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第1139話 『涼しい場所へ その5』



 王妃様と暫くお話をした。っと言っても、ほとんど私の事を話していた。



「そうなのですね。あなたもアテナも、色々と冒険をしたのですね」


「はい……」



 私はどうしても気になって、思い切って聞いてしまった。



「あの……」


「なんですか?」


「アテナは、王妃様といつも喧嘩をしてしまうと言っていました」


「そうですね。その通りです」


「だから私、王妃様の事をちょっと意地悪な人かもしれないって思っていて……」


「それは……その通りですね。自分で言うのもなにかおかしな気分になりますが、わたくしは、自分自身が意地悪なのはちゃんと自覚しています」


「いえ、そうではなくて……このな事が起きなければ、私なんかと王妃様がご一緒するなんてなかったと思うんですけど、それでもできて……」


「なんですか? はっきりと言いなさい」



 私は王妃様の目を真っすぐに見て言った。本当の事だからこそ、ちゃんと言わなくちゃって思ったから。



「お会いする前から、勝手に……意地悪だって決めつけてしまっていて……ごめんなさい。本当の王妃様は、とても優しくていい人なのに」



 私の言葉を聞いて、王妃様は鼻で笑う。



「はっ! それは、ルキア。あなたは、騙されていますね。っと言っても、あなたはまだ僅か9歳なのでしょ。それならば、仕方のない事なのかもしれませんが。わたくしがクラインベルトへやってきたのは、政略結婚ですし、アテナとその姉のモニカはわたくしの子供ではありません。それでもセシル……クラインベルト国王と結婚をするという事は、そういう事なのですよ」


「でも王妃様は、私にも……クロエにだって、凄くよくしてくれているように見えます」


「それは、単純に……本人を前にしてこんな事を言うのもなんですが、あなたもクロエもわたくしにとって、ただ単につかえそうだと思ったからにすぎません。だから少し気をかけてやった。ただそれだけなのです」



 言い方はキツいかもしれない。でもやっぱり見方を変えると、照れ隠しのようにも聞こえた。本当に私やクロエの事を、そういう風に思っているのなら、きっと今言ったような事を言葉にしたりしない気がする。



「ルキア、クロエの所へ行きましょう。ついてきなさい」


「え? あ、はい、王妃様」



 王妃様は、急にクロエのいる対岸の方へ向かって泳ぎ始めた。私も慌てて後を追う。


 クロエとカルビがいる辺りに辿り着くと、王妃様は私達に言った。



「この泉の底に、何かありますがあなた達は、気づきましたか?」



 え?


 クロエが首を傾げる。



「この泉の底に何かいたのですか? もしかして、石とかそういうのでは?」


「いえ。石ではありません。ルキア、クロエ。あなた方は、泳ぎが得意ですか?」



 首を左右に振るクロエ。どうみてもクロエは泳ぎが得意ではなく、泉に浸かってからもずっと岸とカルビの傍にいる。



「私は一応、泳げます」


「そうですか、それなら泉の底に潜ってみましょう。クロエはここで待っていなさい。ルキアは、わたくしについてきなさい」


「は、はい! クロエ、ちょ、ちょっとここでカルビと待っててね」


「ええ。じゃあ、王妃様と泉の底まで行けたら、底に何があったのか後で教えてね」


「うん、もちろんだよ」



 クロエがこちらに手を伸ばしてきたので、その手を軽く握った。それから王妃様と一緒に、この洞穴内の空気を一気に吸い込んで、水中に潜った。


 ブクブクブク……


 泉。水中、底を目指して沈んでいく。


 王妃様は、こういう事は苦手だと思っていた。だけど泳ぎは得意みたいで、まるでお話に出てくる人魚のように上手に泳いでいる。綺麗な白い肌。長い髪を靡かせて、人魚のように泳ぐ様はとても美しく見えた。


 アテナも言っていたけど、結構深さのある泉。その中間位まで来たところで、王妃様は私の方を一度振り返る。私が大丈夫なのかどうか、表情を見て確認してくれている。私は、オーケーサインを出すと王妃様は頷いて更に底へと潜った。


 底に到着すると、クロエが言ったようにあちこちに大小様々な白っぽい石があちこちに落ちていた。なんだか種類はよく解らないけれど、とても小さな白っぽい魚もいる。こんな所に生物が隠れていた事に気づくと、なぜか嬉しい気分に包まれる。


 王妃様に知らせると、王妃様は私の顔を見て微かに笑った。さっき泉に浸かりながら話していた時に見せた、感情を隠すような笑い顔ではなくて、綺麗で優しさが含まれた笑顔。


 更に王妃様は、私に向かって何かの合図を送る。なんだろう。王妃様は、私に何を伝えたいんだろう。そう思っていると、王妃様は白い大きな石が寄り集まっている箇所を指でさした。近づく。


 するとその寄り集まっている石に、なんと、白い貝がへばりついていた。大きな貝で、私の掌の2倍位の大きさはある。


 ブクブクブクブク……


 また王妃様がサインを出した。


 今度は解った! 王妃様は、この貝を持って帰ろうって言っているんだ。私達の食糧になるかもって言っている。


 私はまたオーケーサインを出すと、その白い大きな石に近づいて貝を手で掴んだ。引っ張る!!


 ブクブクブクブク……


 駄目! 物凄い力でへばりついている。どうしよう。


 困っていると、今度は王妃様が私と場所を入れ替えて、大きな白い貝を両手で掴んだ。

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