表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

146/1344

第146話 『洞窟での戦闘の末……』 (▼アテナpart)





 そこはゴブリンの巣だった。武器を持つ手と反対の手に松明を掲げるゴブリン。何十匹ものゴブリンが一斉に私達に向かって押し寄せてきた。


 ルシエルは、手にもって辺りを照らしていた懐中灯をルキアに渡すと、弓矢を構えゴブリンに放った。矢を受けたゴブリン達は次々と悲鳴を上げて倒れていく。


 ルキアが両手に持つ懐中灯で正面を広く照らしだしてくれているので、私も両手に剣を持って戦う事ができた。


 カルビと一緒に突っ込む。――斬る。蹴って、また突く。そうして次々とゴブリン達を倒していく。



 ギャギャギャーーー!!



 1匹が私達の間をすり抜けて、ルキア目掛けて突撃してきた。



「ルキアーー!!」


「ああ! ゴブリン!!」



 ギャギャッ!!



 ルキアは、咄嗟に片方の懐中灯を放り出すと、腰に装備するホルスターからナイフを取り出し構えた。ゴブリンが飛び掛かる。残る正面のゴブリンを全て矢で射抜いたルシエルが、新たな矢を弓に添えて引き絞る。



「オレに任せろ!! ルキア、逃げるんだ!!」



 しかしゴブリンは、ルキアの目前に迫っていた。間に合わない。ゴブリンがルキア目掛けて棍棒をぶり上げたその瞬間だった。カルビがそのゴブリンの背から襲いかかって転ばせた。



「やああああ!!」



 ギャーーッ!!



 ゴブリンがカルビを蹴り飛ばしたと同時に、ルキアが構えていたナイフをゴブリンの首に突き立てた。ゴブリンが息絶えた事を確認して、ルシエルが構えていた弓矢をおろした。


 私はルキアに急いで駆け寄って抱きしめた。



「にゃっ!!」


「大丈夫、ルキア! 怪我はないよね?」


「は……はい! 大丈夫です! な、なんとか私もゴブリンを倒す事ができました」


「ルキアももうすっかり、いっぱしの冒険者だな。ガンロック王国でファイヤーリザードを倒した時もそうだったけど、ゴブリンも倒せるようになったとは驚きだよ」


「えへへ。キャンプで時間のある時に、いつもアテナが稽古をつけてくれていますし、今のもカルビが助けてくれましたから。まだまだ皆がいないと、私ひとりじゃ何もでないですよ」



 ルシエルは、にこりと笑うとルキアの髪をくしゃくしゃっとした。



「あっ。もう、ルシエル! 何をするんですか!」


「あははは! 愛情表現だよ、愛情表現」



 そんな二人のやり取りをみて、微笑む。倒したゴブリンから、かさばらない程度の戦利品を手に入れると、再び洞窟を歩き始めた。


 それからも私達4人は、ジャイアントバットの群れや、大蛇と遭遇したけど見事に勝利し先へ進んだ。洞窟内を照らしながら歩き続けていると、急にルシエルが立ち止まった。



「ちょっと待て。何か人の声が聞こえてこないか?」


「…………確かに聞こえる。人の声…………冒険者かな?」



 その場で立ち止まると、再度ノクタームエルドの地図を確認した。ルキアもコンパスを取り出したので、照らし合わせて一緒に覗き込む。



「ドワーフの王国を目指すなら、北西の道だけど、聞こえてくる声は東の方から聞こえるよね。どうしようか?」


「急いでいる訳でもないしなー。何かSOS的な何かだったら、大変だしちょっと声の正体を確認しに行ってみようか」


「そうね。ルシエルの言うように、誰かが助けを求めているかもしれないし、ちょっと道をそれるけど行ってみようよ」


「はい! 解りました!」



 決まった。早速、何者かの声がする方へ懐中灯(かいちゅうとう)を照らして、洞窟内を進んだ。すると、進むにつれて洞窟の大きさが広がっていく。比例して聞こえる声が何人もの声になり、大きくなっていった。


 突き当りを曲がると、目の前にだだっ広い空洞が広がっていて、そこにテントがいくつも設営されており、何十人もの人がそこに集まっていた。そう、まるで洞窟内の広い空洞にある村みたいに。至る所に焚火やカンテラなど火も灯っていて、見てすぐに解った。


 リンド・バーロックの本にも、こんな場所は載っていなかった。150年前には、こんなものはなかったのかもしれないけれど。



「なんだここはーー!!」



 洞窟内にルシエルの叫び声が鳴り響いた。空洞に集まっている人達が、その声に驚いて、こちらを振り向く。だが特に慌てた様子もない。



「ねえ、行ってみようか」



 ルシエルとルキアが頷く。今いる場所は、崖上になっていて見回すと、誰かが設置したロープが下まで吊るされていた。あそこへ行く為には、ここを降りるしかない。カルビはルシエルがサっと抱きかかえてくれたので、私はルキアの事を注意して見ながら設置されているロープを使用して下まで降りた。

 

 集まっている人達がいる所へ近づいていくと、そこにいるほとんどの者が冒険者風の身なりをしている事に気が付いた。私は、一番近くにあるテントの前に座っている男に話しかけた。



「すいません。ちょっといいですか?」


「なんだね?」


「私達、旅をしている冒険者なんですがこのノクタームエルドに来るのは初めてで。それで教えて欲しいんですが、ここはいったいなんなのですか?」


「ああ。そういう事ね――――ここは、ロックブレイクという所だよ。あそこにそう書かれた立て札がたっているだろ?」



 男が指示した方を見ると、確かにロックブレイクと表記された立て札があった。



「ロックブレイク……」


「簡単に言うとこのロックブレイクは、この国ノクタームエルドの大洞窟途中にある、冒険者や旅人達の為の拠点さ。簡単に言えば、休憩所だな」


「えーー、休憩所! こんな所があるなんて。水などもここで、補給できるんでしょうか?」


「ああ、できるよ。あそこに大きな岩がいくつもあるだろ? そこに湧き水がある。もちろん、飲める水だよ。それに、ここでには店もあるし、ギルド関係者もいるから、金を払えば食事もできるし物資の補給もできる。ギルドの依頼も受けられるよ」


「凄い凄い! ほんとにここは、冒険者の拠点なんだ」



 確かに辺りのテントを見回すと、人が座っていてその前に、食糧やら武器やアイテムなどが並べられている。露店。商売しているのは、商人というよりは冒険者のような人達で、その中にはドワーフも何人かいた。



「ありがとう。面白そうなので、ちょっと色々見てみます」


「ああ。色々と見てみるがいい」



 男にお礼を言うと、私達はこのロックブレイクでテントを張らせてもらった。とりあえず、折角冒険者達の休憩所に辿り着いたので、魔物との連戦で疲労した身体を癒す事にした。








――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄


〇アテナ・クラインベルト 種別:ヒューム

この物語の主人公。Dランク冒険者で、二刀流の使い手。ツインブレイドという武器を装備している。剣術と体術に加え魔法も使う事ができる万能型冒険者。クラインベルトからガンロック、そして今度はノクタームエルドと冒険を求めて旅をする。


〇ルシエル・アルディノア 種別:ハイエルフ

Fランク冒険者で、弓矢と精霊魔法の使い手。ガサツで粗暴と思われがちだが、実は人情味あふれる優しい女の子。そして、アテナの頼り鳴る相棒。食いしん坊でいたずら好きでもあるけれど、ここぞという時の心強さは人一倍。


〇ルキア・オールヴィー 種別:獣人

猫の獣人でFランク冒険者。アテナに助けられた事から彼女に憧れ、仲間になって一緒に旅をする。優しく真面目な性格で、9歳とは思えない程しっかりしている。好奇心旺盛なルキアは、今日も色々なものをギュンギュンに吸収して成長していく。


〇カルビ 種別:魔物

子ウルフ。ルシエルの使い魔だけど、ルキアとよく一緒にいる。そして、歩き疲れた時や眠くなった時などは、すぐさまルキアに飛びついて彼女のザックの中に潜り込んで休む。もっふもっふしている。


〇ゴブリン 種別:魔物

小鬼の魔物。最も冒険者と戦っている魔物。背丈は人間の子供位の大きさだが、性格は残忍冷酷。獲物をいたぶる趣味もあり、極めて醜悪。だいたいは群れで行動しているが、ゴブリンキングなどがボスとして君臨し何百何千匹となる群れもある。そうなれば、村や街を襲う。


〇ファイヤーリザード 種別:魔物

赤い蜥蜴の魔物。口からは火炎を吐くので、危険。しかし、肉はひじょうに美味しい。アテナはこの魔物の肉を使ってカレーを作った事がある。おいしー。


〇ジャイアントバット 種別:魔物

大きな蝙蝠の魔物。人や獣など、獲物を見つけると群れで襲って来て吸血しようとする。洞窟や深い鬱蒼とした森を好む。生息している場所では、ジャイアントバットの糞があり、それは燃料としても利用できる。


〇大蛇 種別:魔物

大きな蛇。業界用語風に言うと、大きなビーヘー。犬猫位なら、一口で丸呑みできそうなもので一般的に毒蛇でない蛇を大蛇と呼んでいる風潮がある。


〇ロックブレイク 種別:ロケーション

ノクタームエルド、大洞窟内にある拠点の一つ。冒険者達の休憩所とも呼ばれている。冒険者以外にも普通の旅人や、行商人などもおりここで商売をしているものもいる。常に人が訪れ、旅立つ場所であり意外と活気に溢れている。この場所自体を管理する胴元は、冒険者ギルドである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ