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第1083話 『ちょっと聞いてきます その2』



 モラッタさん達との対決、その第二回戦は、ここパスキア王国にあるヘーデル荒野で行われる事になった。


 対決種目は、なんとまあキャンプ対決。明日の8時がその勝負のスタート時間で、始まったと同時にこの勝負の審判を引き受けるトリスタン・ストラムが用意している試練というのを、クリアしなければならないという流れとなった。


 更に3日目からは、モラッタさん達と直接的な対決となり、互いの旗を取り合う勝負になるらしい。っていう事は、これはもうキャンプ対決というよりは、サバイバルキャンプ対決。そっちの方が近いんじゃないかって思った。


 なんにしても、キャンプするのであれば私は負ける訳にはいかないし、こちらが断然有利な種目となる訳で、そうなると確実に勝たなければならない。この二回戦において、そういう勝負とも言えた。


 王宮の出入口門を警備する2人の門番は、私の質問に対して親身になって答えてくれた。



「存じてますよ、モラッタ様達との勝負。第一階戦は、残念でしたけど二回戦は勝ってくださいね。私は、アテナ様のファンなので応援しております!」


「ありがとう、嬉しいな。期待を裏切らないように努力しますね」


「こら、だから自分だけアピールするな! わ、自分も応援してますんで! それで、どうされたのですか?」


「えへへ、そうだよね。えっと、実は第二回戦は、明日の朝8時からヘーデル荒野という場所で開催される予定なんですけど、その場所を確認しておきたくて」


「ああ、そう言えば二回戦はヘーデル荒野で旗を取り合う勝負をするとの事なんですよね。勝負の事は、もう王宮内に広まっていて、皆知っていますよ」


「そ、そうなんだ、あははは……」


「ヘーデル荒野は王都の北門を出て、そのまま北へ向かえばあります。ですが、街道をそのまま直進すると、荒野から反れてしまうと思いますので、途中まで街道を歩いて行き、途中で平原に入らねばなりません」


「平原……そうなんだ。何かここから平原に入ればいいっていう目印とかそういうのは、無いですか?」


「そうですね……うーーーん」



 腕を組んで考えてくれる門番。もう一人の門番も、ちょっと困った顔をしている。


 確かに王宮から北としか聞いてなかったから、そのまま直進すればいいと思っていた。そうなれば、きっと街道をずっと突き進んでいただろう。ふー、危なかった。もしかしたら知らず知らずのうちに、ヘーデル荒野を逸れていたかも。良かった、やっぱり確認しておいて。



「そうだ!! 直接、トリスタン様かブラッドリー様に聞かれてはどうですか? あのお二人ならば、パトロールだと言われて国内をあちらこちらに移動しておられますし、詳しいですよ」


「そうですそうです。ヘーデル荒野は、危険な魔物も多くて。だから自分達、一般兵は何か用事でもなければヘーデル荒野などには寄り付かないんですよ。でもあのお二人と、指揮下の騎士団はパスキア最強と言っても過言ではありません。たまに訓練などと称してヘーデル荒野へも行くことがあると、言われているのを耳にしました」


「なるほど。じゃあ、ストラム卿かクリーンファルト卿に尋ねれば、一番解りやすいって事ですね」


「はい! そうです!」


「あのお二人なら、何処で街道を逸れていけばいいかとか、よくご存じだと思われますよ」


「ご親切に色々と教えてくれて、どうもありがとう。それじゃ、ちょっと早速聞きに行ってみます」


「はい! 頑張ってください! 応援しています!」


「あっ、そうそう。トリスタン様は、今どこにおられるのか解りませんが、ブラッドリー様なら、きっとトレーニングルームにおられると思われますよ」


「そうなんですね。それじゃ、早速トレーニングルームを覗いてみます。ありがとう」



 そう言って頭を下げると、2人の門番も深々と頭をさげて応えてくれた。


 うーーん、トリスタン・ストラムよりも、ブラッドリー・クリーンファルトの方が確実に会えそうね。


 本当は、この第二回戦の審判を務めるトリスタン・ストラムに、ヘーデル荒野の詳しい場所を聞きたかった。だけど何処にいるのか解らないのであれば、いる場所がはっきりしているブラッドリー・クリーンファルトに聞いた方がいいかもね。


 そういう訳で、門番が教えてくれたトレーニングルーム。その場所をまた王宮の通路で出くわしたメイドさんに聞いてみて、そこへと向かった。


 トレーニングルーム。王宮の2階、隅の方に確かにそういう部屋はあった。扉の前に立つと、中からバスバスという激しい音が聞こえてくる。私は扉を軽く3回ノックした。


 すると中から声がした。ブラッドリー・クリーンファルトの声。



「どうぞ」


「アテナです」


「ア、アテナ!? アテナ王女ですか⁉」

 

 ドタドタ!!



 名乗ると、トレーニングルームの中で何か先ほどまでバスバスと音がなっていたけど、それが止んでなにやら騒々しい音がした。


 ブラッドリー・クリーンファルトの慌てた声もする。もっと正確に言うと、扉をノックした時点では、特に慌てた様子もなかったことから、ここへ来たのが私だと知って慌てた……そんな感じがした。



「中に入りますが、いいですか?」


「……はい、どうぞ」



 彼の許可がでたので、私は扉を開けてトレーニングルームへと入った。


 するとそこには、大きなサンドバッグが吊るしてあり、その前には上半身裸で滝のような汗をかいているブラッドリー・クリーンファルトの姿があった。


 さっきのバスバスという音は、彼がサンドバッグを打っていた音。だとすれば、ただ彼はトレーニングをしていただけのこと。ならさっき、この部屋に私がいきなりやってきて動揺したというよりは……単に驚いたというのが正しい? ふーむ、でもそれなら、あの明らかに慌てた雰囲気は、いったいなんだったのだろうか。


 そんな事を思って、室内に入りドアを閉める。

 

 そしてもう一度ゆっくりとトレーニングルームの中を見渡した。


 するとそこには、沢山のダンベルや鉄アレイ。ウェイトトレーニングのマシンに、スパーリングをする為のリングまである。そのリング近くに、休憩用のベンチが設置されていて、そこに女性が1人座っていた。トレーニング用の、動きやすそうで女性らしいお洒落なウェアを着ている。


 部屋にはブラッドリー・クリーンファルト彼しかいないと思っていたので、他に女性が1人いて驚いた。声をかけようと近づいて、私は更に驚いた。


 ベンチに座る女性。彼女がこちらを振り向く。すると、彼女は私のよく知っている人だった。


 ――――なんと、エスメラルダ王妃だった。

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