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第1180話 『ジュノーの拷問 その1』



 焚火の炎はメラメラと音を立てて、激しく燃えていた。私が眠っていた時よりも、燃えている。それは新たに薪を足して、炎を強くしろと、私がジュノー様に言われたからだった。


 ジュノー様は、森に生える適当なサイズの木を剣で斬ると、あっという間に杭にした。それを焚火の直ぐ近くに打ち込む。そしてその杭には、先程私達を襲った女盗賊2人を縛り付けた。両手両足共、縄で縛っている。その縄は、盗賊が持っていたものだった。



「ううう……熱い!! 熱いーー!!」


「た、たすけて……せめて焚火から、もう少し遠くにしてくれ。このままじゃ、服に火が燃え移っちまう!!」



 2人の女盗賊。髪の短い方、ドルチェは杭に縛り付けられてからずっと熱い熱いと叫んでいて、もう1人のガラーナはずっと命乞いと、焚火からもう少し離れた場所に移動させてくれと懇願している。それもそのはず。2人と焚火の距離は近過ぎて、既に何度か2人の衣服に火が移り、縛られながらも必死に藻掻いて火を消している。


 ジュノー様は、2人の前に薪を積み、その上に腰かけた。ゆったりとしている。



「あ、熱い!! 早く縄を避け!! でないと、後で酷い目に合わせるぞ!!」


「ほう、そうか。フフフフ、聞いたかベレス。まだこいつらは、こんなに元気が残っているらしいぞ」


「は、はっ!」



 ジュノー様の問いに慌て答える。先程まで野宿していて、やっと眠りにつけたと思っていたのに……今は、とても大変な事になってしまっている。



「フフフ、この賊共は、この私に後で酷い目に合わせる気らしいぞ。なんだかワクワクしてきたな」


「そうだ!! だから早く解け!! でないと、絶対後悔させてやる」


「なるほど。それは興味深い」


「な、何が興味深いんだ!! 早く解け!! あ、熱い!! 火が!!」


「やめろ、ドルチェ!! あんたあったま悪いんじゃない!! 動かないで、そんなに動いたらこっちに火が飛ぶでしょ!!」



 必死に藻掻いている2人。身体のあちこちに火傷を負っている。こうなる前には、ジュノー様に剣で斬りつけられ突かれ、身体中に傷を負わされ流血した。今は、彼女達の衣服は血の色で染まり、所々が燃えて穴が空いている。



「何が興味深い? そうだな、特別に答えてやろう。今晩は、なぜか私は特に気分がいいのでな。私は、貴様ら賊をゴキブリと同じだと思っている。見つければ、潰す……即刻処刑にするところだが……特別に答えてやろう」


「ゴ、ゴキブリ……アタシらがゴキブリだと……」


「私は、人生これまで後悔した事がないのだ。少女の時に、嫌という程絶望し、悲惨なめにも幾度となくあった。いや、私の生が悲惨そのものだったのかもしれない」


「な、何を言ってんだ? 言っている意味が解らねえ!! そんな事より、早くこの縄を解け!!」

 


 ジュノー様は、ドルチェの言葉を聞いてはいる。でも特に気にもせず、続けた。



「だから……何が言いたいのかと言えばだな、お前がもしも本当にこの私を後悔させてくれるというのなら、是非ともさせてもらいたいのだよ。できるものならな。だから興味深いと言った」


「じゃあ、させてやるよ!! ぜってー、ぶっ殺してやる!!」


「そうか、楽しみだな。なあ、ベレス」


「は、はあ……」



 ジュノー様はそう言うと、にっこりと微笑み焚火の方へ手を伸ばした。そして火の点いた薪を手に取ると、それを容赦なくドルチェの太腿に押し付けた。肉の焼ける、嫌なニオイ。悲鳴。



「ぎゃああああああ!!!!!」



 ドルチェは、火の点いた薪を押し付けられて叫んだ。しかしジュノー様は、一切躊躇や動揺する素振りもなく、ドルチェの身体のあらゆる場所に、また火の点いた薪を押し付けて火傷させた。



「うがああああああ!! 殺してやる!! 殺してやるぞおおお!!」


「ほう、それなら殺してみてくれ。頼む、どうか私を殺してください。是非ともお願いします、この通り。なんだ? こんなに丁寧にお願いをしていても、お前は私の願いを聞き届けてくれないのか。いや、そればかりかお前は嘘つきだ。殺すと言って、殺さないのだからな。私は嘘つきにも容赦はしないぞ」


「縄をほどけええええ!! そしたら、お前をぶっ殺してやるううう!!」



 暴れる。しかし縄は解けない。杭の方が先に抜けるか倒れるかするかと思ったけれど、よく見れば杭の根元が凍り付いていた。あれでは、万に一つも逃げられない。


 ジュノー様は、氷属性魔法で杭が倒れないように、根本を更に固定していたのだ。これならもう、脱出は不可能。唯一、縄を焚火の炎で焼き切るという方法があるけれど、よくみるとその縄もキラキラと光り輝いていた。あれも氷属性魔法がかけられている。きっと、あの縄は燃やそうとしても燃えないだろう。それ程までに、ジュノー様の魔力は強力なのだ。



「縄を解けときたか。まったく低能だな。私が親切に縄を解くと思っているのか、この賊は。縄を解いたからどうなるものでもないが、なぜなんの見返りもないのにこの私がこんな賊のいう事に従わなければならない。それどころかこのゴキブリ共は、私の休息を邪魔した。そしてベレスを、傷つけた。それは決して許されない。時間をかけて悔い改めさせてやろう」


「ぎゃああああああ!!!!」



 再び始まった。何度も火の点いた薪を身体に押しあてられて、ついにドルチェは気絶した。涙とヨダレを垂れ流し、失禁までしてしまっていた。


 ジュノー様は、軽い溜息を吐くと今度は髪の長い方の女、ガラーナに目を向けた。



「ひ、ひいいいいい!!」



 ガラーナはもう、完全に怯えきっていた。ジュノー様の拷問を受ける前から、漏らしてしまっている。



「なんだ、貴様。もう漏らしてしまっているのか? 相方は、少しは抗ったが、お前は抗わないのか? どうだ、少し抗ってみないか? 怯えるだけの奴は、もう見飽きた」



 ジュノー様に対して、ガラーナは完全に戦意を喪失してしまっていた。

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