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第1215話 『ズズッキー その1』(▼ルシエルpart)



 ずっとあれから考えている事がある。


 え? 何がって?


 えーー、まいったなー。それ言うのかよ。あらたまってそう聞かれると、なんだか照れるなー。うーーん、言わないとダメかーー? えーー、だってそう改まれて聞かれると照れんじゃん! 照れ照れんなっちゃうじゃん!


 え? もういいって?


 もういいって事は、ねーだろ! そこは、もうちょい突っ込んで聞いておくんなましよーー!!


 っていう事で、そうなんですよ。このオレは、ずっと考えていた事があるのです。


 このパスキア王国に入国した時に、オレ達を襲ってきた連中の事なんだけどな。ドルガンド帝国の将軍で確か、ジーク・フリートって野郎とジュノー・ヘラーって奴の事。2人とも真っ黒な装備一式でよ、ドルガンド帝国の将軍ってのは、色まで揃えてどんだけ仲がいいんだよって思っちゃってなー。


 普段、ドルガンド帝国って怖いイメージあんじゃん。アテナも昔、誘拐されたって言うし、妹のルーニもそうだったんだよな。巷でもドルガンドと聞けば、冷酷残忍って皆口をそろえて言っているし。


 だから何が言いたいかって言うと、あのジーク・フリートとジュノー・ヘラーのまるでお揃いっちゅうか、ペアルック的なあれを目にした時にゃ、ちょっと心がほっこりしちゃってよ。なんだかオラア……


 って、そうじゃねーーよ!!


 そんな話はしてねーんだよ。いつもこうなんだ。気が付けば話が脱線。辺りを見回せば、脱線! 知らないうちに訳の解んねーとこに話がいってました的な、そんな感じなんだ。っもう、訳わからねー。プンプン!


 え? だからなんなんだって? 解ってるよ、今話すってば。焦んなって、な。


 あのドルガンドの将軍達が、オレ達の馬車を襲ってきたあの時、オレとアテナで迎え撃ったんだよな。その時に、思ったんだよ。こいつあ、とんでもない強敵だってな。今までを振り返っても、ぶっちぎりで最強クラス。そんなのが2人だよ。ぶったまげたねー。


 パスキアへの馬車での移動は、ご機嫌なものだったよ。途中、立ち寄ったパテルさんの家でもまったりしていたし。そこからのあの戦闘だったもんで、オレもアテナも戸惑ってもーて、もーーとても本気でなんてやれていなかった。だけどそれは、向こうもそうだったはずだ。ジーク・フリートもジュノー・ヘラーも、ぜんぜん本気じゃなかった。


 あの場であいつらは、アテナを倒して身柄をかっさらうつもりだったようだけど、それは失敗した。でも奴らはめげずにこの国にまだいて、虎視眈々と再びチャンスを伺っているだろうし、ぜんぜん諦める気配もないとオレもアテナも思っている。つまりあいつらは、またオレ達に仕掛けてくるっつー事だ。


 もしそうなったら、今度は本当の本当――お互いに、本気を出しての戦いになるかもしれねー。そしたらオレはまだしも、アテナはあのどちらかと戦って勝てるのだろうかって事だ。そりゃ、こっちにはノエルやマリンっていう超強力な味方がいる。


 だけど特にあのジュノーって奴は、かなりのヤバさだった。オレを一瞬にして氷漬けにしやがったし……流石の、天使のような笑顔が素敵なルシエルちゃんでも、あの2人を一度に相手はできねーぞ。


 だからなんだよ!!


 だから、あのバケモノみてーなあいつらが再び襲ってきても、今度は問題なく撃退できるくれーに、オレも強くなっておかなくちゃならん訳よ! またアシュワルドのおっさんが、助けに来てくれるとは限らねーしな。


 でもはっきり言って、あのドルガンドのバケモン将軍を相手にすんのに、筋トレとか反復横跳びとかイメージトレーニングとか、独特な呼吸法で腹をペッコンペッコンひたすらさせるトレーニングをしていたとしても、実力の差を僅かも引き離せないだろう。


 じゃあ、どうすればいいのか?



「そんなん、決まってんじゃねーか! 実践だよ、実践!! 実践練習が一番いい!!」


「このエルフは、何を訳の解らない事を言っている!!」



 ガシュウの槍を上体を反らせて避け、ズズッキーのウォーハンマーによる攻撃を、チョロチョロと動き回って翻弄して避ける。そしてロゴーの双剣を、それ以上の圧倒的なスピードでかわすと、今度は反撃。ロゴーの顎を思い切り蹴り上げる。ロゴーは、そのまま後方に吹き飛んで地面に倒れた。



「っしゃーー!! さあこい、さあこい!! 身体があったまってきやがった!! こいよ、おらあ!!」



 実践を上回るトレーニング方法はない。少なくとも俺はそう思っている。どうだと言わんばかりに、近くの岩にちょこんと座るアテナにチラリと視線を送ると、アテナはこれ位はできて当たり前だと、余裕の笑みを返してきた。


 キーーー、ちっきひょーー!! アテナめ!! 間違えないと確信した!! この位の事は、あたいだってやれるわーーって顔だ、あれは!!


 くっそーー、仕返しが怖いから絶対やらんけど、もしチャンスがあればルキアやカルビもヨダレを垂らして悶え苦しむコチョコチョ地獄をお見舞いしてやりてーわ!!



「さあ、おら、起きろ!! 3人でかかってこいよ、そうでないとオレの練習にならんだろーが」



 ロゴーは、倒れたまま起きない。ルシエルの言葉にガシュウとズズッキーの顔つきが変わる。そしてズズッキーが前に出た。



「ガシュウ、ちょっと下がっててくれねーか!!」


「それは構わんが、そうなるとアテナ王女は、俺一人でやらせてもらう事になるぞ」



 何を言ってんだ、こいつらは。3人がかりでオレにこんなにされとんのに、1対1でアテナに勝てる訳がねーだろーが。



「仕方ねえ! いいだろう。じゃあ、この生意気なエルフは、俺がやっちまってもいいな!! アテナ王女と違って、こいつは力余ってやっちまってもいい訳だしな!!」


「いいねー、威勢がいいじゃんかよ。その位でないとな。でも本当は、そっちの彼と一緒に協力した方が絶対いいと思うんだけどなー。まあ、でもアレだな。無謀だとしても、このルシエル様にタイマン張ろうとする勇気だけは、高く買ってやらんとな。ウハハ」



 挑発はオレの得意とする十八番技。ズズッキーは、すっかりとそんなオレの挑発に乗って、1人で突進してきてしまった。


 ウォーハンマーを振り上げて、思い切り振り下ろす。ウォーハンマーのような破壊力のある武器は、攻撃方法も単調になりがちだ。当たれば終わりだとでも思っているのかもしれねーな。


 ドドーーーン!!


 ズズッキーの一撃で、荒れた地面に窪みができる。あっぶねーーな。でも当たらなければ、どうという事はない。さて、反撃するぜ。そう思って踏み込む。



「馬鹿め、かかったな!!」


「ほえ?」



 怒りの形相で、ウォーハンマーを振り回していたズズッキー。気が付くと、その顔には不適な笑みが漏れ出ていた。

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