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第13話 『バーン・グラッド』 (▼アテナpart)






 エスカルテの街――――冒険者ギルドにて。



「すいませーん、早速なんですけど……簡単にパッパと稼げちゃう仕事を受けたいんですけど、……そういうのって何かあります?」


「簡単にパッパとですか……そうですねー……少々お待ちください」



 ルシエルが、お金を稼ぎたいと言い出した。旅費など、自分で支払う分は自分できちんと負担したいそうだ。だから早速、お金を稼ぐために冒険者ギルドに依頼を受けにきているのだ。まあ、私たち冒険者だしギルドに登録もしているから、こっちが本職と言えば本職なんだけどね。


 それにルシエルは今、お金を持ってない。街などで何か必要な物を購入するというような事があると、私がルシエルの分も支払っている。私は、まあ別に気にしないでって言ったんだけど、ルシエルは今後ずっとそうしていくのが、悪いと思ったみたい。自分用のお金をちゃんと所持しておきたいらしい。


 うん。でもまあこの先、街や村に寄る事も沢山あるだろうし、その際に自分の欲しいものを見つけたりもするだろうし、その時に自分の都合で遠慮することなく買い物ができるのは、いいことだと思う。


 ま、それに私も新しいテントを買っちゃったりなんかもしたし、路銀等も稼ぎたかったので一緒にそろそろ冒険者ギルドで仕事を受注しなければならないと思っていたので賛成した。


 ローザの方は、騎士団をドリスコ副長に丸投げして勝手に私達についてきちゃったので、一度騎士団の詰め所に顔を出してくるとの事だった。冒険者ギルドで仕事を受注後、街を出る時にまた合流する予定だ。


 受付嬢が書類に目を通していく。



「うーーん、それなりの報酬で、単純な内容の仕事になりますと、魔物の討伐になりますね」


「討伐ね。それいいね。それでお願いします」


「わかりました。ですと、アテナさんはDクラス……ルシエルさんは、Fクラスなのでそれに見合ったものを検索します」

 

「倒したら報告しにここへ戻らなければならないんでしょ? それなら、強くて危険な魔物でもいいから高額報酬で近場にして欲しいんだけど」



 正直、ドラゴンでも倒す自信はあります。ふんすっ。でも、流石にそれは口に出さなかった。



「アテナ……これは、どうかな? これなら、高額報酬なんじゃないか?」



 受付嬢が見る依頼書の束の中から、目についた1枚をルシエルが指を指す。



 ――――マンティコア!!



「え? 金貨8枚!! 噓でしょ⁉ しかも、ルリランの森ってそれ程遠くない。これにしよう」



 それを聞いて慌て取り乱す受付嬢。



「ちょちょちょ……ちょっと待ってください!こちらはランクB~からの冒険者様に依頼しています。しかもランクBの場合は、4名以上のパーティーを推奨です。マンティコアは凄く危険な魔物なんですよ」


「え? 知ってるが……倒した事もあるぞ」


 

 ルシエルは、ただのハイエルフでは無いとは思っていたし、戦闘力も底が見えない。だからそう言われてもそうなんだ! 倒した事あるんだ……程度にしか思わなかった。


 でも、受付嬢は別。ルシエルのセリフに固まっている――――そりゃそうよね。だって、いくらハイエルフって言ってもランクFだもんね。普通の冒険者ならデビューしたてでゴブリンやウルフに苦戦しているのが当たり前。そのランクの冒険者がマンティコアを討伐するって言っているんだもんね。



「昔、エルフの里の近くにマンティコアが現れて、里のエルフが何人か襲われた。だから、倒した。危険な魔物って事も知っているから大丈夫だぞ。グーで一発だ」


「それは、噓でしょ」


「すまん、グーは嘘だ。ちょっと、盛った」


「盛るな!」



 ちょっと、勢いをつけて、スピーディーに手の甲でルシエルをペシリと突っ込んだ。


 ルシエルは、こんなだが意外とジョークも言う。ほんと、金髪ロングのハイエルフのイメージ像とかけ離れている。面白いからいいけど。



「でも、倒したのは、本当だぞ」


「私も平気。もし全滅しても、自己責任って事だし……だからその討伐依頼を受注させて欲しいわ」


「しかしですねーー……かなり危険ですし、私の一存ではなんとも……」



 受付嬢が困っている。



「ねえーー、お願い。推奨って事は、無理やりにでも受注する事はできるんでしょ? 絶対に死なないし、死んでも絶対に恨まないから~」



 ちょっと甘え気味に言ってみるが、言ってみて相手が女という事に気づく。えへへ、通用しないよね。



「いやーー、でもですねーー、そう言われましてもですね」


「そこまで言うなら、やらせてみればいい」



 シブいおじさんの声。振り返ると、そこにはシブい白髪の大男が立っていた。身体は鍛えられていて、腕なんて物凄い太さ。もしかして、私のウエスト位あるんじゃ……?



「ギルドマスター! いいんですか?」



 ギルマス!! このシブいおじさん、ギルマスなの⁉



「バーン・グラッドだ。お嬢さん達のそのやる気を買おう。俺も、若い時はそんな感じだった。しかも、低ランクの冒険者みたいだがその自信の表れというか……なんとなく強いだろうという事は解る。だから俺が責任を持つ! マンティコア討伐受注を許可しよう」


「やったーー!! ありがとうギルマス!!」



 飛び跳ねて喜んだ。



「バーンだ! バーンさんでいいぞ。その代わり、俺が同行するという事が条件だ」



 え? 


 うそ? ついてくるの⁉



「え? なんか嫌そうだな。駄目なら、この依頼は受注できんぞ。なんせ、これは条件だからな。嫌なら嫌で、強制もせんが……そうなったら、受注できる依頼はキノコ採取とかそんなのになるぞ、きっと」



 キノコ採取と言われて、ズッコケる。マンティコア討伐からのキノコ採取って。



「いや、他にもあるでしょ! ゴブリン退治とか! コボルト退治とか! 退治依頼、得意だよ、私!! キノコ採取なんか、私に依頼を受けさせたらそのキノコ、退治しちゃうからね」



 思わずむきになって突っ込んでしまった。バーンさん、めちゃくちゃウケてる。もしかして遊ばれている?


 そしてこの感じ……もしかしてすっごい一緒に来たがっている⁉ 


 ルシエルに目線を送る。



「ローザもいるし……どうしよう」


「え? 別にいいんじゃないのか? 何か危なかったら、このおじさんが助けてくれるって事だろ? しかも、ギルマスって物凄い強いんじゃないのか? より安全に討伐できるし、オレはいいと思うぞ」



 うーーん、確かに正論だ、仕方なしか。その条件に従う事にした。



「っしゃー、じゃあ俺も支度してくるから。後程、街の東門で合流しよう」



 決まってしまった。マンティコア討伐の報酬は、金貨8枚という魅力的な依頼を受注する事ができたがギルマスが同行してくるという。なんか、やだなー。



「でも――まあ、いっかー。それは、それでそういう依頼だと思うわ。ギルマスがついてくる依頼。それにこれも何かの縁かもしれないしね……」



 偶然にもギルマスと合流する街の東門は、ローザとの待ち合わせ場所でもあった。こうなると、運命じみたものも感じる。


 冒険者ギルドを出て、少し店を見て回りミャオの店にも顔を出した後、待ち合わせの東門に向かった。


 そこには、ローザとバーンさんがすでに私たちを待っていた。話をしているところを見ると、顔見知り……まあ、同じ街にいる治安維持騎士団と冒険者ギルドのギルマスなのだから当然かな、面識はあって当たり前か。


それにしても、背負っているぶ厚い大剣――――バーンさんって大剣使いなんだ。



「早速、驚いたよ。お嬢さんの仲間に、ローザ騎士団長がいるとは……どうなっているんだ? いったいどういう繋がりなんだ?」



 んーー。言いたくない。



「いや……私たちは昔からの友達で……」



 ローザが割って入る。



「アテナと私は、友達だ! 主に私がお世話になり倒しているが、私の素晴らしいお友達だ!」


「友達ねーー、それにしても、普通騎士団長がいち冒険者とパーティー組んでいるなんて、普通何かあるんじゃないかと考えるぞ」


「それを言うならこちらだって、あれだぞ! 仲間が冒険者ギルドの依頼を受注して、これから一緒に出発するからって待ち合わせ場所で合流すると、そこにその街のギルマスが仲間として同行すると言って現れた。だから、私も相当驚いているぞ。一介の冒険者とパーティーを組むギルマスなんて、どういう繋がりなんだってね。もう興味津々だ」


「うーーーーむ。そう言われちまうとなあーー」



 ローザに言い返されて頭をポリポリかくバーンさん。



「話は、この辺でいいでしょ。じゃあ、出発しましょうか。目的地は、ルリランの森」




 こうして、私たち4人はマンティコア討伐の依頼を受けて、街を出発した。









――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇アテナ 種別:ヒューム

Dランク冒険者で、物語の主人公。キャンプが趣味で、今は薬草を使用したお茶作りもマイブーム。ギゼーフォの森で知り合ったルシエルと、エスカルテの街で知り合ったローザとパーティーを組む。金貨8枚と言う高額報酬を狙ってエスカルテの冒険者ギルドにてマンティコア討伐に挑む。


〇ルシエル・アルディノア 種別:ハイエルフ

Fランクの冒険者なりたてのホヤホヤで、クラスは【アーチャー】。精霊魔法も使える。お肌がプリプリピッチピチの114歳。長い髪の金髪美少女エルフだけど、黙っていればという条件付き。一人称は、「オレ」。野菜より肉が好き。とても立派な弓を所持しており、ナイフ捌きに関してもなかなかの腕を持つ。ギゼーフォの森でアテナと知り合い、それからはエスカルテの街で正式に仲間としてパーティーを組む。冒険者登録の費用は、アテナが登録祝いとして支払った。


〇ローザ・ディフェイン 種族:ヒューム

クラインベルト王国、王国騎士団の団長。現在はアテナが自家製の薬茶を売る為に立ち寄ったエスカルテの街の治安維持の任務についているが、アテナと出会った事により任務を副長のドリスコに放り投げてアテナについて行った。外見は赤い髪のショートヘアで凛々しい感じ。法を厳守する性格で、腕にも自信があって逆に太々しく見えたりもする。


〇ドリスコ 種別:ヒューム

クラインベルト王国、王国騎士団の副長。ローザ団長を常日頃から尊敬しており、補佐に勤めている。大きな体格からは、腕力もある事が解る。アテナにべったりとついて行ったローザに騎士団の任務を丸投げされて大きく慌てている。だけど、投げ出さない責任感を持つ。苦労している。


〇バーン・グラッド 種別:ヒューム

エスカルテの街の冒険者ギルド、ギルドマスター。自分も同行するという条件でアテナ達がマンティコア討伐依頼という高額報酬の仕事を受注する事を許可した。大きな身体で筋肉モリモリの腕から繰り出される大剣の一撃は強力。ギルドマスターは、冒険者ギルドの中でも地位は高く今回みたいにいっかいの冒険者に同行して一緒に依頼をこなす事など普通にはない。


〇マンティコア 種別:魔物

大きな獅子の身体を持ち、鬼のような頭を持つ。牙や爪もも大きくて、その一撃で冒険者の命を簡単に奪う。噛みつくと、肉を引き裂き骨をかみ砕く。獰猛な魔物で、森や遺跡などのダンジョンに生息している。


〇ミャオの店 種別:ロケーション

エスカルテの街で、アテナの友人である、猫の獣人ミャオ・シルバーバインが経営するお店。アテナは古道具屋と呼んでいる。


〇エスカルテの街 種別:ロケーション

クラインベルト王国にある、大きな街。王国内でも王都を除けば2番目に大きな街とされている。冒険者ギルドや宿屋。銀行に武器屋に防具屋。それにカフェなどあらゆるお店が揃っていて活気に溢れている。


〇ルリランの森 種別:ロケーション

クラインベルト王国にある森。恐ろしい危険な魔物、マンティコアがいるという。


〇エルフの里 種別:ロケーション

エルフの里は、いくつもある。エルフやフェアリーが済んでいたりする場所で、ルシエルの言うエルフの里とはかつて自分が住んでいたいた里の事である。ルシエル曰く、以前そのエルフの里近くにもマンティコアが出たらしい。ルシエルが退治した。


〇キノコ採取

キノコはいいよ。んーんーんー。焼いてもいいし、鍋にしてもいいし。炊き込みご飯に入れてもいい。だけど、毒キノコもあるからキノコ採取にはキノコに関する知識を持つ者がいる事が必須だよ。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ボケもしてくれるルシエルさん。 意外に器用。 そしてマンティコア退治。 結構、危険な魔物だったはずですが。 それでもルシエルが倒したというのなら真実でしょう。 しかしここで予想外にギルマス…
[一言] 四人パーティー 字面的には普通だけど、メンバーの身分が……………ww
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