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第1143話 『砂嵐の中で その1』



 ビュウウウウウウウウ!!


 ザザザザザザッザーーーー!!


 これはまた、物凄い砂嵐だった。旗の会った場所、オレ達のキャンプを襲った時の砂嵐と同じ位の威力。これは、一旦身を隠してやり過ごさないと、とてもじゃないが前に進めない。


 ビュウウウウウウウ!!



「痛い痛い痛い!! 砂粒と一緒に、小さな石ころまで飛んできてやがるー!!」


「うおおおお!! もっとそっちによれ、ルシエル!!」


「なんだと、ノエルは小っちゃいんだから、ノエルこそもっとそっちに寄れよ!!」


「うるせー、こっちはこれ以上下がったら、身体がはみでるだろーが!!」


「それがどうした! 身体が小さいから、石とか飛んできても的も小さいから安全だろ?」


「安全じゃねーよ! さっきから、小さくて固いつぶてに何度も当たってるよ!」


「オレよかマシだろー! オレなんか、ここ見てくれよ! お尻と太腿に2カ所ずつ喰らったぞー!」


「こら、スカートをあげるな! 見たくもねー、きたねーパンツが見えるだろ!」


「汚くなんてないですーう! ルシエルちゃんのパンツは、とっても綺麗なんですーう!」


 ギリギリギリ……

 


 ノエルと互いに額をぶつけて、身体を押し合う。岩陰に身体全体をおさめて、この砂嵐から完全回避するならこうするしかないんだ。だいたい、ノエルはノクタームエルドではミューリやファムやギブンと組んで、アース&ウインドファイアって冒険者パーティーを組んでいたんだろ。しかも、そのアースはなんとノエルの事だという。

 

 アースと言えば、その意味は大地だったりする。大地がなんで、こんな砂粒を恐れてんだって話なんだ。だから、この場所はこのオレに譲って向こうへ行くがいい。



 ギリギリギリ……


「くそー、ノエルこの!! もしかして、このオレをここから外へ追い出すつもりか⁉」



 追い出してやろうとしたけれど、ノエルは怪力女子だった。細腕のオレと力比べじゃ、そもそも勝負になんてならなかったのである。徐々に、押し出されていくオレ。しかも、こいつ。口元が笑ってやがる。


 そうか。そういう事か!! こいつ、なんて奴だ。このオレを弄んでやがる。だって怪力ノエルのことだ。その気になれば、簡単にここからオレを押し出す事なんて可能なはずなのに、こうやってゆっくりゆっくりと押し出しているなんて……なんて、心のひねくれたドワーフなんだ! ちくしょー!



 ビュウウウウ、バシバシバシ!


「あいてててて!! ちょ、ちょっと、ノエルさん!! やめて!! オレ、ちょっとはみでちゃってんだけど!!」


「知らないなー。それに、そもそも先に押し出そうと仕掛けてきたのは、お前だルシエル……ははは」


「いたたたた!! やめろって、背中に砂粒が当たってんだからよ!! やめろってばーー!! やめちくりー!」


「ははは」


 !!


「おい、ノエル!! お前、今笑ったな!! 明らかに笑いやがったな! このいたいけなスーパーエルフ、ルシエルちゃんが痛がっているのを見て、なんとまあ楽しげに笑いやがったなあああ!!」


「笑ってねーし。ぷぷぷ」


「キーーーー、憎たらしい! そして許せねえ!! こいつ、めちゃ許せんよなーー!!」



 怒りゲージ満タンなってもーた! こいつ、風属性魔法で吹き飛ばしてやろーか! 怒りが最高潮になった所で、オレとノエルの間にゾーイが割り込んできた。



「お笑いコントはその辺でやめろ、貴様ら。それより、砂嵐の中に何か変な影が見えたぞ」



 砂嵐の中に影? 


 砂嵐はまだ続いている。ゾーイの言葉を聞いて、ノエルと共に岩陰に身を隠しながらもじっと砂嵐に目をやる。



「なんだよゾーイ。なにが見えたんだよ。なんか、おもしれーもんでも、見つけたのか?」


「面白いかどーかは知らん。だけど結構大きくて、俊敏な生き物だった」


「はあ? どうして生き物って解ったんだ? もしかして超能力者とかなのか、ゾーイは?」


「何を言っているんだ、このエルフは?」


「さあ?」



 な、なんじゃとおおお!! いつの間にか、ノエルとゾーイ。こいつら、できてやがる!! オレの知らない所で、できちまってもーてやがる!! くっそー、まさか狩りに出た先で、こんな悲しい気分にさせられるとは、思ってもみんかった!!



「あう」



 ゾーイに頭を掴まれて、無理やり変な方向に向けられる。グキっと音がしたんだけど、ゾーイは気にしてもくれない。



「ルシエル。あれを見ろ、いたぞ」


「だからなんで、お前はそれが生き物って解るんだよ。石とか倒木とかそんなのかもしれんだろ?」


「それはない。俊敏って言ったろ。動いているからな」


「う……動いて!?」



 ゾーイが指した先に、それは現れた。獣のようにも見えるし、馬のようにも見えるそれは砂嵐の中に潜んでいて、高く舞い上がった。でもあれは、空を飛べている訳じゃない。凄い脚力で、跳躍したのだ。



「お、おいあれ」


「だからいると言っただろ。なんだろうな、あれは?」


「砂嵐で良く見えんけど、馬くらいのデカさはあるから、もしかしたら……」



 馬? そう言えばそれ位の大きさの奴を、このヘーデル荒野で見かけたような気もするな。


 そう思った刹那、砂嵐の中から馬くらいの大きさのそれは、こっちへ向かって飛び込んできた。鋭利な爪と大きな牙。



 ギャアアアウウウウウ!!


「ひいい、なんだあああ!! 魔物か⁉


「どけえええ、ルシエル!!」


 ガウウウウン!!



 ノエルは背負っているバトルアックスを両手に握ると、オレとゾーイを押しのけて前に出た。そして砂嵐の中から突如として現れた、実に凶暴そうな魔物がオレに放った一撃を真正面から受け止めた。



「ラプトルだ! あれは、この荒野に生息するラプトルという魔物だ!!」


 グオオオオ!!



 ほっとしたのもつかの間。別の角度から、別のラプトルが襲い掛かってくる。オレは前転でその攻撃をかわす。転がった先に別のラプトルが現れたので、オレは更に地面を素早く転がって避けた。


 ノエルやゾーイに目を向けると、砂嵐の吹きすさぶ中で2人も別のラプトルを相手に戦っていた。


 そうか、そう言えばそうだった。この荒野には、こんな凶暴な魔物がいて人間を襲おうと待ち構えているんだったな。

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