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第1079話 『二回戦は? その2』



 またもやお調子者のルシエルの登場で、モラッタさん達との対決――第二回戦が決まってしまった。その対決方法は、なんとキャンプ対決。


 いったいキャンプ対決ってなんなの? だいたい、キャンプをしてどうやって勝敗を決めるというのだろうか。そんな対決方法で、勝負を決する事なんてできないんじゃないのって言おうとした時には、フィリップ王を始めとするパスキアの皆さんはすっかり盛り上がってしまっていた。


 まったくもー、どうすんのよ、折角剣で勝負って事でまとまりかけていたのに……だけど、キャンプ勝負ってどうやって勝敗を決するのかは解らないけれど、なんとなく楽しそうにも思えた。


 私は自信満々に対決方法を言い放って、なぜか満足してしまっているルシエルに近づくと、耳打ちした。



「こらー、ルシエル」


「あんだよーう」


「あんだよーう……じゃないわよ。こんな事言っちゃって、もうフィリップ王も乗り気になっちゃっているし、引き返せなくなっちゃったわよ。キャンプ対決って、どうやって勝負すればいいの?」



 近くで聞き耳を立てていたガスプーチンが、両手を合わせると微笑みながら言った。



「ほほ! それは簡単です。また審査員を募ります。そしてアテナ王女とモラッタ嬢達と、どちらがよりキャンプをエンジョイしているか。それを競って、審査員に評価を求めれば……」


「嫌!! ガスプーチンさんには悪いけど、それじゃ一回戦の二の前になっちゃうから!!」


「なんと!? 二の前とはどういう事ですか⁉ 聞き捨てなりませんぞーう!!」


「どんなに頑張っても、また審査員次第で負けにされちゃうって事よ」


「なな、なんと!? なんと、人聞きの悪い!! それでは、アテナ王女は一回戦は不当な判定で負けた!! そうおっしゃりたいのですねえ!!」


「おっしゃりたくはありません。もう、終わった事だから、ぐちぐち言ってもしょうがないし。でも審査員はお断り。二回戦以降は当事者同士で勝敗を決します」



 ウフフフとモラッタさんの笑い声。目を向けると、彼女は手を自分の口元に当てて薄ら笑いを浮かべていた。剣で勝負するかもってなっていた時より、余裕を取り戻している。



「二回戦以降とおっしゃいましたが、三回戦があればよろしいですわね」


「あるわよ」


「あら、物凄い自信ね」


「だって、キャンプ対決でしょ? 剣でもいいけど」


「オーホッホッホッ。駄目ですわ。そうコロコロと変えられてもこちらも困りますし、もうキャンプ対決で決定ですわよ」


「そう。それじゃ、勝敗はどうやって決める? 因みにさっき聞いていたと思うけれど、審査員による勝敗の決定は、絶対嫌よ」



 そう言うと、モラッタさんとデリザさんは考える素振りを見せた。そしてモラッタさんは、フィリップ王に言った。



「陛下」


「うむ、対決方法は、キャンプで決まりじゃな」


「はい。キャンプであれば、アテナ王女はご自身でもキャンパーと名乗っておりますので、そちら側としては何も問題はないと思われます。ですがその勝敗を決する方法を、どうすればいいものかと思いまして。陛下なら、何かいい案をお持ちではないでしょうか」


「勝敗を決する方法をのう……ふむ、そうじゃな」



 思い切り考え込むフィリップ王。ちらりとメアリー王妃に視線を送るが、メアリー王妃は、にこっと微笑み返しただけだった。フィリップ王は、私達を囲っている者達、臣下の方へと目をやった。



「トリスタンよ!! 我がパスキア最強の騎士、トリスタンはおるか!!」


「はっ、ここに!!」


「今までのやり取り、聞いていたであろう?」


「はっ! 実に面白い対決方法だと存じます!」


「うむ。何か良い案はないか?」


「ふむ、そうですな。それでしたら、こういうのはどうでしょう」



 このトリスタン・ストラムの一言で、二戦目の対決内容の全てが決まってしまった。


 まずは、勝負する場所。パスキア王都から北へ向かった先には、ヘーデル荒野が広がっている。ガンロック王国などの荒野に比べれば、とうぜんだけど荒野としてのエリアは小さめらしい。それでも端から端まで歩くとなると、それなりに時はかかる。


 そして今日これから、トリスタン・ストラム卿がそのヘーデル荒野の、とある場所に旗を立ててくるらしい。


 察しのいい人は、これで気づくかもだけど、二戦目は旗取りゲームという事になった。いかにもパスキア最強の騎士と言われる人の考えそうな勝負。でも面白そう。


 勝負開始の合図は、今日と同じく明日の朝8時。その時点から旗取り合戦がスタートする。だけどここで重要なルールが加わる。明日の8時、対決が始まると同時に私とモラッタさん達は、それぞれそのヘーデル荒野の中を探索し、自分達の旗を見つけてその前にいなければならない。それができなければ、即失格。


 それから実際に旗の奪い合いが始まるのが、3日後の朝8時だという。


 直接対決が始まる3日後までは、1日ごとにこの決闘の開催側、つまりトリスタン・ストラム卿からの試練が与えられ、それを乗り切らなくてはならないらしく、それを私とモラッタさん達両者共にクリアすれば、いよいよ3日目にお互いで決着をつける事ができる。


 あと、これも当然だけど、どちらかが3日目までに試練に敗れればそれで終わり。先に敗れた方の負けが宣告されるという訳だ。


 むふーー、これはかなり私好みの対決方法。凄く楽しみになってきた。


 トリスタン・ストラム卿がルールを説明すると、この場は一時解散となった。ダンスホールに集まった大勢が、部屋からぞろぞろと退出する。


 その光景を、ルシエル達と眺めていると、トリスタン・ストラム卿が一通り退室者を見送り、私に近づいてきて「アテナ王女! 引き続き行われる対決を、楽しみにしていますぞ!」っと言って爽やかに笑った。

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