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第1240話 『リベラル市役所 その1』



 私達は、グランドリベラルを出ると、そのままシェルミーとファーレの案内の元、市役所へと向かった。


 シェルミーとファーレには、チギーとロドリゲス他10数人の黒づくめの護衛達がついている。今にして思えば、この人達はガンロック王国の兵士か何かで、精鋭中の精鋭なのだろうと思う。雰囲気で解る。


 ううん、でもロドリゲスは使用人って言っていたから、彼ひとりは武芸者や兵士などでは無く、特別腕の立つお城の使用人なのかもしれない。でもセシリアがチギーの槍捌きは、物凄いと言っていた。きっと全員、相当に腕が立つ。


 そしてこちらは、私、セシリア、ローザ、メイベル、ディストルの5人。レティシアさんは、もしもそこにボム・キングやリッカーが来ていたら、顔が割れてしまうからと言って、再び潜入場所へアローと共にそれぞれ戻って行った。


 でもこれだけ人数がいれば、安心できる。これからもし、市役所で私の中にいるラビッドリームを使って、『狼』を見つけることができた場合、全員で対処できる。これだけ心強い仲間が揃っていれば、流石の『狼』でもきっと太刀打ちできないだろうから。


 私達は大通りを歩き、この都市の中枢の1つでもある市役所へと向かい辿り着いた。グランドリベラルよりは、もちろん規模は圧倒的に小さいけれど、それでも他に立ち並ぶ建物の中ではダントツに大きな建物だった。


 シェルミーの案内で1階へと入る。するとそこでロドリゲスとチギーが、黒づくめの男達を何人か率いて辺りに散った。



「それじゃ皆さん、これからちゃんと私の後についてきてください。既にもう市長には、私達がここへ来ることは連絡を入れているから」



 ディストルが驚いた顔を、シェルミーに向ける。



「いつの間に、連絡をいれたんだ? まさか夕方位に行くからってアバウトに言っただけで、あれからずっと市長と集まった十三商人を待たせている訳じゃねーよな」


「ちょ、ちょいとディストル!! このお方をどなただと思っているでやんすか!! もっと口の利き方に、気を付けるでやんすよ!!」


「うっせー、メイベル。シェルミー本人が、これまで通りでいいって言ったんだぜ」


「あははは。ありがとう、メイベル。でも今、ディストルが言った通り。必要がなければ、身分は隠しておきたいからね。大義を果たす前に余計な問題に足をとられたくないし。だからいつも通りに接してくれると嬉しいな」


「そこまでのお考えでありやしたなら、ようござんす。あっしも今まで通りに、お付き合いさせてもらいやんしょ」


「うんうん、テトラ達もそれでお願いね」



 シェルミーは、私とセシリアとローザに向かってそう言って笑うと、市役所一階の受付にタタタと走って行って、そこにいる市役所員と何か話をした。ファーレは、私達と共にいて、一緒に成り行きを見守っている。


 私は待っている間、辺りをぐるーっと見回した。市役所という所は、この交易都市リベラルの行政を行っている場所。沢山の職員の他に、何か用があるからだろうけど、街の人達も大勢ここへやってきている。壁にかかっている案内板を見ると、1階から3階が一般開放されていて、それぞれ係りに別れて受付などがあるみたいだった。



「お待たせしました。市長は、この建物の最上階にある市長室におります。これよりご案内致します」



 眼鏡をかけた、如何にも仕事ができそうな男性の職員がやってきて私達に言った。上手くいったと、微笑んでいるシェルミー。Vサインも作っている。


 案内役の職員は、「どうぞ、こちらです」と言って、フロア奥へ私達を誘導した。そこには、グランドリベラルでもあったエレベーターが設置されていた。大きなエレベーターで、一度に全員が乗り込める。それで最上階になる8階へと上がった。


 チーーン。


 8階――エレベーターが到着し、ドアが開くと、目の前には男の子が立っていた。お互いに顔を見合わせる。すると男の子も私も、大きな声をあげた。



「あ、お姉ちゃん!!」


「え? あなたは!!」



 案内役の職員が、何事かと男の子と私の顔を交互に見た。



「もしかして、お知り合いでしたか?」


「うん。お姉ちゃん達を知っているよ。グランドリベラルで会ったからね。しかもこっちのお姉ちゃんは、あの場所でピアノをとても上手に弾いていたよね。そうか、知り合いだったんだ」



 男の子は、私達がグランドリベラルに最初に宿泊した時に出会った子だった。でもあの時の男の子がなぜ、こんな場所にいるのだろうか。しかもこの市役所の最上階部分は、完全に一般人立入禁止の場所だった。その証拠に、エレベーターを降りたその場所には、剣や盾などの武具を装備した警備兵が2人立っていた。きっと奥にも詰所があって、何かあったら大勢ここへ駆けつけてくるようになっているのだろう。


 私は男の子に聞いてみた。



「えっと……」


「僕はジョニーだよ。ジョニー・デプス」



 それを聞いて、ファーレがポンと手を打つ。



「なるほど、そういう事ですね。あなたは、ジャーニー・デプスの息子さんなんですね」


「ジャーニー……デプス?」


「テトラは、その名を知りませんでしたか。ジャーニー・デプスというのは、この交易都市リベラルの市長です」


「え? あっ! そういえば……」



 十三商人のリスト。それに十三商人以外の人物も1人、書き加えられていた。なぜなら、この都市の最高権力者である、十三商人に次ぐ権力を持ち、この都市の表向きの最高権力者だから。


 確かにあのリストには、ジャーニー・デプス市長の名があった事を思い出した。


 まさかホテルでたまたま出会ったあの時の男の子が、デプス市長の息子さんだったなんて……その事に私だけでなく、セシリアとローザも凄く驚いていた。

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