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第1181話 『ジュノーの拷問 その2』



「ベレス。お前は、盗賊の類と戦った事があるか?」


「い、いえ。ありません」


「そうか。それなら、よく見ていろ。これから私が、賊の扱い方をお前に教えてやる。こいつらの事はゴキブリと言ったが、実はゴブリンなどに近い。恩を仇で返し、情を見せればそこにつけこんでくる。盗む事を生業にし、邪魔をすれば簡単に殺人を犯す。どうしようもない、存在だ。ゴキブリ以下の害虫だよ」



 ジュノー様は、そう言って火の点いた薪をじっと眺めた。私は、ガラーナもドルチェと同じ目にこれから合うのかもしれないと思った。2人には、襲われ傷つけられたが……ジュノー様の拷問は、目を背けたくなる程強烈だった。



「ままま、待って!! 待ってください!! 騎士様!! どうか、お許しを!! どうか、私達をお助け下さい!!」



 恐怖に震えるガラーナ。なんとか絞り出したような声。ジュノー様は、彼女を驚いた顔で見た。



「ほう、賊のクセに珍しいな。聞いたか、ベレス?」


「え? えっと……どういう事でしょうか、ジュノー様!」


「この髪の長い方……今、こいつは許して欲しいと私に言った。そして私達をお助け下さいとも。今まで私が会った盗賊は、私を……とか、私だけでもとか言っていた。でもこいつは、少しは見所があるという事か」



 許されるかもしれないと思ったのかもしれない。一瞬、ガラーナの表情が明るくなった。しかしすぐに苦悶に変わる。


 ジュノー様は何を思ったのか、手に持っていた薪を焚火へと戻すと、今度は枝を拾ってきてナイフで先端を削って串にした。そしてその串を、ガラーナの太腿に突き刺した。何度も――



「ぎゃああああああ!! 許して、許してくださいいいい!! どうか、お許しをおおおお!!」



 つんざくような悲鳴。私は、もうこれ以上この悲鳴を聞き続ける事ができなかった。



「フフフフ、これ位で悲鳴をあげてどうする? まだ朝までは時間がある。私達の睡眠を邪魔した償いは、しっかりと受けてもらうぞ。さあ、もっと泣き叫べ」



 うっすらと笑みすら浮かべ、淡々と拷問を続けるジュノー様。私は2人の間にかけよった。



「ジュ、ジュノー様!!」



 ジュノー様の手が止まる。ガラーナは、すがるような目で私を上目遣いに見た。口からはヨダレが垂れて、声も出ない。パクパクと口を動かし、何か言っているようだった。私には、それが何を言っているか読み取れる。ごめんなさいと言っている。



「なんだ、ベレス。どうかしたのか? お前もやってみるか? それなら新しい串を……」


「いえ、違います! そ、その……」


「なんだ、はっきりと言え」


「どうか、この2人をこの辺で許してやって頂けないでしょうか? お願いです」



 私の言葉を聞いて、ジュノー様は信じられないものを見るような目でみた。でも私はジュノー様の暖かさも知っている。ジュノー様に不信感を向けられようとも、ジュノー様の為になる事であるのなら私は……



「この賊を助けるというのか? 私の先程の話を聞いていたはずだな、ベレス。盗賊とはゴブリンと同じだ。狡猾にして、義理や情を持ち合わせない」


「それならば、ドルガンド帝国の軍人もそうですね」


「なんだと? まさか、ベレス。お前はこの私もシュバインの豚や、ハイドリヒのような拷問マニアと同じだと言っているのか?」


「ち、違います。ジュノー様は違います。それは、命をかけて違うと断言できます!」


「そうか、命をかけるというのだなベレス。こんな賊の為に……とても理解はできんが、お前が私の為に言っている事だというのならば、いいだろう」



 ジュノー様、ガラーナの前に立った。先程までの薄ら笑いは浮かべてはいない。厳しい目を向けている。ガラーナは、また縋るような目でジュノー様と私を交互に見た。



「ゆ、許してください。なんでもします。なんでもしますから!! ですから……」


「なんでもすると言ったが、本当か?」


「は、はひ。でも死にたくはないです。それ以外なら、なんでも……」


「この場で裸になって、踊れるのか?」


「は、はい、そうおっしゃるなら、もちろん! なんでもします」



 ジュノー様は、呆れた顔で私の方を見た。



「ああ言っているぞ、ベレス。考えてみれば、酷いめにあったのはお前だしな。あとの始末はどうするか……お前に任せよう」



 ジュノー様は、そう言って2人の盗賊にすっかりと興味を無くしたみたいに横を向く。自分が先程まで眠っていた大きな岩の方へ行き、それにもたれかかった。


 私はまず気を失っているドルチェに目を向けると、次にガラーナへ向けた。



「お前の名前はガラーナ。そして隣で気を失っているのは、ドルチェ。間違いないか?」


「は、はひ。そうです」


「私の名はベレス。あちらにいらっしゃるのは、ジュノー様だ」


「は、はい。ベレス様にジュノー様……」


「今から縄を解いてやる。だが……」



 そこまで言った所でジュノー様が口を挟んだ。



「かまわん。縄を切ってやり、その後貴様らが再び、私達に報復しにきても私は一向にかまわない。むしろその方が都合がいい。今度は、ベレスもお前達に情けをかける理由がなくなるからな。そうすれば、またお前達を動けなくして楽しい時間の再会だ。今度はどんなに泣き叫ぼうが、絶対に許さない。そしてガラーナ。お前は、特に時間をかけて可愛がってやろう。フフフフ」



 ガラーナは呆然とした。そして子犬のように小刻みに震えている。


 私は、2人の縄をナイフで切ってやると、ガラーナと共にドルチェの身体を焚火から引っ張って遠ざけた。それから2人が負った火傷などの傷の治療をしてやった。

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