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第1246話 『テストダイブ その1』



 『狼』を見つけ出して、捕まえる。でも戦わなければならないのなら戦って倒し、その必要がないのならちゃんと罪を償わせる。私達は、そうする為にこの都市へやってきた。でもそれなら、これからどうやって『狼』を見つけ出すのか。


 その一番有力な方法こそが、レティシアさんから借りた地の精霊ラビッドリームの力を使って、各々にテストを行うというものだった。それをもう一度、ちゃんと全員に説明する。


 リッカーは、やっぱり猛反対しているけれど、協力してくれるまでは、この会議室からは出られない。嗜好品専門家のロレント・ロッソが、リッカーと同様に横暴であるし納得がいかないと言っていたけれど、ミルトやダニエルさん、それにデプス市長がなんとか彼を説得してくれた。



「それでは、説明も終わった。また皆の気が変わらないうちに、進めてもらいたいのだがね」



 デプス市長に、私は急かされた。彼の立場を考えると相当頑張ってくれているのが解る。



「は、はい。それでは……早速始めようと思うのですが……」


「何か問題があるのかね?」



 シェルミーが、こそこそとデプス市長に近づいて行き耳打ちした。私がラビッドリームを使う事、そしてそれをまだ上手に扱えない事を伝えてくれたのだろうと察した。



「ふむ。まあ、それでもやるしかないのだろ」


「ええ、そうです」


「よし、それなら……よし!! まず私から頼もうか」


「え⁉」



 デプス市長の言葉に、この場にいる全員が驚いた。なぜなら、デプス市長は市長であって十三商人ではなかったからだった。



「でも……」


「十三商人の中に『狼』がいるそうだが、その情報は確かなのかね。そう思わせておいて、実は私かもしれない。極めて僅かだが、その可能性も否定できないのではないのか? 十三商人の中に私とつながっている者がいて、その者を私が操っているとかな。わはははは、真の黒幕って奴だ」


「そ、それは……でも」


「まあ、どちらにせよ君達の作戦は、1人1人を暴いていくものなんだろ。消去法という奴だ。それならまず私を調べて、私の身の潔白から暴いてくれたまえ」



 デプス市長が『狼』の可能性……でもそんな事を考え始めると、十三商人の中に『狼』はいるっていう情報自体が破綻するのではと思った。


 セシリアは私の腕を掴んで、一旦会議室の外へ私を連れだした。他の者に話を聞かれなくないからそうしたのだと直ぐに解った。



「セシリア」


「ああ言ってくれているのだから、市長から調べなさい」


「え? でも」


「でもじゃないでしょ。あなた、ラビッドリームを完全にコントロールできる自信があるの?」


「え?」


「これは私の感なのだけれど、『狼』は間違えなく十三商人の誰かだと思っているわ。『狼』にとってこの都市での最高権力者であって、同列の者が多数いるという環境、それはおあつらえ向きと言うか……これ以上ない隠れ場所だとも思うし……でもそれは、今は別にいいわ。テトラ、あなたはまず市長からラビッドリームで調べるの。つまり市長を使って練習をしなさいって言っているのよ」


「練習って……」


「まだ解らない? あなたは、ラビッドリームを上手に使える自信がまだ無い訳よね。それなら今のうちに、少しでも上手くなるように練習すればいいと思わない。だったら市長からというのは、うってつけだわ」


「でもデプス市長を使って、練習だなんて」


「ぐだぐだ言わない。どちらにしったって、最初にテストを受ける人は、実験台にされるのだから。それに市長はきっと解っていて、自分からテストして欲しいって言ったのよ」



 そうだったんだ。でもセシリアの言葉を聞くと、デプス市長がそこまで考えてくれて、自分から調べて欲しいと言ってくれていると、より思えてくる。市長も私達と同じく、この都市を守りたいのだ。



「それと、ラビッドリームを使って調べるのは、1人ずつしかできないわよね」


「はい、1人ですらできるかどうか不安になっていますから」


「そう。それなら、あなたが『狼』だと思えない人から優先的に調べていきなさい。そうすれば、あなたが当たりを引く時には、それなりにラビッドリームの使い方をマスターしているはずだから」


「セシリア!」



 確かにそうだと思った。協力的な人の方が波長も合いそうだ。セシリアは、凄い。そんな事ぜんぜん考えもしなかった。


 最初に市長、そして信頼できる人から調べていけば、きっと怪しい人を探る時には、ある程度はラビッドリームの使い方を理解できているかもしれない。確実な黒を暴ける。


 そうなると市長の次に信頼できる人は……頭を巡らしてみる。


 とうぜんミルト・クオーン、イーサン・ローグ、ダニエル・コマネフが思い浮かぶ。彼らは私達によくしてくれていて、今も全面的に協力してくれている。あとシェルミーとファーレが、自分の正体を明かしても問題ないと判断した人だから、アバン・ベルティエも信頼できる人なのかもしれない。



「はい、解りました。ありがとうございます、セシリア」


「いいわね。それじゃ、首都グーリエの状況が気になっている私達には、僅かな時間も貴重だし、いい加減にさっさと始めましょう」



 頷くと、セシリア会議室に戻った。そしてデプス市長に言った。


 この会議室を、待合室として使わせてもらうこと。そしてこれからテストを始めるのに、別の部屋で行いたいので、早速小部屋を用意してもらえないかと。


 デプス市長は頷いて、この会議室のある階の、別の部屋を私達に提供してくれた。

 

 そして会議室には、集まってくれた十三商人とメイベル、ディストル、ファーレを残し、私達と市長は、早速デプス市長が『狼』かどうかを調べる為に、彼が提供してくれた部屋へと向かった。

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