の少年が私達の目の前に現れた。そして、大柄な男が口を開いた。



「おう、狐のお嬢ちゃん。さっきデカいのに襲われていたみたいだが、怪我はないか? そこの眼鏡の綺麗なお嬢ちゃんとは、さっき会ったばかりだが俺達の味方だと解った。飛び入り参加だが、共に賊を駆逐しようぜ」



 味方? この人達が? 確かに盗賊には見えないけど、何者なんだろう?



「わ、私はテトラと言います。テトラ・ナインテール」


「セシリア・ベルベットよ。よろしければ、あなた方の名前も教えて欲しいのだけれど」



 大柄な男は、頭を摩って笑いながら答えた。



「すまんすまん、申し遅れた。俺の名前は、バーンだ。バーン・グラッド。こう見えても、エスカルテの街のギルドマスターだ」


「ギルドマスター⁉」



 ギルドマスターと言えば、その街の冒険者ギルドの最高責任者。そんな人がなぜここへ⁉ 流石にセシリアも驚いた表情を見せた。



「そしてこの獣人の少年は、俺の弟子でもあるが、実はこのカルミア村出身の少年だ」



 カルミア村出身の少年? 確かに、カルミア村は獣人達の村だけど……この少年も獣人だ。……あれ? っていう事は、リアやパルマンさん達とも顔見知り。



「ミラールです。僕の村を救ってくれて、ありがとうございます」



 私達は、一度パルマンさん達のキャンプにバーンさんとミラール君を連れて行って、『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』やカルミア村の事について話をする事にした。







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄


〇バーン・グラッド 種別:ヒューム

エスカルテの街の冒険者ギルドのギルマス。もとSランク冒険者で、相当強い。大剣を得意としているがだいたいの武器を起用に使いこなす。アテナ達とも知り合いで、ミャオとも仲が良い。そして、面倒見がよくアテナが助け出した獣人の子供達の面倒も見ている。


〇ミラール 種別:獣人

狼の獣人で、カルミア村出身。ルキア達と共にカルミア村を襲った賊に捕まり、奴隷にされそうになっていた所をアテナに助け出された。その後は、エスカルテの街にてバーンの庇護下で生活を送る。それから次第にバーンやアテナに憧れ始め、今はバーンのようになりたいと弟子入りして冒険者ギルドの仕事をしている。


〇アウルベアー 種別:魔物

梟の頭を持つ熊の魔物。熊の腕力を持ち、夜中でも目が見える。もちろん、本来は夜行性。


方円撃(ほうえんげき) 種別:棒術

相手の大きな振りに合わせて懐に回転しながらも懐に入り放つカウンター技。遠心力も加え、脇腹(脾臓や肝臓)や鳩尾などの急所を狙う為、威力も凄まじい。テトラが使用すると、テトラのメイド服のロングスカートが技の発動と共にフワッと舞い上がるので、技の見た目も綺麗で芸術的。まさにこういうのを武芸というのだろう。

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