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第1208話 『トラップ?』



 何がいいたいのかというと、私達のキャンプに強襲を仕掛けてきた子達もそうだけど、とても人生を剣に捧げているという感じには見えなかった。もっと正確に言うと、嗜んでいるといった感じ。なんというか、如何にも女戦士というような格好をしていても、その内側に貴賓さを漂わせている。


 気のせいではないと言える理由も、ちゃんとある。私はこんなんでも、一応王族だったりするから、そういうのは雰囲気とか息遣いみたいなもので解っちゃったりするのだ。



「おいおい、アテナ見てみろよ!! 信じらんねーよ。あいつらまさか、専属シェフをここへ連れてきているんじゃねーか!! あんな料理、こんな場所で作れんだろーが!!」


「ちょっと、ルシエル! あんまり岩から身を乗り出さないで。それともう少し、小声でお願い。見つかっちゃう」


「いっそ、見つかってもいいんでねーのって思えてくるなー。そしたらよー、まずはあの料理と酒に向かっていって、突撃する。そんでもって略奪な!」


「はあ……一応、あなたは森の知恵者とか言われれるエルフでしょーが。略奪するとか言わないの!」


「だってあんなん見せられたら、そりゃオレにもよこせってなるじゃんか! それでたらふく美味いもんを堪能せしめたら、あの旗を奪って燃やす。それで終わりじゃねーの。よし、それで行こう。きっと上手くいくぜ」


「えーー、そう上手くいかな」


「なんで? 上手くいくに決まってんだろ。このオレとアテナのスーパーコンビなんだぞ。このままあの旗まで突っ切っていくなんて、楽勝プーだろーが」


「うーーーん」


「なんだよ、何か問題あるー?」



 首を傾げるルシエル。私は、モラッタさん達のキャンプ地の中央に、深々と突き刺さっている旗を指して言った。



「なんか、あの旗の周りなんだけど……あまりにも手薄じゃない?」


「そうか?」


「そうよ。だってこの勝負は、旗の奪い合いでしょ? 言ってみればあの旗は、命そのもの……っていうのは大袈裟かもしれないけれど、取られればそれで負けが決定してしまう」


「旗を奪い取って、ビリビリに破ればいいんだっけ?」


「ビリビリに破いてもいいし、燃やしてもいい。兎に角、破壊すればいいのかな」


「それじゃ、ここから火属性魔法でも放って燃やしてしまえば、そんでオレ達の勝ちなんじゃないのか?」


「だーかーらー、まず奪わないといけないんだって。モラッタさん達も、私達のキャンプを襲撃してきた時に、まず旗を奪おうとしていたでしょ。だからルール的には、まず旗の所まで辿り着いて、手に入れなくちゃならないの。それからその旗を破壊する。そしたら、勝利が確定する……って私は思っていたんだけど」


「ふむ、なるほど。確かにそうかもしれん」



 本当に理解しているのか……ルシエルは、偉そうに腕を組むと唸ってみせた。それもなんとなく、わざとらしい。



「ええーーい、面倒くさい!! そんならこのままビュビューーと走って行って、旗を奪って終わりにしようぜ。よし、決めた。それじゃ行ってくる。って、ぐえええっ!!」



 1人で突っ走ろうとして、岩陰から飛び出たルシエルの襟首を掴んで引き戻した。ルシエルの首が絞まってしまい、まるで鳥の断末魔のような声をあげる。



「くおーーらーーーああああ!! なにすんじゃこりゃーーー!! 窒息死したら、どう責任取ってくれんじゃあああ!! そうなったらちゃんと、オレとけけけけ結婚してもらうからね!!」


「なんで結婚なのよ。そんな事よりも、勝手に1人で先走らないで」


「オ、オレが一番上手くやれるんだ!!」


「なんのセリフよ、それ。またなんかの影響を受けたでしょ。兎に角、用心にこしたことないの」


「んもーーう、アテナは考えすぎなんだよ。きっとなんもないよーう」



 ルシエルはそう言って、ターゲットの旗ではなく、モラッタさん達の仲間が食べているご馳走を一点に見つめていた。まあ、こんな勝負さっさと決着つけて、あの美味しそうなご馳走をおよばれしちゃおうっていうルシエルの魂胆は、誰でもこの場にいれば解っちゃう事だけど。



「さっきも言ったけど、これだけ人がいるのに、あの旗の周りには1人も見張りがいないっていうのが、どうも引っかかるのよね。だって、どう考えてもおかしいでしょ」


「いやー。まさか、オレ達が追けてくるなんて思っていないんだって」


「それでもこの人数なら、1人か2人は守りにつけるはずよ。完全に高をくくっているっていうのなら、別にこの旗を中心にしてキャンプを設営しなくても良かった訳だし。人の心理として当然だと思う」



 モラッタさんは、以外にもなぜか戦術のようなものに精通しているようだった。だからこそそんな彼女が、旗の隣に1人も見張りを立たせておかないっていうのは、おかしいと思った。



「あと、気になるのは地面かな」


「地面?」


「旗の周りの地面、なんだかやけにボコボコしていない?」


「うーーん、どうだろうか。言われてみればボコボコしているような気もするけど……でもそれが、今なんか関係あんのか……って、え? ま、まさか!?」


「やっと気づいてくれたようね。おそらくっていうか、私はまず間違えないとふんでいるんだけど、きっとあの旗の周りには何かトラップが仕掛けられているのよ」


「嘘だろ!? もし、そーなら、な、なかなか手が込んでいるな」


「この対決に勝って、カミュウとの縁談を進めたいって本気さは凄く伝わってくるかな。それに向こうには、あの宮廷魔導士ガスプーチンがついているからね。もしあのトラップを仕掛けたのが彼なら、かなりヤバいトラップかもしれない。別に私達は、追い詰められてピンチって訳でもないんだし、ちゃんと状況を見極めてから、作戦を立てて勝負に出てもいいと思うんだけど」


「ううーーむ。確かにそうかもしれんぞなもし」



 せめてあの旗の周りに仕掛けられているトラップがどういうものか……それが解るといいんだけどな。

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