表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1098/1206

第1098話 『砂嵐』



 物凄い砂嵐。直ぐに収まると思ったけれど、まだ収まらない。


 私はエスメラルダ王妃とクロエの手を引いて、近くにあった大きな岩の陰に身を隠した。ここなら砂嵐から身を守れるし、どうにかしのげる。ゾーイもこちらに駆けてきて、エスメラルダ王妃の安全を確認する。



「アテナさん……」


「これはかなりの砂嵐だね。でも大丈夫だよ、クロエ。私もいるし、エスメラルダ王妃やゾーイもいるから」



 そう言ってエスメラルダ王妃に目をやる。



「そうですよ、クロエ。わたくしが近くにいます。それにゾーイもいます。ゾーイの戦闘能力は鎖鉄球騎士団では、団長のゾルバや副団長のガイ以上とも言われている程です。ですから、必ずわたくしとあなたの安全は守ってくれますから安心をしていなさい」


「は、はい。ありがとうございます。王妃様」



 うーーん、あれ? ゾーイが守ってくれるという人の中に、私の名前が入ってなかった。私も王女なんだけどなー、アハハハハっ……て冗談なんだけどね。確かに私は誰かに守ってもらわなくても、自分でなんとかなるし。ルシエルや、ノエルだってそう。ルキアとカルビだけ、やっぱり心配だから大丈夫か見てあげないと。



「うわああああ!! 助けてくれえええ、アテナーーー!!」

 


 目の前を何かが転がっていった。砂煙で良く見えないけれど、あれはルシエル。まったく、何を遊んでいるのか。


 私は何処かへ転がっていったルシエルの事を無視して、ノエルに向かって叫んだ。ノエルもルキア達と同じく、砂煙の中にいる。



「ノエルーー!! ノエルーーー!!」


「ああ、なんだ? ここだ、ここにいるぞ、アテナ!!」



 声が帰って来た。でも声のした方向から、彼女がいるだろうと解るだけで、ノエルの姿は見えない。



「ノエル!! 大丈夫?」


「ああ、大丈夫だ。だがルシエルは、さっき砂嵐で吹き飛ばされて、何処かへ転がっていったぞ!!」


「それは、知っている。でもルシエルなら、別に問題ないでしょ。それよりも今、そっちへ行くね! ルキアとカルビを探さないと!!」


「それこそ大丈夫だ!! ルキアとカルビなら、あたしと今一緒にいる!! ほら、何か言え!」


「アテナー! わ、私は大丈夫です! 今、ノエルとカルビと一緒に、大きな岩の陰に隠れています!」


 ワウワウーー!!



 良かった、大丈夫みたい。ノエルが一緒なら、心配はないか。



「ううー、それにしても凄いわね。何も見えない。ノエル! もうしばらく、ルキアとカルビをお願いね。砂嵐なんて、少し我慢すれば止むと思うから」


「解った。じゃあ、もう暫くこのままここでじっとして様子を見てみよう」



 ノエル達の無事を確認すると、彼女達と同じく岩陰にもっと身を引いて隠れた。凌いでいる間、クロエを守ろうと彼女に目をやると、エスメラルダ王妃がクロエを抱き寄せていて、その前にゾーイが移動して2人を守っていた。


 はあ、エスメラルダ王妃は本当にクロエの事が気に入っているみたいだし、私の心配はいらなかったみたいね。エスメラルダ王妃は、ゾーイに言った。



「わたくし達は、いったいいつまでこの砂嵐を我慢していればいいのですか?」


「解りません」


「解りませんって、あなた……それでも多少は、想像がつくのではないですか?」


「いえ、つきません。私は、パスキアには詳しくありませんし、環境などに関する知識全般も同じく専門ではありません。申し訳ありませんが、護衛以外に関しては、私の事は役に立たないと思って頂きたい」


「もう少しつかえると思っていましたけど、単なる見込み違いだったようね」


「申し訳ございません。私は単なる戦闘員ですので」



 手慣れているのか、ゾーイはエスメラルダ王妃の言葉に対して微塵も怒りも何も見せない。そして意外だったのは、自分の事を騎士と言わずに、戦闘員と言った事。騎士は、自分自身が騎士である事を(ほまれ)としている者が多い。ゲラルドやローザも、そうだった。でもゾーイには、そういうものは無いように感じる。


 クロエの声。



「アテナさん」


「ん? なーに?」


 エスメラルダ王妃と、ゾーイに守られているクロエ。パっと見、今ここでは彼女が一番お姫様に見えると思って笑ってしまった。



「ルキア達は、平気ですよね」


「うん、さっきのやりとり、聞いてたでしょ? 心配しなくても大丈夫。ノエルがルキアもカルビも守ってくれているし、砂嵐で確認はできないけれど、声が届く距離にはいるみたいだから。何かあっても、直ぐに助けにいける距離だよ」


「そ、そうですか。それじゃ、ルシエルさんは?」


「えっとね、ルシエルはさっき、私の目の前を転がっていったよ」


「え? こ、転がっていったって? さっき、助けてって叫んでいませんでしたか?」


「え? 叫んでいたね」


「それで、ノエルさんか誰かルシエルさんを、助けに行ったとばかり思っていたのですけど……」



 あれ? クロエに言われて、もしかしてまずかったかなって思い始める。でもルシエルの事だし、きっと……



「だ、大丈夫でしょうか? ルシエルさん」


「うーーーん、そうだね。大丈夫だと思ったんだけど、クロエに言われるとちょっと心配になってきたかな」


「大丈夫だあああ!! あいつは、大丈夫だから心配するなああ!! 放っておけえええ!!」



 ルシエルが無事かどうか。ちょっと見てこようかなって思った所で、大丈夫だから放っておけばいいというノエルの叫ぶ声がした。


 そして間もあけずに、何処からか解らないけれど、砂嵐の向こうから「この人でなしドワーフ!!」って叫ぶルシエルの声が聞こえてきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ