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第1131話 『飛ばされていった物資』



 カルビとルシエルは、無事に私達のもとへ戻って来た。そしてテントとか、私達の荷物も見つけてある程度は、回収する事ができた。


 だけど、水と食糧はどうしようもなかった。食糧は、荒野に飛ばされて地面に落下すると同時に、そこらじゅうに徘徊しているラプトルや、そういう魔物達の餌になる。現に飛ばされた食糧を回収する為に、私、ルシエル、ノエル、ルキアで探しに出たんだけど、全てが駄目になっていた。


 残っている物もあったけれど、見つけた時には食糧に何かの歯形がくっきりと残っていたり、既に食い散らかされていたり。空から降って来た私達の食糧を巡って、ラプトル同士が奪い合っていたりしている場にも遭遇した。水に関しては、既に見つけたあの場所へ行けば確保はできるけれど、食糧はザックに入れていた干し肉とかそういう分を除いて、全部なくなってしまった。



「ゾルバが折角、数日分の食糧を用意してくれたというのに。ごらんなさい!! その全てがなくなってしまいました。いったいこれは、誰の責任なんですか⁉」



 私達のキャンプ場所。そこに再び各々で、テントを設営しなおす。その場所の中央――丁度、私達の旗が突き立っている場所で、エスメラルダ王妃が声を荒げて怒っていた。



「誰か答えなさい! それとも、このままうんともすんとも答えないつもりですか⁉ あの物資があれば、少なくともこの対決中に食糧の調達をしくてもいい位の量はありました!!」


「それは違うわ。この暑でしょ。確かに保存のきくものも、ゾルバは用意してくれていたみたいだけど、少なく見積もっても半分以上は、この焼けるような暑さで腐ってしまっていたと思うから」


「あら、そう。なら百歩譲って、そういう事にしておきましょう。ですが今、アテナが言ったように、いくらかは保存のきくものもあった。それは違いないのですよね。パンやスープなどもそうですよ。今晩、いえ、明日の朝昼晩位までは食べられたんじゃなくて?」



 時間帯はもうお昼。皆、お腹が減っているし、何よりこの暑さでイラついている。特にエスメラルダ王妃は、自分の意思でこの対決に参戦してきたというのに、このおかしくなってしまうそうな暑さでかなり気が荒れていた。


 その視線は、チラリと自分のテントの前で正座しているルシエル向けられる。



「ルシエル・アルディノア。アテナのお友達のエルフだそうね、あなた」


「ああ、そうだけど……」


「王族に対して、口の利き方がなっていないですね。流石、わたくし達の食糧など物資を吹き飛ばしてくれるだけの事はありますね。きっと何も考えていないのね」


「ヒンっ! ごめんなさい!」



 確かに何度も止めたのに、魔法を発動したルシエルは悪い。だけどだからと言って、ねちねちと虐めるのはどうかと思う。



「もういいでしょ。済んだことなんだから」


「もういいでしょ? それでいい訳ないでしょ? これから水はどうするのですか? みてください、わたくしのこの汗を! 喉がカラカラになって、このままでは干からびてしまいそうです!」


「ヒンっ! 面目ない!」



 エスメラルダ王妃の激しい責めに、半泣きになるルシエル。



「それなら大丈夫。既に水の調達できる場所を見つけているから、干からびる事はありません」


「そうなのですか。ですが、身体が砂だらけだわ。髪も酷い事になっていますし、わたくしにこの状態で数日過ごせというのですか? 誰かが砂を履き散らしてくれたせいで、最悪の環境から更に奈落に突き落とされた気分です!」


「ヒンっ! 反省しています!」


「それはルシエルがやったっていうか、その前にやってきた砂嵐でそうなったんでしょ。それに私達が見つけた水場は、水浴びだってできる場所ですので、後でお連れします……ってルシエル、あなた知っているでしょ、それ」


「ヒンっ! だって、オレ、悪い事をしちゃったから」



 うーーん、だから、こんな感じなのか。


 私はルシエルに寄り添うと、手をとって正座をしている彼女を立たせた。すると私の顔を見つめる、ルシエル。



「え? な、なに?」


「オ、オラ、許されただか?」


「そ、それは解らないけど、もういいんじゃない。別に」


「わわーーーーん! ありがとう、アテナーー!!」


「こ、こら! 抱き着くな!!」



 な、なにこれ! 物凄い力!! 抱き着いて涙と鼻水を擦り付けようとしてくるルシエルを、両手で突き放そうとしているけど、どうやっても引き剥がれない。っもう!! あっち行ってよーー!! やめて、鼻水が!!


  エスメラルダ王妃がカンカンに怒っていたから、ちょっと場の空気は悪かったけれど、私とルシエルのこのやり取りを見て、ルキア、クロエ、ノエルまで笑ってくれて、少し場が和んだ。だけど彼女はまだ怒っている。あと、ゾーイは呆れているみたい。



「それでは、食べ物はどうするのですか? もうお昼を過ぎてしまいました。わたくしは、空腹です。それに夕食はどうするのですか? このままでは、この対決は負ける事になりますよ」


「大丈夫。それもちゃんと、解決するから」


「本当なのですか? まだ、問題を起こすつもりなのではないですか?」


「大丈夫って言っているでしょ。これでも私達はこういうののプロなんだから。っね、ルシエル」


「え?」

 


 なぜか、ここに来てキョトーンとするルシエル。って何よ、その反応! 



「え? じゃない。ルシエルだったら、例えばお肉の調達とか得意でしょーが! ここでそれを言えば、名誉挽回にもってこいでしょ!!」


「え? あ、ああーー。そうかそうか。なるほど。それなっ!!」



 それなっ!! っの所で、私の顔に向かって指をさすルシエル。すかさずその指を掴むと、捻り上げた。



「ぎょええええ!! こ、こらアテナ!! やめてええええ!!」


「じゃあ、人を指でさしたりしないの!」



 更に絞った。



「はいはいはいーー!! 解りました解りました!! ごめんなさい、解ったから指をもう解放してあげてー!!」



 時間帯は、お昼。陽が昇って一番暑い時が今なんだけど、なんとか夜までには食糧を確保しないとなと思った。そうなると、やっぱりお肉。この辺は枯草や枯木ばかりで植物も少ないし……なら、やっぱり狩りをするしかない。

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