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第1114話 『片目だけ』



 ――――翌日、早朝。


 まだ辺りは薄暗い。パンと飲み水を少しもらうと、私は周辺がどうなっているのか調査に行く事にした。

 

 今は肌寒い位だけど、もしも昼間天気が良ければ、きっとこの辺はかなり暑くなる。だったら色々と行動したり、辺りを見て回るなら一番いいのは朝方かな。


 私達のキャンプの周囲には、ノエルが昨晩頑張って運んでくれた岩が積み上げられて壁ができあがっていた。その内側に、エスメラルダ王妃の大きなドーム状のテント、そして私とルシエルのテントがそれぞれ設営してある。そうそう、あともう一つゾルバが持ってきた物資の中には、ゾーイの使用するテントもあった。だから彼女は一人でそこで寝ている。


 あとそう言えば昨晩は、エスメラルダ王妃のテントでクロエとカルビは眠ってたっけ。


 彼女はなぜか、クロエの事を凄く気に入っているから、まあ寝る時はクロエと一緒に同じテントでだろうなって思っていたけど、あのエスメラルダ王妃が、カルビまで自分のテントの中に入れる事を許したのは正直言って驚いた。


 クロエがカルビを抱いて、暖かいとか言っているのを聞いていたから、それで少しでも暖かく快適に休む事ができるのならって思ったんだろうけど……


 ブラッドリーと話している感じもそうだけど、クラインベルト王国では見せないような笑顔とか見せたりして、パスキアに来てからの彼女はどーもおかしい。まあ、今のところは特別、その事を詮索する気もないんだけどね。でも気にならないといれば嘘になるよね。



「よし、それじゃちょっと辺りを見に行ってこようかな。でもいきなり私がいなくなっていたら驚くだろうし、誰かに言っておかないと」



 キャンプを見渡すと、私がお下がりだけどって言ってあげたルシエルのテントに目をやる。そして近づいて行き、入口を開いて中を覗いた。



「ぐううう……」


「すーすー……」



 やすらかーな顔で眠っているルシエルとノエル。そしてルシエルは、まるでミノムシのように毛布にくるまっていて、ノエルは……というと、寝相が悪くて毛布から下半身が飛び出していた。しかもうつぶせで、スカートがめくれあがっている。だからパンツが丸見えなんだけど、そのノエルのパンツのお尻の部分には、可愛いクマさんのプリントが施されていた。


 それでなんとなく、クラインベルトからパスキアに入る丁度、国境あたりの山奥で出会ったパテルさん達を思い出す。ダイナミックベアのウィニー。大人ぶっていたけれど、こんな可愛いクマさんのパンツを履いている位なんだから、もしかしたらノエルが一番ウィニーと戯れて遊びたかったのかもしれない。


 そっとノエルのめくれ上がったスカートをもとに戻して、毛布をかけてあげた。するとノエルは、片目だけ開けた。



「ひっ! びっくりした! お、起きちゃった?」


「……びっくりしたのは、あたしの方だ」



 ノエルはそう言って、口の辺りにあったヨダレの後をゴシゴシとこする。そして寝転がったままで聞いてきた。



「何時だ? まだ早いだろ? もしかして何処か行くのか?」


「うん、ちょっと今のうちに辺りを見ておこうかなーって思って。ラプトルの肉とか、ゾルバが持ってきてくれた物資は、結構沢山あるけど……もって今日か明日いっぱいだと思う。この辺りは、きっと昼間は気温が高くなるだろうから。だから今のうちに、水の調達ができる場所や食糧を入手できるよう、目処なんかをたてておこうかなーってね」


「なるほど、そういう事か。なら、あたしも一緒に行こうか?」


「ううん、大丈夫。ちょっと行って見てくるだけだし、こういうのは一人のほうがサッと行ってサッと帰ってこれるから」


「そうか。一緒に言ってもいいんだぞ」



 そうは言っているけど、まだ片目を閉じたままのノエル。毛布からも出る気配がない。



「ありがとう。でもノエルは、昨晩かなり岩を運んできてくれたでしょ」


「ああ、そうだ。運んだ。ここは拓けているし、壁があった方がいいはずだからな。砂嵐が吹いても、多少はガードになるだろうしな。大した作業でもないし、やっておいた方が……ってこら!」



 寝ているノエルに抱き着いた。



「こら、アテナ。どういうつもりだ? 離れろ!」


「はーーい。ありがとね、ノエル」


「お、おう。じゃあ、このままもう少し眠らせてもらう。何かあれば呼んでくれ。まあ、アテナの事だから何も心配はないんだろうけどな」


「うん、それじゃちょっと行ってくるね」



 テントを出る前にチラリとルシエルを見た。相変わらず、寝息をたてて気持ちよさそうに眠っている。私はそんなのん気なルシエルの寝顔を見て、クスリと笑うといよいよ周辺の調査に出かける事にした。

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