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第1078話 『二回戦は? その1』



「認められん!! そのような事は、断じて認められませんぞおおーー!!」



 ガスプーチンだった。しかしデカテリーナさんは、ガスプーチンと目を合わせると顔を左右に振った。モラッタさんも、デカテリーナさんに押さえつけられているし、デリザさんはそんな光景を目の当たりにして、怖れて距離を取っている。



「かまわない。確かに一回戦目は、私達にとって有利な条件だった。だから二戦目は、何で対決をするかは、アテナ王女に決めて頂きたい」


「し、しかしデカテリーナ嬢。それでは……」


「私はこのパスキアの、ギロント将軍の娘だ。決闘なら、正々堂々と勝負したい」


「ぐぬぬぬ」



 ガスプーチンは、何がなんでも私の負けにしたいみたい。自分が出した対抗馬に反抗されてしまい、今度は王に助けを求める。でも周囲からもガスプーチンに対する、不満の声があがっていた。



「やりたいようにやらせてやればいいのに」


「そうだな。この決闘は、ガスプーチン殿はそもそも関係ないのではないか」


「そうだ、我らは見届け人。当事者で決めればいいことだ」


「そうだ、そうだー! ガスプーチンなんて変な名前の胡散臭いおっさんは、この王国から叩き出しちまえーい!!」



 最後の声は、明らかにルシエルの声。フィリップ王は、臣下の言葉に耳を傾けるとガスプーチンを諭すように言った。



「ガスプーチンよ、そういう事だ。モラッタ嬢達は、お前がカミュウに相応しいと考えて余の前に連れてきてくれた。それは解るが、やはりここはな。皆がいうように進めたいのお」


「ぐぬぬぬ、陛下のお言葉とあらば承知するしかありませんな。致し方ありません。デカテリーナ嬢、もはや後々後悔しても拙僧は知りませぬぞ」



 頷くデカテリーナさん。目は自信に満ち溢れ、口もとは不敵に笑っている。


 そう……そういう事なら、お言葉に甘えて遠慮なく私は勝ちに行くわよ。

 

 二回戦の対決方法は、私が選んでいい。そう決まった所で、「これは面白くなった」とか「いいぞ」などと、ダンスホールのあちこちから聞こえる。やっぱり、私達のこの勝負をパスキアの王族や貴族達は、お祭り気分で観戦しているんだ。


 カミュウは、この国の王子なのに……フィリップ王もメアリー王妃も、カミュウが私と結婚する事になるのか、モラッタさん達の誰かと結婚する事になるのか行方が解らないのに、あまり本気に考えているようにも見えないし……ふう……


 エリック王子が声をあげた。



「静まれ!! それでは、第二回戦についての発表をする。アテナ王女、第二回戦は何で対決するか今この場で答えられよ。とうぜん理解されていると思われるが、アテナ王女は一回戦は負けておられる。次、負ければカミュウとの縁談は白紙に戻させて頂こう」



 エリック王子の言葉を聞いて、エスメラルダ王妃の顔が険しいものになった。だけど、怒りを抑えている。



「そういう訳なので、対決方法は慎重に選ばれた方が良い」


「解ったわ。それじゃ、その気になる対決方法だけど……」



 ダンスホール、ここに集まっている大勢の人達の視線が私に集中する。王や王妃、ガスプーチンやモラッタさんも注目しているし、もちろんカミュウも私の顔をじっと見つめている。


 さて、なんて答えようか……


 私が決めていいという事は、必然的に私が勝てる対決方法を選ぶに決まっている。私が必ず勝てるものとなると……すっと、腰に吊っている二振りの剣『ツインブレイド』に手をあてた。


 剣の腕なら、絶対に負けない。


 ちらりとモラッタさん達を見ると、私が次に何で勝負をしたいのか察したようで怯えた顔を見せた。


 そう、剣での勝負。でもそういう表情を見せたのは、モラッタさんとデリザさんだけ。デカテリーナさんに限っては、望むところとばかりに笑みを浮かべている。この王宮内にいるそこらの衛兵よりも、大きな身体。そしてドレスの上からでも解る、鍛え上げられた筋肉が解る。


 そう、この人は間違いなくパワー型!! ノエルは、見た目は少女にしか見えないけれど、ノエルとかバーン・グラッドとかと同じタイプの人。剣での勝負っていうのは、一番得意かもだし、私の本音はこんな人と剣を交える事ができるというのは楽しみでもある。



「待たれよ、少し待たれよ!!」


「はい、どーぞ。ガスプーチンさん」


「もしや、もしやとは思いますが、次の勝負はまさか剣での勝負になるとかですかな?」


「んー、どうしようかなー」


「アテナ王女は、既に我が国の四将軍の一角、ロゴー・ハーオンに勝ちて尋常ならざる力を示されております。それはあまりにも……」


「私は、一向にかまわない!!」



 ガスプーチンを遮るように、デカテリーナさんが言った。でも確かにそうかも。どう見ても、モラッタさんやデリザさんは、剣が得意なタイプには見えない……


 でも逆にお料理やダンスでの対決となれば、向こうに分がある訳で人ぞれぞれに得意分野というのは違う。


 確かにお料理対決じゃ、私に勝てる見込みはなかったけれど、それでもルキアは料理が上手だし手先も器用、ノエルに至っては焼き物にかけては、それなりに自信があった訳で……この3人のお姫様に対して剣で勝負っていうのは、ちょっと悪いかなって思い始めた。


 するとガスプーチンが喰い下がるように続けた。



「なら、こういうのはどうでしょう? 団体戦。既に、3対3ですが……剣での勝負となればモラッタ嬢とデリザ嬢には、絶望的な結果しかありません。ですから、少し人数を増やして勝負という事でどうでしょうか?」



 代役ではなくて、人数を増やしてね。まあ、剣でなら負ける気もしないし。



「解ったわ。それじゃ、人数を決め……」


「待ったあああああ!!」



 話が折角まとまりかけてきた所で、まさかのまたルシエルが間に入ってきた。


 えええ、この子はいったいどういうつもりなの⁉



「おいおいアテナ!! 剣なんてつまらんだろが!!」


「でも一敗しているんだよ。次は絶対に勝たないと」


「だーーーああっっしゃい!! それでも剣で勝負なんて、面白くもクソもねーだろがー!!」


「王宮で、クソとか汚い言葉を使わない!!」


「はい、すいません!! でも、面白くないだろーがよー。解るだろー? 剣ならはっきり言って、このプリティーエルフのルシエルちゃんと、怒りん坊で食いしん坊のアテナと、クマさんパンツ愛用のノエルだけで余裕で勝利だろー?」


 ポカッ!!


「あいてっ!!」



 ノエルと同時に、ルシエルを叩いた。だって、こんな沢山の人の前で凄く失礼な事を言うんだもん!



「じゃあ、どうするの? ルシエルは何で勝負するのがいいと思っているの?」



 ルシエルは、ニヤリと笑いブイサインを作った。そして叫んだ。



「そんなの決まっているでがしょーーー!! 二回戦に相応しい対決方法、それはキャンプ!! キャンプ勝負だあああああ!! ワーーハッハッハッハ」



 え? キャンプ勝負? 


 それはいいけど、どうやって勝負を決するんだろう? 


 それを突っ込もうとしたんだけど、ルシエルの意見を聞いたフィリップ王が「おおー、面白そうじゃ」と嬉しそうな声をあげた。


 こ、これは……まさか……

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