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第1241話 『リベラル市役所 その2』



 コンコンッ


「シェルミー様、ファーレ様。他のお連れの方々もいらっしゃいました」


「うむ、入りたまえ」


「失礼致します」



 案内役の職員と、ジョニー君。両開きの大きなドアを開けると、そこには広い部屋があった。窓は大きなガラス張りで、建物の高さは、ホテル『グランドリベラル』にとてもかなわないけれど、それでも市役所周辺のリベラルの街を眺められるようになっていた。



「シェルミー、ファーレ。それに……」



 シェルミーが答えた。



「えっと、こちらは遥々クラインベルト王国からやって来ました、王宮メイドのテトラ・ナインテールとセシリア・ベルベット。そして騎士の、ローザ・ディフェインです」


「おお、クラインベルト王国のメイドと騎士様……なるほど、それでこちらのお二人は、メイド服を着ているのか」


「ええ、そうです。そして更にこちらの二人ですが、メルクト共和国の冒険者であり、コルネウス・べフォン執政官が直接雇ったというメイベル・ストーリと、ディストル・トゥイオーネです」


「なるほど、コルネウス執政官が……そうか、腕利きの冒険者を雇われて、賊共のもとから脱出されたのだな」


「先に話した通り、他にも仲間がいます。既にその仲間は、他のレジスタンスと合流して、首都グーリエを賊共から奪還する為に、今もなお戦い続けています」



 首都グーリエは、大勢の賊に押し寄せられて陥落したと聞いた。でもシェルミーの言葉は正しいと思う。陥落したからと言っても、それでボーゲンやミリス達が盗賊にやられたなんて限らない。私はきっと無事だと信じている。


 それにボーゲン・ホイッツは、Aランク冒険者であるし、あのエスカルテの街のギルドマスター、バーン・グラッドがこのメルクト共和国を救うのに適任だと選んだ人だった。きっと今も、ミリス達やビルグリーノさん達と一緒に、コルネウス執政官を守りながらも戦い続けているはず。



「解った。それでこの私にできる事。それは、君達への協力だったね」


「そうです。市長には、十三商人を今日ここへ集めて欲しいとお願いしました」


「ふむ……」



 デプス市長は、目線を落として暗い顔をした。そしてまた顔をあげると、案内役の職員と息子に言った。



「それじゃ、話をしよう。お前達は、すまんが外へ出て行ってくれ。私はこの人達と大切な話がある。いいな、話が終わるまで、ここへ誰も入れるな」


「承知致しました。後程、お飲み物だけお運びさせて頂きます」


「かまわんよ。少し話して、直に会議室の方へ移る」


「それでは、お飲み物は会議室の方へ運ばせて頂きます」



 案内役の眼鏡の職員。彼は、デプス市長と私達に頭をさげると部屋の外へと出て行った。市長の息子、ジョニー・デプスはその場に残っている。



「ほら、お前も出て行きなさい」


「ええ!! なんで? 僕も一緒に話を聞くよ」


「駄目だ、出ていなさい。それと大事な話だから、それが終わるまでお前は下の階にいなさい」


「えーーー!! そんなの嫌だよ。僕だってお姉ちゃん達と知り合いなんだ。どんな話をするのか、興味だって凄くあるしね」


「いい加減にしなさい。これ以上、言わせるなら人を呼ぶぞ。無理やりにでも、下の階へ連れていってもらう」


「な、なんだよ。ケチ!」


「なんだその言葉遣いは!! 親に言う言葉か!!」


「っもう、解ったって! 怒鳴らなくてもいいじゃないか」



 ジョニーは父親に捨て台詞を吐いて、勢いよく部屋の外へと飛び出て行ってしまった。デプス市長は大きな溜息をひとつ吐くと、ここぞとばかりに外の廊下を見回す。誰もいない事を確認すると、バタンとドアを閉めた。そしてシェルミーとファーレの顔を見ると、すぐさまひれ伏した。



「ははーーー!! これはこれは、本日はこのような所に、両王女殿下がわざわざご足労頂きますとは!!」


「ちょちょ、ちょっとデプス市長!! やめて下さい!! さっきと同じにして下さい!!」


「し、しかしあなた様は……」



 デプス市長は、そう言って私達を見た。



「大丈夫です。ここに同行してもらった皆は、私達の事を既に知っていますから」



 シェルミーのその言葉を聞いて、無性に突っ込みたい気持ちになった。だって私達も、ついさっき一緒にお風呂に入って、初めてシェルミーとファーレがガンロック王国の王女様だったなんて聞かされたばかりだったから。



「それと私の事はシェルミーで、妹はファーレ。そう呼んで下さい。あと、アバちゃん……アバン・ベルティエ氏は、私達の正体を知っているけど、シェルミーとファーレとして接してくれることになっているから」


「しかし……」


「お願い! もしも『狼』に私達の正体がバレたら、いいように利用されるかもしれない。腕の立つ者達は、何人も連れてはきているけど、それでも確実って言いきれないし」



 デプス市長は、シェルミーにそう言われて立ち上がった。



「解りました。それでは、私はいつものようにさせてもらいしょう。それが両王女殿下の為になるのであればこそ!」


「うん、お願いね。市長」



 やっぱりシェルミーは、アテナ様に似ているかもしれないと思った。


 顔も髪型も違う。でも雰囲気というのか、そういうのが似ている気がした。実際、シェルミーの正体は、ガンロック王国のミシェル王女だった。同じ王女として、似ている所があるのかもしれないけれど、そういうのだけではないように思える。


 そう言えばアテナ様は、ガンロック王国でミシェル王女やエレファ王女と、ガンロックフェスに参加されたと聞いた。しかもアテナ様は両殿下が結成されている音楽バンドに入って、一緒にライブに出られたって……


 ……そう考えると、やっぱりアテナ様とミシェル様は、本当に親しいお友達になられたんだと思った。

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