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第1212話 『勝負、再び! その1』



 馬は、私達を追ってきていた。騎乗しているのは、3人の男。モラッタさん達のキャンプにはいなかった者達である事は、明白だった。



「出て来られい、アテナ王女!!」



 聞き覚えのある声。なるほど、そういう事か。なんとなく現状を理解し、ルシエルと顔を見合わせる。



「もう、アレだな。なんというか、なんでもアリだな」


「向こうは、そうかもしれないけれど、こっちがやったら、きっと色々と言ってきて反則負けにされるのがオチね」


「それじゃ、どうする? 相手はこんな卑怯な事をしてきているのに、こっちは何もできねーのかよー。抗議もんだろーがよー」



 納得いなかないと、悲しそうな顔をするルシエル。でも……



「フフ、でもルシエル。よく考えてみて」


「おうん?」


「向こうがルールを破ってこういう手で出てきたからって、私達にとってそれが果たして脅威になるかしら? 私達は、それ程弱くないと思うんだけど」


「ほうほう、なるほど。なんとなく、アテナが言いたい事が解ったぜ。それじゃ、まあいいや。確かにその通りだし。サッとやっつけて、俺達のキャンプに戻りますか」


「うん、そうね」


「いるのは、解っています!! さあ、出てきて姿を見せなさい!! アテナ王女!!」


「ここにいるわ!!」



 3人の馬に乗った剣士風の男達。私とルシエルは、隠れていた岩陰から飛び出して姿を晒した。



「やっと出てこられましたか」


「出てきたわよ、それで何かようなの? ロゴー・ハーオンさん」



 逃げる私達を追ってきているのは、モラッタさんの仲間だけではなかった。ううん、正確には仲間なんだろうけど、あのキャンプから追ってきた訳じゃない。近くにこっそりと隠れて、機を伺っていたのだろう。


 そう、男はモラッタさん側についていた連中であり、パスキア四将軍が1人、ロゴー・ハーオンだった。彼とは既に二度に渡って戦って、勝っている。



「知っていると思うけれど、私達は今このヘーデル荒野で、モラッタさん達とキャンプ対決をしているんだけど。何か用なら、さっさと済ませて欲しいわ」



 ロゴー・ハーオンは肩を揺らして笑った。隣にいる他の2人も同じように笑っている。ロゴー以外の男も、よく顔を見ればなんか見覚えもあるし……会って話を少しした事もあるわね。



「実はですね。こんな時にどうかと思いましたが、いてもたってもおられず……アテナ王女と私の対決の件で、ここへお伺いしたのです」



 ルシエルが口を挟む。



「はあ? 何言ってんだ、おめー。対決って、これはモラッタやデカテリーナ達との対決なんだぞ。お前は、関係ねーじゃんよ」


「護衛のエルフか」


「護衛じゃねー。仲間だ」


「どちらだっていい。私はアテナ王女と話をしている。お前に用はない。黙って大人しくしていろ」


「なんだと、こんやろー!! てんめ、こんな可愛いエルフに向かって、なんて言い方しやがるんだ!! 一生どうにもならねえ傷を、心に負っちゃったらどーしてくれんだ!! おうん!!」


「ちょ、ちょっと待ちなさいルシエル! 話がややこしくなるから! ちょっとここは、私に任せて!!」



 まるでキツツキのように、口を尖らせるルシエル。はいはい、もういいから後ろへ下がってくださーい。



「それで……ロゴー・ハーオンさん」


「ロゴーとお呼び下さい」


「ロゴー、あなたと私の対決ってなに? それならもう王宮の練習場で終わったはずでしょ。それに今は、知っていると思うけど私は他の事で忙しいんだけど。取り込み中なの」


「あなたが良くても、私は良くない。パスキア最強と言われるパスキア四将軍の名を、汚してくれた」


「正式な試合だったでしょ。フィリップ王やセリュー王子も見ていたし」



 ロゴーの顔つきが変わる。セリューの名前を出して、そうなったって事は……やっぱりセリューの命令でここにやってきた訳ね。もちろん、自信の個人的恨みもあるかもしれないけれど。



「それでも私は……いえ、我らパスキア四将軍は、あの勝負にまだ納得していません。ですのでこの場で、もう一度我らと試合をして頂きたい!!」



 はあ、やっぱりそう来たか。空を見上げると、私達の映像を王宮に中継しているテントウムシの姿が1匹もいない。


 私とモラッタさん達との対決は、女性のみの参加って決めたのに……


 もうガスプーチンが出てきた所で、ルールも何もない。しかも30人って上限も、超えているのは明白。それは、フィリップ王やその他の観戦している人達も気づいているはず。


 だけど、面白いからそれでいいと思っているのか、同じ国のモラッタさんやセリュー王子が可愛いから、黙って見て見ぬふりをしているのかは知らないけれど、フィリップ王も誰も咎めない。


 王が黙認すれば、家臣もそうする。そんなの卑怯って思うかもだけど、クラインベルト王国だって全くそうじゃないとは言えないし、ここはパスキアなのだから私がもしもなにかしら抗議したとしても、通用する見込みはない。


 当初は、私とカミュウの縁談のみの話だった。なのに、王都につくなりロゴーと試合をさせられて……その辺りから話がおかしくなってきていた。


 でも、まあ構わない。私からすれば、参加人数が30人だろうが50人だろうが100人だろうが、こっちの人数は変わらないから。ガスプーチンや、パスキア四将軍が私の前に立ち塞がろうとも、負ける気もしないし。


 だから、もういい!



「ああ、そう。じゃあ、ここでもう一度試合をする? フィリップ王もセリュー王子もここにはいないけれど、それであなたが今度こそ納得するならいいわ」



 ロゴーは私の言葉を聞くとニヤリと笑い、両手に得意のダガーを持ち双剣スタイルで構えた。続けて後ろの2人も構える。武器は、ウォーハンマーと槍。



「話が早くて、助かりますアテナ王女。もちろん加減はするつもりですが、アテナ王女は相当の使い手というのは、もはや痛感しておりますゆえ……本気で行かせて頂きます。力余って、怪我をさせてしまうかも……」


「それはいいけど、偉そうに言って、もしかして1対3でやるっていうんじゃないでしょうね。別に私はそれでも構わないけれど、それならそれであなたに対して凄くがっかりなんだけど」


「見くびらないでもらおう!! この私が本気になれば、あなたなど簡単に倒してみせる!!」



 ロゴーは、鬼のような形相で斬りかかってきた。その攻撃には、確かに殺気を感じた。

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