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第1203話 『来たよ、対戦相手! その2』



「きゃあっ!!」


「ルキアー!!」



 馬に騎乗している数人に囲まれていたルキアは、よく戦っていた。猫の獣人だけあって、物凄く俊敏なその動きで四方からくる攻撃をかわし上手く翻弄している。だけど多勢に無勢。止まない複数人からの連続攻撃でルキアは、徐々に圧倒されてしまい足がもつれて転んだ。ルキアを囲んでいた者達は、転んだ彼女を無視して旗の方へと向かう。



「アテナ!! 旗を守ってください!!」


「うん、任せて!!」



 地面に根深く突き刺さった私達の旗。それを奪い取ろうと、向かっていく騎馬。走っても馬が相手じゃとても追い付けないと思った私は、懐から果物ナイフを数本取り出すと前方に向かって勢いよく投げた。まずは1本投げて、その後に残り数本を両手で交互に続けて投げる。


 最初に放った果物ナイフが、一番後ろを馬で駆けていた女戦士の肩をかすめた。実は当てるつもりはなくて、わざとかすめさせた。女は振り返ると、並走していた仲間に向かって叫ぶ。



「投げナイフだ!! 狙いも飛距離もある。気をつけないと背中をやられるぞ!!」


「え? 背中!?」



 送れて更に投げていた果物ナイフが彼女達を襲う。急所はさけて投げているけれど、今度は命中させるつもりで。


 既にこちらを注目していた彼女達は、武器などを構えると、飛んでくる果物ナイフを弾いてガードした。その隙に私は彼女達との距離を一気に詰めて、一番最初にナイフをかすめさせた女の目の前まで追い付いた。


 女は慌てて剣をこちらに向けて、突き出してきた。



「うわああ!! もうこんなところまで!! な、なんて足の速さだ!!」


「えへへ、誉め言葉として受け取っておくわ。でもこれであなた達は、私達の旗を奪える最大のチャンスを逃しちゃったわね」


「うおおおお!!」



 狙いは右肩。なるほど、相手を殺さずにして戦闘力を奪う為には、足か利き腕を狙うが定石。慌てて瞬時に繰り出した攻撃にしても、モラッタさん達は腕の立つ人達を雇ったみたい。でもね、正直言って剣で負ける気はしない。


 女が馬上から突き出して来た剣をサっと避けると、同時に詰め寄る。相手が繰り出す真っすぐな攻撃に対して、それを回避しつつも懐に入る技術を【スリッピング】っていうんだけど、私はこれがかなり得意だったりする。女が剣を握っている方の腕と、相手の腰にあるベルトを掴むと、そのまま馬上から地面へと投げ落とした。同時に、相手が落馬する時、頭から落下しないようにしてあげつつも、剣を奪い取る。



「ぐはあっ!!」


「はい、私の為に馬を提供してくれてありがとう」



 女と入れ替わる形で、私は馬に騎乗すると旗に群がろうとしている敵へ向けて全力で疾走した。旗を奪い取ろうとしていた女達は、仲間の馬をいともたやすく奪って向かってくる私に対して怯む。その一瞬の怯みが、また私にチャンスを与える。



「く、くるぞ!! 迎え撃つべきか、旗を奪う方が先決かどうする!?」


「ええい! 旗まで行くまでに、追い付かれる距離にきているわ!! 迎え撃つのよ!!」


「解ったわ!!」



 4人同時に踵を返し、こちらに向かってくる。得物は剣、剣、槍、薙刀。



「うあああああああ!!」



 荒声をあげて突っ込んでくる女戦士達。私はまだ剣は抜かずに片手で手綱を持ち、もう一方の手を剣の柄にそっと添えていた。正面からぶつかる。


 ズバズバズバズバ!!


 【居合斬り】の峰打ちバージョン。騎乗している為、地面をしっかり踏んで為を作れない分、いい感じに威力が落ちる。それでも相手を上回る速度で、剣を鞘から瞬時に抜刀して打ち付ける。4人の女戦士たちは、低い呻き声をあげて落馬した。


 命に別状はないように打ったけれど、剣で打ち付けられているのには違いはない。まともに入ったし、これで暫くは動けないはず。



「アテナーー!!」



 振り返ると、こちらにルキアが駆けて来た。その向こうを見ると、ルシエルがガスプーチンと見合っていて、別の方では多人数を相手にたった1人で、ノエルが奮闘を続けている。


 なるほど、20人近く攻めて来たと思ったのに、実際に旗に直進してきたのは5人程だった。こんなに人数が少なかったのは、大部分をノエルが引き受けてくれていたからだ。



「アテナ! 一度に5人もやっつけるなんて、流石アテナですね!」


「それを言うなら、ルキアだって私が駆けつけるまでに1人で5人を相手にしていたでしょ」


「相手にって……私の場合は、なんとか避けるだけで精一杯だったし……」


「今、ここに攻撃を仕掛けてきているのは、モラッタさん達が雇った人達で、かなり腕も立つと思う。そんな人達を相手できるんだから、ルキアは十分に強くなっているよ。もっと自信をもって!」


「は、はい! そう言ってもらえると、嬉しいです」



 ルキアは、少し頬を赤くして俯き気味に言った。照れている。でも本当にルキアは強くなったと思う。最初に彼女と出会った頃と見た目はほとんど変わらないけれど、その内側は圧倒的に成長して強くなった。


 ガイイイン!!!!


 大きな音がした。私とルキアは驚いて何が起きたのか確かめる。するととても身体の大きな女戦士が、ノエルと向き合っていた。周囲には10人以上の女が倒れているけれど、全部ノエルがやっつけたみたい。でもあの大きな女戦士は、一筋縄じゃいかなそうな感じ。



「アテナ。あの女の人って、もしかして……」


「そうね。あの女戦士は、デカテリーナさんね。あれだけの身体をしているし、お父さんがパスキアの将軍って言っていたから、確実に武闘派だとは思ってはいたけど」



 先程の大きな驚く程の金属音は、ノエルのバトルアックスと、デカテリーナさんのスレッジハンマーが激突した音だった。


 私とルキアは、旗を守る為にその近くにいなくちゃいけなかったので、少し距離があるノエルには、不用意に近づけない。だから、とりあえずここからノエルを応援した。

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