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第1293話 『屋上バトル その1』



 市役所の屋上まで登り、逃げ出したリッカーを追い詰めていた。下の階には、シェルミーやデプス市長達がいて逃げ場はない。なのにリッカーからは、余裕の笑みが消えていない。


 ローザは、剣を抜くとリッカーにずんずんと向かって行く。



「俺はーーー、情報屋だって言ってんだろーーがーー。代価を払わねーかぎりー、ただで情報はやらねーーってばよーー」


「好きにすればいい。私は、貴様を取り押さえるだけだ。そうすれば無理矢理にでも、ラビッドリームで貴様の心と記憶を探る。そうすれば、貴様が喋ろうが喋らまいが、『狼』だと裏付ける証拠か何かが出てくるだろう」


「ローザ。でも、セシリアの話ではリッカーは、デューティー・ヘレントやイーサンとも組んで、『狼』をなんとかリベラルから排除しようとしていましたよ」


「『狼』の正体は、誰も知らないんだったな。ならリッカーが同士を装い、『狼』を警戒して排除しようとしていたデューティー達を騙していた。その可能性も否定はできないし、デューティー自体も会議室から逃げ出しているからな。『狼』を倒したいと言っておきながら、その言っていた奴が『狼』だったってオチかもしれん。リッカーとデューティー、どちらが『狼』で、どちらがその『狼』に使われていたかはまだ解らないがな」


「おもしろーーい、発想だあーーー。ならーー、わざわざ生き残っている執政官の1人、トム・ハークスの存在をーーー、わざわざ教えてやると思うかーー」


「その情報自体が偽りの可能性もある。セシリアとファーレをデューティーの農園で解放したのも、後で利用できるかもしれないと思ったからかもしれんだろ?」


「知りたければーーー、金を払えーーー!!」


「まったく、確かにこのまま話し合っていても埒が明かないな」



 ローザはリッカーの直ぐ目前まで移動すると、剣をリッカーに突き付けた。その瞬間、ローザの剣が高く打ち払われる。時間はもう夜になっていて、その夜の闇に潜んでいた何者かがローザの剣を跳ね上げたのだと解った。


 まさか、ローグウォリアーとビーストウォリアー!? そう思ったけれど、違った。ワイルドな感じと言うか、レザーの服を着た男がローザの剣を跳ね上げていたのだ。初めて見る男。


 ローザは慌てて距離を取り、リッカーからその男に剣を向ける。すると逆側からも、ダガーを持った男が現れてローザを挟み撃ちにした。



「ローザ!! 今、助太刀します!!」



 涯角槍を手に持ち、ローザのもとへ駆ける。


 ジャラララララ!!


 音がして、何かが飛んできた。見ると私の持っている涯角槍に、鎖が巻き付いていた。別の男が鎖を手にしていて、それを私に向かって投げてきたのだ。



「な、何者ですか!!」



 言って気づいた。この人達は、会議室を襲った人達の仲間だと――なぜならそう判断できる理由がある。彼等のユニフォームなのか、男達は皆揃って同じレザーの服を着ていたから。リッカーが大笑いする。



「ギャハハハーーー!! 今は夜だ。真っ暗闇の夜。皆、その闇にーー、潜んでいたのさーーー」


「や、闇に潜んでいたって……か、隠れていただけじゃないですか!!」



 リッカーに睨まれて、少し後ずさってしまう。すると私の涯角槍に鎖を巻き付けている男が、その身を後ろに引いた。鎖と一緒に、私は男の方へ引き寄せられた。



「きゃ、きゃああ!!」


「テトラ!! 蹴りが来るぞ、防ぐんだ!!」



 ローザの声。私は鎖の男に引き寄せられた所で、その男はまってましたとばかりに前蹴りを放ってきた。ローザの声が届いていた私は、手に持っていた涯角槍で蹴りを受け止める。後ろに弾かれるも、鎖は解けた。



「やるなー、獣人の女!! 噂にたがわねえ。流石、あれだけの人数に加えて、あのバズ・バッカスをも倒す程の女だ」



 噂? あれだけの人数……バズ・バッカス……


 鎖の男のその言葉で、はっとする。このレザーの服、見覚えがある。私が何かに気づいた事を知り、リッカーが大笑いした。



「ヒャッヒャ! 思い出したかーーお嬢ちゃーーーん。こいつらはーーー、俺の子分じゃねーーーぞ。雇ったのさーー。『デビルウォーズ』って名のーー、盗賊団だーーー。覚えているよなーー、テトラ・ナインテール。お前がーー、やっつけたろーーー」



 この都市で偶然見かけたシャノン。彼女を追っている時に、因縁をつけてきて絡んできた盗賊達だ。覚えている顔は、この場にいない。でも間違えなく、『デビルウォーズ』という名前には聞き覚えがあった。



「なんだ? もしかして知っている奴らなのか?」



 ローザは剣を振り回している男と、ダガーで突き刺そうとしてくる男、2人を同時に相手にしながらも私に聞いてきた。彼女にはそれができる余裕があるのだと、安心する。



「はい! ダニエルさんの所へ行った時の話ですが、その道中で因縁をつけて来た相手です!」



 鎖がまた飛んできたので避けた。ローザは、「あー、なるほど」と言って納得している。



「リベラルで、一番の情報屋というだけあるな。テトラとの事を知って、敢えて雇ったのか」


「そこはーー訂正してもらおうーー! リベラルではなくて、オレサマは、メルクトで一番なんだああああ!! さあ、金は払っているんだーー!! この2人を叩きのめせーーー!!」



 リッカーは、自分が雇った盗賊に指示する。でも次の瞬間、ローザは相手にしていた男2人を凄まじい剣捌きで倒してしまった。鎖の男はそれを見て、焦って力任せに私に向けて鎖を放ってきた。単調で直線的な攻撃。


 今度は私がその飛んでくる鎖を涯角槍で跳ね上げると、くるりと武器を返して石突部分で相手の鳩尾を突いた。鎖の男は、項垂れるように倒れ込んだ。

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