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第1124話 『いよいよ始まるキャンプ対決 その2』



「それでは、これよりこのヘーデル荒野にて行われるキャンプ対決!! そのルールについて説明をする!!」



 ルシエルが、嬉しそうに手を叩いて跳び上がる。



「いよっしゃーー!! 待ってました!! いよいよ、はーじまるぞーー!!」


「はしゃがない、はしゃがない」


「だって、なんだか楽しいじゃんかよ。アテナだって、ワクワクするだろ? なあ、ルキア、ノエル、クロエもよ」


「そうですね。確かにちょっとワクワクするかもしれないです。皆がいるから、こうやって安心してられるっていうのもあるとは思いますけど」


「あたしは、何も感じない。いつも通りだ」


「ちょ、ちょっとドキドキします。でも、ルキアが言ったように、皆さんがいるので思ったよりも落ち着いてはいます」



 ルシエルは、ルキアとクロエに向かって偉そうに腕を組みながらも、うんうんと頷いて見せた。そしてノエルを睨む。



「なんだよ」


「お前のハートは、死んでいる」


「あーー!? なんだと、てめえ、今なんて言いやがった!! とんでもねー事を言ったな!!」


「だって本当の事だもーーん。こんな身も心も踊るようなワックワクなイベントが今まさに始まろうとしているのに、ノエルは何も感じないッピーって言うんだもーーん!」


「あたしは、そんな言い方はしていない! なんだよ、その語尾のッピーってヤツはよー! それに深い意味もねー。あたしは、いつも通りにやるだけだって言ったつもりだったんだよ!」


「そんなふうには、とても聞こえませんでしたーー。べろべろべろべろー」


「この、てめえ! もういいか、とりあえずこのエルフを頭から地面に突き刺してやる。それがあたし達の旗がわりだ!」


「やだ、奥さん! 聞きました! 怖いですよねー」



 面白がってノエルにちょっかいを出すルシエル。



「はいはいはい、そこまで! 話が先に進まないでしょ! ちょっと、黙ってじっとしていなさい。2人とも!」


「はああっ!? なぜあたしまで怒られる!? 悪いのはルシエルだろーが!」


「プススススス……ノエル、あきらめろ。お前もこのオレ様と同類なのさ」


「ち、ちきしょーー!」



 ノエルはルシエルの方へ行くと、拳をブルブルと震わせて握り、腕を振り上げたので私はその腕を掴んで降ろさせた。



「はい、失礼致しました。それじゃトリスタン・ストラム卿。ルール説明の続きをお願いします」


「え? あ、ああ。そうでありましたな。はっはっはっは」



 ルシエルとノエル。それを見て硝子板の向こうにいる、王宮にいる人達はほとんどが呆れているようだった。笑っていたのは、トリスタン・ストラム卿お1人。っと思いきや、他にも笑っている者がいた。


 イーリスにミネロッサ、メリッサの三王女。パスキア王国の最強騎士、ブラッドリー・クリーンファルト。そして外務大臣のロルス・ロイズに、カミュウも笑ってくれている。あとは……イーリスの後ろ隣にいる、私達にとても美味しい宮廷料理を振る舞ってくれたディディエ・ボナペティーノ。


 うーん、加えてプフーー、プフーーって変な笑い声が聞こえてくるんだけど、あの食いしん坊の水色の魔法使いだよね。ちょっと探せば……ほら、いた。柱の陰にいる。


 まあ、兎に角、カミュウ以外の王子達や第二王子セリューの側近でもあるパスキア四将軍。宮廷魔導士のガスプーチンなんかは、本当に呆れ果てているけれど、私達を暖かい眼差しで見つめてくれる人達が、パスキア王国王宮にもいてくれて嬉しいと思った。


 エスメラルダ王妃との取引、ゾルバ・ガゲーロとの約束で最初はいやいやだったし、できれば来たくないって思っていたけれど……結局、縁談相手のカミュウとも出会えて良かったし、なんだかんだこんな事にはなっているけど、皆が私の傍にいて力になってくるし楽しいかもしれない。ううん、凄く楽しい。



「それでは、皆様方! 気を取り直してルール説明をさせて頂きます!」



 トリスタン・ストラムは、この対決におけるルールを発表した。


 


 この対決は私とモラッタさん達との、カミュウ王子の縁談相手として、どちらが相応しいかをかけた勝負である。


 第一回戦は、パスキア王国王宮で行われたお料理対決。そこでは、モラッタさん達が一勝を収める。対決は、最高で三回まであり、先に二勝した方の勝利。


 今から始めるのは、第二回戦。ここヘーデル荒野にて行われる。


 対決内容は、私が提案したキャンプ対決。その細かい勝負内容については、この対決を取り仕切るトリスタン・ストラム卿が全てを決定した。


 まず私達とモラッタさんの勝負は、このヘーデル荒野に突き立っているお互いに自分の旗を見つける事から始まり、そこにキャンプを設営する。


 そして互いの旗の奪い合いとなるのだが、その勝負は対決開始から三日後となり、今日と明日は旗の奪い合いはしてはしない事となっている。


 さっさと旗をかけて勝負をすればいいのに、トリスタン・ストラム卿はなぜこんな回りくどいルールにしたのか。それは、硝子板に映し出されている、今まさに王宮との中継で私達を見ている王族や貴族にこそ、その理由があるのだと解った。


 この対決、名目はカミュウ王子をかけての私とモラッタさんとの対決なのだけど、同時に王様達の娯楽にもなっているのだと。つまり、はっきり言ってしまえば観戦しているのだ。


 その証拠に、立会人になると言ってはいても、フィリップ王やメアリー王妃、その他観戦している者達の目の前には、大量のご馳走が運ばれてきてお酒も注がれていた。


 見世物になってしまっているのは、決して気持ちのいいものではない。だけどそれはモラッタさん達も同じだろうし、これはエスメラルダ王妃の望みでもある。


 これで彼女が納得してくれるなら、それでいい。


 ……フフ、あとルキアと一緒にあんな可愛いスナネコとも触れ合えたしね。まるっきり、悪い事ばかりじゃないよね。

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