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第137話 『ロッキーズポイントにて その1』 (▼アテナpart)





 ルシエルが狩りをしてくると言ったので、私とルキアはいってらっしゃいと言って見送った。ジャイアントスコルピオンの事を思い出すと、この辺にも危険な魔物が生息しているかもしれないと、少し心配になった。でも、ルシエルの後を追って、チギーとカルビも出て行ったので、大丈夫だと思った。


 もしかしたら、モルト・クオーンとの再会に水を差さないように――――みたいな事で、気を使われてしまったのかもしれない。ルシエルも変な所で…………


 それ以上は、考えるのを止めてルシエルの厚意に素直に感謝した。


 私は、モルトさんと同じテーブル席に着いた。手招きすると、隣にルキアが座った。



「再会を祝しまして、ここは私がご馳走させて頂きますので、好きなものを注文してくださいね。もちろん、お連れ様も」


「あ、ありがとうございます!」


「良かったね、ルキア。じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」



 モルトさんは、微笑んでメニューを手に取ると私達の目の前に広げて置いてくれた。うそ! このお店、パスタとかも置いてあるんだけど!! 素敵!!


 注文が決まった所で、モルトさんが手を挙げてウェイトレスを呼んだ。


 私は、アイスコーヒーとカルボナーラ。ルキアは、オレンジジュースとキノコソースのパスタを選んだ。モルトさんが自分の分の、エールとおつまみのナッツ、それに加えて私達の分を合わせて注文してくれた。


 オーダーが通されて、先にドリンクが運ばれてくると、モルトさんは話し始めた。



「アテナ達は、これからこの国、ノクタームエルドを旅するのですか?」



 私は、頷くとザックからリンド・バーロック著者の『キャンプを楽しむ冒険者』第2巻を取り出し、テーブルに置いて開いて見せた。



「私達の今の目的なんだけど、兎に角、世界のあらゆる場所を冒険してみようと思っているんだよね。それで、私の愛読書……リンド・バーロック著者の『キャンプを楽しむ冒険者』、この本をトレースしてみるのも面白いなって思って旅しているんだけど――とりあえず、次の目的地がノクタームエルドだったから、私達はガンロック王国からここまでやってきたの」


「なるほど。リンド・バーロックとはまたマニアックですね。私も以前この本は、ちらりとですが読んだ事があります。クラインベルト王国、ガンロック王国ときて、ノクタームエルドですか。それでは、次の目的地はドワーフの王国ですかね?」


「そうなの! それで、明日から早速そのノクタームエルドを旅していこうと思っているんだけど、何か注意点とかないかな? モルトさんが知っていればだけど」


「注意点ですか……そうですねー」



 パスタが運ばれてきたので、食べ始めた。カルボナーラに、乗っているコッコバードの卵を潰すとそれが広がり、パスタと絡み合う。黄身のとろみが食欲を更にかきたてる。


 ルキアが美味しそうと言ったので、ルキアに味見させると、目をキラキラさせて美味しいと言った。フフフフ。いっぱい食べて元気に育つんだよ。


 折角なので、私も気になっていたルキアが注文したキノコソースのパスタを一口頂いた。凄く美味しかった。ロッキーズポイント、恐るべし。こんな美味しい料理まで出してるんだから、そりゃあ旅人で賑わうよね。


 モルトさんがエールを飲み干して、ウェイトレスにお代わりを注文した。それが運ばれてくると、ナッツを口に放り込み、再び話し始めた。



「ご存じの通り、ノクタームエルドは巨大で険しい岩山が連なっている大地です。平地がほとんどありません。ですが、その山々には無数の洞窟が存在していて、そこにはもちろん魔物も生息していますが、人も住んでいる場所もあります」


「ドワーフね」


「ええ。大半はドワーフです。ノクタームエルドは、岩だらけの世界ですが、そこでは鉱石や宝石、そして魔石などの資源に恵まれています」


「それをドワーフは生業にしているのね」


「はい。彼らは、昔から得意な製鉄技術もさることながら、剣や斧などの武器や、防具などを作ったり加工したりするといった、鍛冶屋としての技術も一級品なのです。更に、鉱石や魔石などの資源に恵まれるノクタームエルドは、まさにドワーフ達の王国として、うってつけなのかもしれませんね」



 私は、ふと腰に差している二振りの剣に目がいった。一級品の剣、ツインブレイド。昔、師匠からこの剣を譲り受けた時に、これは鍛冶技術に優れたドワーフが作ったものだって、師匠が言っていたのを思い出した。


 ふーーむ。まあ、この剣は凄い剣なんだっていうのは、十分に理解はしているけど……


 モルトさんは、ここへは他の商人達と来たらしく、後ろのテーブルに座っている男に何かを言った。すると、その男は店の外へ出て行くと、暫くして木箱を持って戻って来た。木箱は、私達の使っているテーブルの上に置かれると、モルトさんが蓋を開けて中の品を取り出し並べて見せた。ルキアが興味津々に身を乗り出し凝視する。



「これは……?」


「つまりアテナ達が次に目指す場所は、ドワーフの王国って事になりますよね。だとすると、そこへ向かう為のルートがあるのです。ここから出てすぐ目の前に巨大な岩山が聳え立ち、そこには大きな口が開いています。通常、ドワーフの王国へ行くには、そこから中へ入って向かうのですが、もちろん距離もありますし、道中ずっと洞窟内を進むことになります」


「やっぱりそうなんだ」


「はい。登山する方法もありますが、オススメはできません。草木はほとんどない岩山ですし、足を滑らせたら命を落とします。常に足場も悪いですし、ハーピーやルフなどの魔物もいます。勿論洞窟内も、魔物が生息していますが、地に足がちゃんとついている分、戦う事も逃げる事もし易いです。ですので、やはり洞窟を行く方がセオリーですかね」


「なるほど。まあ、私達は洞窟ルートを進むつもりだから大丈夫よ。――それで、この木箱に入っているアイテムは?」



 私の質問にモルトは、にやりと笑った。



「ノクタームエルドでは、多種様々な洞窟が延々と続きます。そこは、もちろん陽の光も入りませんし、洞窟ならではの魔物も生息していますし、襲ってくるものもいます。ですので、未知の洞窟世界へ挑むなら、事前にしっかりとした準備が必要になると思いまして」



 なるほど。考えてみれば、洞窟の中じゃ時間も何も解らない。天井も壁も地面も岩だらけ。確かに準備はしていった方がいいかも。


 私は、テーブルに並べられた商品を一つ一つ眺めて、手に取ってみた。








――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄


〇ドワーフ 

ずんぐりした体形。短足で背丈も低い。身体は筋肉質で、鉱物資源を獲得する能力に秀でている。冒険者になるものも多く、その場合に武器はハンマーや斧などのパワーでドーーーンっていくのを好む。アテナがこれから旅するノクタームエルドには多くのドワーフがいる。


〇エール 種別:飲み物

大麦を使用し発酵させたお酒。ビールの仲間。


〇ナッツ 種類:食べ物

色々な美味しい木の実。アテナやモルトがロッキーズポイントで食べていたナッツは特にお酒のあてに適したもの。ピーナッツ、カシューナッツ、クルミ、ピスタチオ等。…………ピスタチオです。

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