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第1106話 『いや、思ったんだがな』(▼ルシエルpart)



 ――――ヘーデル荒野。


 明日の朝8時、この地でアテナとモラッタ達の対決が行われる。そう、カミュウ王子の縁談相手として相応しいかどうか、その権利をかけて勝負するらしい。


 オレにしてみれば、重要なのはアテナや他の仲間と冒険者としての活動や、この先もこれまでと同じく旅を続けていけるかどうかが重要な事であって、縁談なんてどうだっていい事なんだ。だけど、対決というのは面白そうだ。


 とりあえず、アテナとモラッタ達との勝負、第一回戦の料理対決はこちらの負け。ちっきしょーー!! アテナは、楽しかったってゆーとるが、オレは負けるの嫌い!! 悔しいったら、ありゃしない!


 それで二回戦、キャンプ対決という事になったのだが、まずは明日の朝8時までにこのヘーデル荒野の何処かに立っている、旗を探してそこに居なきゃならないらしい。なんだそりゃ、場所くらい先に言えよなー。


 だから俺達は早速、ヘーデル荒野へやってきて旗を探してはいるんだけど、これがまたなかなか見つからない。気が付けば陽は、どんどん落ちてきているし。


 っていう事で、オレとゾーイはアテナ達と別行動をとって、先行。一足先に旗を探しに行くことになった。つまり解りやすく言えば、斥候だな。


 ゾーイなら鎖鉄球騎士団、実力随一の団員で、戦闘力も高く心配がない。2人で捜索となると、身軽にあっちへこっちへと探して回れる。


 そして旗のありかだけど、ある程度オレ達はアタリをつけていた。旗はおそらく、このヘーデル荒野の北側にあるとな。


 絶対とは言えないけれど、アテナがトリスタンのおっさんなら、きっとその辺りに旗を立てると言っていたし、間違えはないだろうとオレも思う。あのおっさんは、オレらを試してるんだ。なら当然、お目当ての旗は遠くに置くわな。


 アテナ達と別れて、暫く荒野を北へ北へと突き進んでいると、オークの集団に出くわした。こんな荒地でも、いるもんだな。確かデザートオークっていう砂漠や荒野に好んで生息する種類もいたと思うが、こいつらは単なるオークだ。


 とりあえず、見つけたオークの群れから少し距離をとり、ゾーイと共に岩陰から覗き見る。



「ひい、ふう、みい、よお……ふむ。全部で9匹か。見る感じ、好戦的な感じのする奴らだけど、チャチャっと片付けちまうか?」


「それは賛成だな。このままオークを野放しにしても、こいつらはこのヘーデル荒野を縄張りにしている奴らだからな。後々、何処かで出くわして襲ってくるかもしれん。こちらには、エスメラルダ王妃もいるし、そうなれば面倒だ」


「そうか。じゃあ、ちゃちゃーーっと行って倒しちまおうぜ。でもちょっと待ってくれ」


「ルシエル……なんのつもりだ」


「まあ、いいからいいから。ちょっと待っていてくれよ」



 ゾーイは困惑した顔をした。でもオレは、どうしてもこうしたかった。


 オレは岩陰から出ると、おもむろにオーク共が集まっている方へと歩き始める。どんどん距離が狭まってくると、流石にオーク共はオレの存在に気づいた。


 ブモオオ!!


 怒っている。いきなり現れたオレを睨みつけて、武器を構えると威圧してくる。でもオレはにっこりと笑い、オーク共に向かって片手を挙げて言った。



「よう、こんばんはー。荒野は夜になると、ちょっと冷えるよなー」


 ブヒイ?



 オレの言っている言葉がちゃんと伝わっていないのか、首を捻るオーク。口からはヨダレを垂らしている奴もいるぞ。なんだよ、まるで腹を減らしている時のアテナみたいだな、ヒャヒャヒャ、ちょーウケる。



「おい、ちょっといいか?」


 ブヒイイイイオオ!!


「おいおい、そりゃちょっと過剰になりすぎだろが!? オレ達は敵じゃねーぞ。いや、場合によってはそうなるが、オレ達は何も野蛮な奴らじゃねーからな。お前らだって、ひょっとしたらそうなんだろ? だからここは、穏便にだな。お互いに、良好な関係を築けたらいいなっつって……」


 ブヒイイイ!!



 向き合っていたオーク共のうち、1匹が手斧をオレに向かって投げつけてきた。フォンフォンと勢いのある音を立ててとんでくる。手斧。



「うおおおっ!! あぶねえ!!」



 咄嗟に状態反らしで、飛んできた手斧をまるでリンボーダンスのようにかわした。手斧は後方へ飛んで行って、ゾーイが隠れている岩にザクリと突き立った。ゾーイの声。



「貴様、何をしている!! 馬鹿なのか!!」


「馬鹿ってゆーーな!! 傷ついたらどうするんだ!! ルシエルちゃんはこう見えても、結構打たれ弱いんだよ!! ナイーブエルフなんだよ!! もうちょっと、優しく言ってあげてください!!」


「はあ? そんなの知るか!! それよりも、オーク共を挑発して、お前はどうしたいんだ? 説明をしろ!」


「説明っつったって、見て解んないのか?」


「解らない。説明しろ」


「はあーー、これだから野蛮人は……」


「野蛮人は、お前だろ」


「はあーー、これだから前髪ぱっつんは……」


「関係ないだろそれは!! それで、どういうつもりなんだ!!」



 こんな時に、まさかのさかのぼること――



「いや、以前な。このオレに釣りの極意を色々と教えてくれたコボルトがいたんだよ。だからオークと言えど、魔物全部が全部悪い奴らじゃないんじゃねーかって思ってな。なんでもかんでも、相手が魔物だからっていきなり斬りつけるのはどうかなーって思っちゃったりなんかしてな」


「やっぱり、お前は馬鹿だ! 私はお前の事をどうやら、買い被っていたようだな。ルシエル・アルディノア」


「なんだと、そんなんゆーな!」


「コボルトはそういう種類もいるかもしれないが、オークやゴブリンに、そんな友好的な奴がいてたまるか」


 ブヒイイイイ!!



 ゾーイがそう言った直後に、オレと対峙していたオーク共は、オレ目がけて一斉に襲い掛かって来た。



「くっそーー!! やっぱ、オークとは打ち解ける事は不可能なのかーー」



 弓を手に取り矢を添える。そして襲ってくるオークの眉間に放つと同時に、後方から鎖鉄球が飛んできて、オレが射抜いたオークの隣にいた別のオークの顔面を潰した。


 仲間がやられて、更に怒り狂うオーク共。オレは、次々と襲い掛かってくるオークの攻撃を回避しながらも、得意の弓矢で反撃して1匹1匹を確実に倒していった。

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