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第1071話 『お料理対決 その4』



 ――――8時。


 私達はダンスホールで再び集まった。私とモラッタさん達の対決を見に、王宮にいる多くの人達も集まっていた。



「陛下、よろしいでしょうか」


「ふむ、何だ外務大臣ロルスよ」


「はい。このモラッタ嬢達とアテナ様との勝負についてですが、いささかアテナ様の分が悪いように思えます」


「ほう」


「いついかなる時も、ご賢明な判断をくだされます陛下であれば、既にお解りでしょうが……この一戦目、対決方法はモラッタ嬢達が何で勝負をするか決めております。更に申しますれば、場所もここはパスキア王国。勝手が違うアテナ様には、かなり不利ではないのでしょうか?」


「ふむ」



 パスキア王国の外務大臣、ロルス・ロイス。昔、私が幼い時にお母様やお父様、姉のモニカと共にこの国に来た時に、とても良くしてくれた人。パスキア王の忠実なる臣下であると同時に、私の味方もしてくれる。今だってそう。


 ロルスの私を見る目は、とても優しい。なぜだろうと考えたけど、直ぐにどうしてか解った。きっとロルスは、私が幼かった時の頃と今を重ねて見てくれているんだと思う。だって、爺やゲラルドが私を見る目に、近いようにも思えるもん。


 ロルスの言葉を横で盗み聞いたガスプーチンが、慌てて口を挟んだ。



「陛下!! なりませぬ! なりませぬぞーーう!! 断じてなりませぬーーん!!」


「な、何がじゃ? 何がならんのじゃ?」


「今のロイス大臣の言葉を聞いて、アテナ王女に何かハンデをくだされようとしているのであれば、そのような事は断じてなりませぬと申しましょうぞ! この勝負自体は、当初よりアテナ王女は、既に承知して受けておりますぞ!」


「ふむー、確かにそうじゃのう」


「陛下、ガスプーチン殿のおっしゃられる事はもっともであります。ですから、今更アテナ王女にハンデを与えられては……などとは私も申しません。ですが、この対決。これから勝負を決しますれば、どちらかから作った料理の審査を行います」


「なるほど、ロルスの言いたき事が段々とつかめたわい。解った解った、確かに全てをモラッタ側に有利に進めても、ちと面白くないしのお」


「公平に物事を見極めなければ、我が王国の信用……沽券にも関わります」


「解った。この勝負の先攻後攻じゃが、モラッタ達から評価を始めよう。それでいいな、ロルス」


「へ、陛下!!」


「英断でございますぞ、陛下」



 インパクトで勝負するなら、やはり後攻が有利。ガスプーチンが喰い下がろうとするも、ロルスが先に陛下のもとへ跪いて礼を言い、話を終わらせてしまった。ありがとう、ロルス。この国で、私達の味方をしてくれるあなたとイーリス、それにカミュウの優しさにはとても感謝をしている。


 エリック王子が前に出て、ダンスホール全部に聞こえるように、大きな声を張り上げて言った。



「それでは引き続き、アテナ王女が我が弟カミュウの縁談相手として相応しいかどうかを賭けての対決を行う!!」



 エスメラルダ王妃が、エリック王子を睨む。きっとこの私達に対してのこの扱いに、腹を立てている。だけどまだその怒りを爆発はさせない。彼女は、私がこの対決に勝利して縁談相手の権利を奪い返した所で、この権利をあえて思い切り叩き返すつもりでいるのだから。それで彼女の気持ちは解決する。


 そうする事で、クラインベルトを怒らせるとこの先どうなるかというような圧力を、パスキアの王族に与えようとしている。


 陰険な行動のようにも思えるけど、これが彼女が得意とする他国との駆け引きである事は間違えがない。また結果的に私も解放されて、もとのキャンパー暮らし……もとい冒険者家業に戻れるのでいいかなと思った。


 要は、今一番に私のしなきゃならない事は、この勝負に勝てばいいっていうこと。それですべてが上手くいく……はず。


 師匠も昔、状況がよく解らない時は、とりあえず自分が一番正しいと思う事に全力を尽くせって言っていたし。一番良くないのは、迷って何もしない事だって。失敗は、そこから経験として学びとる事もできると。


 煙草ばかり吹かしているヘビースモーカーだけど、煙を吐く以外にいいことも言うんだよね、フフフ。


 エリックは続けた。



「第一の対決は、料理対決だ。私も含めるここにいる審査員が料理に点数をつける。審査員は10人で、最高点は1人10点満点だ。つまりオール満点で丁度100点となる。では、モラッタ嬢達から審査を始めよう」



 モラッタさん達は、既に指定された3品の料理を、しかも審査員10人分を用意していた。調理台の真ん前の大きなテーブルに並んでいるそれを、メイド達がぞろぞろと現れて審査員のもとへと運ぶ。


 審査員席には、椅子が8席。その向かいに特別な席が2席設けられていて、そこにフィリップ王とメアリー王妃が座った。


 全員の目の前に3品の料理、そしてお酒だと思われる飲み物が運び終わると、エリックがモラッタさん達の顔を見た。まるで示し合わせているかのように頷く彼女達。



「それでは、審査員の皆さん、どうぞお召し上がりください」



 審査員達が食事を始めると、モラッタさん達が私の顔を見てニヤリと笑った。なるほど、かなりの自信があるという訳ね。でも、私だって――


 お互い、作った料理は3品。それでモラッタさん達が作った料理は、高級魚を使用したカルパッチョに海藻サラダを添えたもの、そして3品しかないという理由からか、満足できる程のボリュームを意識した鶏肉のコンフィ、最後にあれは……私も大好物なんだけどクリームブリュレ。うそーー、私も食べたい!!


 そんな事を思っていると、隣にいるノエルに指で突かれた。



「おい、アテナ! ヨダレが出てるぞ」


「あら、ごめん! だって、あんなに美味しそうなんだもん!」



 ルキアも目をまんまるにして見ている。



「す、凄く美味しそうです。カルパッチョとかコンフィとか、あとあの……とても甘くて美味しそうな匂いのするクリームブリュレってなんですか? あれ、私とても気になります!」


「あはは、そうだよね。対決が終わったら、説明してあげるからね」


「……はい」



 ちょっとしおっとするルキア。そういう事ね。彼女の頭を優しく撫でる。



「王都に来る前に食べたいって言っていたオムライスもそうだけど、クリームブリュレもまた食べに行こうか」


「え? あ、はい!」



 ルキアの表情が笑みで溢れる。ルシエルやノエル、マリンはどちらかというとご飯派かなーって感じだけど、ルキアはスイーツが好きなんだよね。その事を思い出した。

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