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第139話 『初のダンジョンは、世界規模』





 モーテルで一泊した。部屋には、お風呂が備え付けられていたので、ここぞとばかりにチェックアウトする前にも、入っておいた。だって、洞窟に突入したら、次はいつお風呂に入る事ができるかは、解らないからね。


 ルシエルやルキアと共に、酒場へ行って朝食を食べると、チギーやモルトさんに別れを言った。モルトさんは、昼くらいにここを出立するそうだけど、チギーは別れをいうとすぐに馬車に乗り込んで、ガンロックの王都へ戻る準備を整えた。



「ルシエル、アテナ、それにルキアとカルビ。またカッサスの街に寄る事があれば、ハリルやジェニファーの所だけでなく、アチキの所にも寄ってくれ」


「うん。勿論だよ! その時は、絶対訪ねるからね」


「おうオレも会いに行く! またその時は、一緒に狩りに行こうぜ」


「いいねー。でも狩りもしたいけど、アチキはルシエルとはクルックピーレースで再戦したいね。今度は、ルシエルだけでなくアテナやジェニファーにも負けないから」


「ほほう、望むところだ!! でもオレは前チャンピオンだからな。戦うなら、新旧でチャンピオン対決がしたいな。だからオレが再びカッサスに行った時に、チギーがチャンピオンになっているか楽しみだ」


「よ、よーーし! じゃあ見てろ! アチキ、チャンピオン目指して頑張るよ!」

 

 




 チギーの乗る馬車が見えなくなるまで見送った。一時期は、レースで命のやり取りをする程の勝負をした相手なのに――――人の出会いとは本当に不思議。ルシエルにとっても、ヘルツに続いていい狩り友ができたみたいだしね。フフフ。


 再び酒場で水や干し肉やらといった必要な物資を購入すると、私達もいよいよドワーフの王国目指して出発した。


 ロッキーズポイントから、すぐもう見える巨大な岩山。そこからはもう、遥か先まで同じような岩山が聳え立ち連なっている。


 私達は、その山々を見つめながら、モルトさんから聞いていた、洞窟の入口までやってきた。いざ洞窟の前に立つと、洞窟というよりはトンネルのようだと思った。なんせ縦にも横にも幅があり大きい。馬車など、余裕で通過できる広さだ。


 ただ、やはり地面が岩でボコボコとしているので、もしも馬車での通行となるとガタガタと揺れて乗り心地は最悪なものになるだろう。



「いよいよだな、アテナ」


「いよいよですね! アテナ!」



 ワウウッ



「そうだね。このパーティーを組んでからは、ダンジョンにトライする事自体が初めてだし、こんな最大規模のダンジョンっていうのも経験に無い事だから、けっこー緊張するね」


「ああ、なんかワクワクするぞ。でも、オレ達ならきっと大丈夫だ」



 私はにっこりとほほ笑んで頷くと、モルトさんから購入した懐中灯(かいちゅうとう)をそれぞれ二人に渡して使い方を説明しておいた。



 カチリッ



「すげーー!! これ、すげーなあ!」


懐中灯(かいちゅうとう)って言うんですよ」


「ん? ルキア、なんで知っているんだ?」


「私も取引している場にいましたからね」


 

 ルキアがルシエルに、ちょっと得意げに言った。



「やるなあ。てっきりルキアは、何か甘いものにでも夢中になって、それを一心不乱に食べてて、取引に参加なんかしてないと思っていたぞ。考え違いというのならば、ルキアの名誉の為にも謝らないとな」


「え? え? な、何か甘いものってなんですか?」


「うーーん、そうだなー。例えばーーー」


「た、例えば?」


「パフェとか?」



 ルキアの額から大量の汗が!! 俯いて隠そうとしても、取り乱しているのが簡単に見て解る。ルシエルはその様子を見て、ニヤニヤしていた。――っもう! ルキアは、とってもいい子なんだから、あんまり虐めちゃだめだよ。




 洞窟に入った。途中、何人か旅人とすれ違う事があったけど、中へ進むに連れてその数も減っていった。一面が、岩と暗闇。少し不安に襲われる。



 ワオンッ!! オンオンオン――――



 カルビの声が洞窟内を反響する。それに笑い転げるルシエル。それを見て、私の中の少しあった不安は消えて無くなった。



「もう、カルビ! 駄目だよ。他の旅人さんがびっくりしちゃうよ」



 くうーーーんっ



 ルキアがカルビに言った。そう言えば、ルキアと出会った頃、リアという妹がいたと言っていた。カルビに言ったような感じで、ルキアも妹にちゃんとお姉さんしていたのかなって考えると、微笑ましく思えた。


 ――――分かれ道。モルトさんと取引した時に入手した地図を取り出して、確認する。こっちかな。



「ドワーフの王国まで、まだ結構な距離あるんですよね」


「そうだよ。ずっと、洞窟の中で暗いし…………もしかして怖い?」


「アテナやルシエル、それにカルビも一緒なので、私は全然大丈夫ですよ」


「わあああああ!!!!」


「はにゃあああ!!!!」



 お約束というか、大丈夫と言ったばかりのルキアに、ルシエルが後ろから大声をあげて飛びついた。ルキアの耳の毛と尻尾は、ずっと逆立っている。



「こら、ルシエル!! 洞窟の中は、暗いし岩だらけで危ないんだからふざけないで」


「くっくっくっく! はいはーーい!! わかってるって! わかってるってー! ヒャハハ。はにゃあだって!」


「っもう! ルシエルったらーー!」



 ルキアはプンスカしているが、ルシエルは面白がっている。まあ、これがルシエルの愛情表現なんだろうけど。ルシエルは、ルキアの事を私と同じように妹のように思っている。可愛くてしかたがないのかもしれない。



「ん? おい! アテナ! 何か聞こえてこないか?」



 ルシエルの表情が唐突に真剣なものになった。



「え? うーーん…………」



 ――――チョロロロロロ。



 確かに水の音のようなものが聞こえる。



「確かに、聞こえるわね。ちょっと行ってみようか」


「み、道からそれて、大丈夫ですかね?」


「はい、これ」



 不安な表情を見せるルキアに、モルトさんから入手したコンパスを手渡した。



「これは、コンパス?」


「私達が迷わないように、これはルキアが持ってて。私は、地図を見るからルキアがそのコンパスを担当すれば、ばっちりでしょ?」


「は……はい!! それなら、ばっちりです!」



 兎に角ルキアは、好奇心が旺盛だ。懐中灯を手渡した時も凄く嬉しそうな表情をしていた。だからコンパスも、ルキアに渡しておこう。何か他に気も向いていれば、不安も消え去るかもしれない。



「うわーー。あったぞ! アテナ! ルキア! こっちに来てみろ!」



 ルシエルが先に、水の音がしていた場所を探し当てた。近づいて見てみると、壁面の岩の隙間から水が流れ出ている。その辺り全体のあちらこちらから、水が滴っていた。


 私は近づいて、その岩の隙間から流れ出る水を、両手で掬って飲んだ。



「大丈夫ですか? アテナ!」


「おいしーーーーい!! これは、湧き水だね。冷たくて、とっても美味しいよ!!」



 言った途端、ルシエルとルキアも湧き水を両手で掬ってゴクゴクと飲んだ。携帯している水筒へも水を補充する。


 カルビに至っては、すでにその横でピチャピチャと水を浴びて戯れていた。



「ちょ、ちょっとカルビ。こんな所でビショビショになってー!!」


 

 ワウ?



 その後、3人でカルビを捕まえて、ビショビショに濡れたその身体をタオルで拭いてあげたのは言うまでもない事だった。 







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄


〇大洞窟を流れる湧き水

外の岩だらけの山脈に降った雨が、岩の中を通って回りに回ってろ化されて流れ出ている水。なので、清潔で冷たくて美味しい。だけど、本当に冷たいのであまり調子にのって飲みすぎると身体を冷やす。

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