表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1227/1345

第1227話 『弓馬』



 荒野。オレとアテナとトリスタンは、武器を構えて辺りを警戒していた。


 先程まで猛烈な闘いを繰り広げていたドリルスコルピオンは、地中。そして遠い場所から、ちょいちょい岩を飛ばしてきて嫌がらせ、っつーか横槍を出してくるスコルピオンロックシューター。


 今はどっちの攻撃も止んで、オレ達は様子を見て静止している。近くにある岩場に避難しているダンカン達が、こっちに来そうな気配がしたので、そのままそこにいろってサインを送った。


 アテナが、オレとトリスタンに言った。



「気をつけて。どっちのサソリもまだ諦めていないわ。地中に潜った方は、私達とかなり打ち合っていたから傷ついている。その傷の痛みが治まったら、直ぐにでもまた攻撃を仕掛けてくると思う」


「ああ、間違いない。しかも今度は、真っ向からじゃなく、きっといやらしく地中からの攻撃メインでくるぞ」


「ドリルスコルピオン。それが本来の奴の狩りのスタイルだ」


「ほお、トリスタンのおっさんは、よくあのサソリの事をご存じで」


「ヘーデル荒野は、王都から比較的近い場所に位置し、拙者はこの地でよく訓練を行っている。だからこそ、アテナ様とモラッタ嬢達との対決の場所をここに選ばせてもらった」


「なるほど。なら当然、この荒野に生息しているサソリの魔物や、ラプトルなんかに関しても、よくご存知って訳か」



 頷くトリスタン。トリスタンから、ここの事に詳しいと聞いてアテナが早速質問した。



「それでどうするの? 私達、まだ対決の最中だし、今日は三日目だし……旗の奪い合いが始まっている。こうしている間にも、またモラッタさん達が私達のキャンプを攻撃しているかもしれないし、できるだけ早く皆のもとに戻りたいんだけど」


「…………」



 アテナの言葉を聞いたトリスタンは、なんだかとてもつらそう……というか、苦しそうな顔をした。何処か身体が痛んでいるとか、そういう苦しいじゃない。例えるなら、何か言いたいけれど、それがなんらかの理由で言えなくて、苦しんでいる。そんな感じだと思った。


 でもアテナの言う事は最もだ。早く、ルキア達のもとに戻ってやりてーし、何よりもう喉がカラカラなんだよ。その上、こんな暑い荒野でサソリ野郎共とバトルまでして、そろそろ限界だ。干上がっちまうー。ガブガブと思う存分に、水を飲みてーよ。


 トリスタンは、重そうな兜を持ち上げると指を当てて口笛を吹いた。すると闘いに巻き込まれないように、少し離れた場所にいたペガサスがこっちへ向かってきた。


 更にトリスタンは、オレとアテナに向かって背負っている弓と矢筒を手渡してきた。とても立派な弓――間違えない、これは一級品の弓『フェイルノート』だ。え? これもしかして、くれるんか⁉



「うっひょーーーう!! もしかしてこの宝をオレにくれるんか⁉ 嘘だろ!! すっげー感謝だぜーい!!」


「落ち着け、これは流石にやれぬ。貸すだけだ」


「え、貸すだけ? つまりレンタル?」



 明らかにガッカリするオレ。アテナはそんな落胆するオレを見て、溜息を吐いた。なんだそりゃ。当然でしょ、とでも言いたげなのだろうか。でもこれが弓でなく剣なら、アテナだってヨダレをベロベロに垂らして跳びついていたに違いないのに。



「その通り! アテナ様か、ルシエル。どちらかが拙者のペガサスと弓を使って、あの何処からか岩を撃ってくるスコルピオンロックシューターを見つけて、倒してきて頂きたい!」



 あの『フェイルノート』を使用する事ができるだけでなく、ぺ、ペペペ、ぺ、ペガサスまで乗せてもらえるんか⁉ そんなの夢のようじゃないか!! 絶対にオレがそれやりたい!! でもトリスタンは、オレにだけじゃなく、アテナにもそう言っている。


 むむむむむーー、いくらアテナでも、譲れんもんがある!! これがそれなんだ!!


 オレは、アテナと向き合った。真剣な目つき。



「アテナ!! 大変申し上げにくいんだがな。このトリスタンのおっさんからの重要任務、これを見事にこなせるのは、やっぱオレ以外に他にないと思うんだよな!!」


「え? そう。私もやれる自信はあるけど」


「ええええ!! そんなーー、それじゃあジャンケンするーう?」



 アテナが快く譲ってくれないんで、眼を潤ませた。するとアテナは急に笑い出す。



「あははは、冗談よ。弓はルシエルが得意でしょ。それにペガサスに是が非でも乗りたいんでしょ?」


「うん、是が非でもだ!」


「なら、スコルピオンロックシューターは、任せたからね」


「よっしゃ、まっかされた!! そうと決まれば、早速サソリ退治にゴーゴーゴーだな!! わはは! あと矢筒はいいや。自分のん使うから」



 トリスタンのおっさんから『フェイルノート』を奪い取ると、躊躇する事もなくペガサスに跨った。



 ヒヒーーーン!


「おう、大丈夫大丈夫。オレは、友達だ」



 そう言って優しくペガサスの首を撫でてやる。すると大人しくなった。トリスタンは、オレをじっと見ている。もしかして、お手並み拝見って感じか。いいぜ、なら見せてやんよ。



「よーーし、それじゃ行って倒してくる!! アテナとトリスタンのおっさんも、さっさと片づけろよ!! ハイヤーー!!


 ヒヒーーーーン!!



 上昇。ペガサスに跨り大空に飛び立つ。その瞬間、地面を突き破って大きなドリルが現れた。トリスタンのおっさんが、ドリルを受け止める。アテナはその隙に剣で斬りかかる。


 よーーし、じゃあオレは、しつこく岩を飛ばしてくるサソリをまず見つけないといけねーなあ。まあ、何度も岩を飛ばしてこられたから、もうだいたいの位置は検討がついているんだけどな。それにしても……



「うっひょーー、気持ちええーー!!」



 更に大空へ舞い上がり、雲を突き抜けるとまた急降下。大空を天馬で駆ける素晴らしさを少しだけ味見して、アテナやトリスタン、ダンカン、トマス達のいる荒野の上空に舞い戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ