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第1202話 『来たよ、対戦相手! その1』



 私達がキャンプを設営している場所。そこにガスプーチンを始めとする、モラッタさん達と思われる者達数十名が攻めてきた。時計の針は、旗の奪い合いを開始する10時を確かに回っている。


 私達に向かって容赦なく頭上から、『火球魔法(ファイアボール)』を打ち込んできたガスプーチンを見上げると、私とルシエルはブンブンと腕を振って、彼に対してもうプンプンに怒っているのだと猛烈にアピールした。



「ちょっとどういうつもり、あなた!! 危ないでしょーーが!! もしかして、私達を殺すつもりなの⁉」


「そうだー、そうだー!! てめーこら、そっちがそのつもりなら、こっちへ降りてきやがれってんだ。決着つけよーぜ、ガスプーチン!! お仕置きしてやるんだからね!!」



「ちょっとなにそれ、もしかして最後の、私のモノマネとかじゃなおわよね」


「へ? 違うですよ。アテナはん、怖いー。怒りはワテやのーて、あのオッサンに向けておくんなましよー」



 なんだかなー。って、それはいいとして、声はしっかり届いている。その証拠に、ガスプーチンは、私達のいる遥か上空からニタニタと笑みを浮かべてこちらを眺めている。


 騒ぎを聞きつけて、テントの中からエスメラルダ王妃とクロエ、そしてカルビが姿を現した。



「これはなんの騒ぎなのですか⁉ もしやもう攻めてきたというのですか?」



 敵が攻めてくる。この事態にエスメラルダ王妃は、もっと混乱するかと思っていたけれど……彼女は、頭上で憎たらしい顔をしてこちらを眺めているガスプーチンの顔を確認すると、恐怖や不安よりも怒りを露わにした。



「またあのガスプーチンですか!! あの者を、さっさと叩き落とせないのですか、まったく鬱陶しいことこの上ない!! ゾーイ、あなたあれの顔面に鉄球を打ち込みなさい!!」


「恐れながら、あれだけ高い位置にいると、私の鎖鉄球はもはや届きません」


「ならば、アテナ!! 攻撃魔法であれを消し炭にしてしまいなさい!!」


「え? いいの?」



 あれでもパスキアの宮廷魔導士だという。うちの国で言えば、ミュゼ・ラブリック……爺がそうだけど……宮廷魔導士というのは、それぞれの国で、役割や立場も異なったりはするけれど、だいたいはとても高い地位とされている。そしてその役割は、国王の側近というか、参謀や相談役みたいな役割を担っている。


 だからと言って、魔導大国で高名だった大魔法使いミュゼ・ラブリックこと爺と、このへんてこで怪しすぎるガスプーチンを同じ立ち位置にしたくはない。



「かまいません! 今すぐ、あの怪しげな髭の男を消し炭にしてしまいなさい。私が許可します」


「えーーー、でも……」

 


 流石にそれはまずいでしょーが。突っ込むべきかどうするか考えていると、ゾーイがエスメラルダ王妃の腕を掴み、テントの方へと引っ張った。クロエもエスメラルダ王妃と手を繋いでいるので、結果彼女もテントへと連れていかれる。



「なにをするのですか⁉ ゾーイ!! 離しなさい!!」


「お許しください。間もなく敵が攻め込んできますので、こちらにおさがり下さい」


「離しなさい!! 相手は旗を狙ってくるのでしょう! 心配はありません!」



 ゾーイはまったくエスメラルダ王妃の言う事に耳を貸さずに、テントへと連れて行った。私は心の中で、エスメラルダ王妃を避難させて守ってくれているゾーイに、密かに感謝をした。ガスプーチンのさっきの攻撃魔法。旗ではなく、完全に私達を潰そうとして狙ったものだったから。



「アテナ!! 来るぞ!!」



 ノエルの声に振り向くと、荒野の向こうに見えていた土煙は、なんともう目の前まで迫っていた。馬に騎乗した者達は、皆女だった。剣や槍を手にしていて、身体つきは筋肉質で戦士に思える。間違いなく、モラッタさん達の配下の者達。



「ルシエル、ちょっとお願いがあるんだけど!!」


「解ってんまんがなー!!」


「え? まだ何も言っていないけど、本当に解っているの?」


「そりゃそうだしょ。オレとアテナはもう、かれこれな付き合いになるだろ? これ位の事なら解るんだよ。ツーカーってやつな」


「へえ。じゃあ、何が解ったのか言ってみて」


「アテナ達は、あのこっちに突っ込んでくる軍団をやっつけるから、オレはあの空でペガサスに乗って余裕ぶっこいているガスプーコって野郎をぶっとばせばいいんだろ?」



 ルシエルは、本当に私が言いたかった事を理解してくれていて驚いた。その通りだった。


 今、ここへ突撃してくるモラッタさん達の軍団。私もそうだし、ノエルもそうだけど、個人的な武力勝負なら負ける気はしない。だけどざっと見ても20人位はいる。しかも全員馬に騎乗しているし、一気にこられたら……旗まで守って戦う事になれば、とても大変な事になる。


 そこをあのガスプーチンにまた攻撃魔法で狙われたら、たまったもんじゃない。だから弓矢も精霊魔法も使える、遠距離攻撃の得意なルシエルにガスプーチンの相手を任せたかった。



「ぶっとばせばいいって言うか、多くは望まないから、喰いとめてくれればいいんだけど。またさっきみたいに、攻撃魔法をこっちに向かって打ち込まれないようにしてくれればいいから」


「まっかせなさい。本当はオレも乱戦の方が楽しそうだなー、いいなーいいなーって思っていたんだけど……まあいいや。ガスプーコの相手は、このオレ様に任せてくれってばよー……ってガスプーコってなんだよな、ギャハハハハ!! ちょーウケるーー」


「じゃあ、お願いねルシエル」


「おう、任された!」



 ルシエルは、親指を立ててニカリと笑うと、愛用のアルテミスの弓を手に持つ。そして矢を添えて、ガスプーチンに向けた。矢はまだ放たないけれど、睨み合いになってガスプーチンは迂闊に動けない。


 その膠着状態を目にすると、私はこちらに向かってくる騎馬軍団へ向けて駆け始めた。軍団は既に私達のキャンプ場所に突撃してきていて、私の目前ではノエルが愛用のバトルアックスを手に、周囲を囲む相手と奮闘を繰り広げていた。


 更にルキアも旗を守る為に、数騎を相手に頑張っている。ノエルは心配ないとして、まずはルキアの応援と、旗を守る事を優先するべきね。

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