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第1065話 『素敵な待合室』



「おーい、アテナーー!! クロエも来たかー!!」


 ワウワウッ!!



 王宮の出入口まで行くと、ルシエル達がもう到着して待っていた。ルキアが手を振って私とクロエの名を言うと、カルビが吠えながら、くるくると嬉しそうにその場で回った。


 私とクロエが現れると、門番には先に話を通していたので、ルシエル達をすんなりと王宮の中へと通してくれた。手を取り合うルキアとクロエ。ルシエルはそれを見ると、私に抱き着いてきた。



「アテナーー!! 寂しかったズラーー!!」


「ちょ、ちょっと離れなさい!! いきなり、なんなのよ!!」


「暫く会ってなかったから、凄く寂しかったぜーーい! 抱きしめさせてくれよーう、アテナーー! ぎゅーーーっつって!」


「何よそれ! 昨日会ったばかりでしょ! だからちょっと離れなさいって!」



 なぜか抱き着いてきて離れようとしてないルシエルを、無理やり引き剝がした。少し離れた所から、私達の様子を見ていたノエル。全員落ち着いた所で、私に言った。



「それで、あたし達はどうすればいい?」


「ああ、そうね。でもその前に皆、来てくれてありがとう」



 ルシエルとルキアが、にこりと笑う。



「仲間だろ! このスーパーハイエルフ、ルシエルちゃんに任せたまえ!!」


「そうですよ! 私達は仲間ですからね。今日の対決、アテナが勝つつもりなら全力を尽くしますよ!」


「ありがとう、2人とも。それにノエルとカルビもね」


 ワウー!!


「それで、どうする?」


「とりあえず、中に入ってくれる? 勝負は午前8時からだから、それまでまあまあ時間があるし」


「まあ! こちらの方々が、アテナお姉様と一緒に旅をされているという素敵なお仲間の方々ですわね」



 唐突な声に振りむく。そこには、イーリスの姿があった。アテナお姉様という言葉に、ピクリと耳を動かしたルキアが聞き返した。



「ど、どちら様ですか?」


「わたくしは、イーリスと申します。このパスキア王国の第三王女ですわ」


「だ、第三……王女様……」



 第三王女と聞いて、ルキアの頭の中では、ルーニが思い浮かんでいるに違いない。うちの国……つまり、クラインベルト王国の第三王女と言えばルーニ。だけどちょっとうちは、複雑な関係だよね。私とルーニは父親は同じだけど、母親は違うし。


 だけど私は、ルーニの事を本当の妹だと思っているし、愛している。ルーニもそう思ってくれている。だから、まあルキアの思っている感じで、いいのかもしれない。


 フフフ、ルーニとイーリスじゃ、その性格は随分と違うみたいだけどね。好奇心旺盛な所は、一緒だけど。



「とりあえず、王宮内へどうぞ。約束の時間までは、まだ早いですし」



 私達は、イーリスに従わせてもらう事にした。ここでじっとしているのもアレだし、時間はまだ5時過ぎ。街に出ても、ちょっと入れるお店もあるのか解らない。


 ルシエル達を王宮内に招き入れても良いという許可はとっているけれど、私やクロエが使わせてもらっている部屋に全員で入るっていうのはちょっと狭いかもだし。


 イーリスについて歩いていくと、ある扉の前まで来た。その扉の両脇には、既に何人かのメイドさんが立っている。



「さあ、どうぞお入りになってください」



 メイドさんが扉を開けてくれたので、私達は部屋の中へと入った。ルシエルとルキアが声をあげる。



「うおーー!! なんじゃこりゃーー!! めっちゃいい感じの部屋じゃん!!」


「凄いですね。大きなソファーに、お洒落なコーヒーテーブル。まだ早朝なのに、お昼みたいに部屋の中は明るいですし……敷いてある絨毯も凄く気持ちよさそう」


 ワウワウーー!!


「あっ、カルビ!!」


「ダメ! 待って、グーレス!!」



 ルキアとクロエがカルビを止めようとしたけれど、カルビは2人の間をすり抜けて部屋の中へと一番に駆けこんだ。そしてとても上質な感じの絨毯の上で転がったり、走り回ったり。まったくもー。



「ごめんなさい、イーリス。カルビはまだ子供だから」


「ウフフフ、カルビっていうのね。ウルフの子供でしょ?」


「そう。でも私のよく知っているウルフとは、少し違う感じがするから、亜種かもしれないけれど」


「そうなの。わたくしは、政務以外であまり王宮の外に出る事も少ないですし、魔物が出没するような場所へも普段は行かないから、とても興味がありますわ。可愛いし」


「それなら撫でてあげて。カルビは、撫でられたりするの、凄く喜ぶから」


「そうなの⁉ それじゃ、カルビさん! こっちへいらっしゃい! わたくしが撫で撫でしてあげますわ」



 カルビと仲良くしようとしてなのか、四つん這いになるイーリス。そしてカルビに近づいて行こうとした所で、はっと思い出したかのようにこちらを振り向いた。しかも四つん這いのまま、お尻をこちらに向けて!



「そうでしたわ、皆さん。時間までは、このお部屋でごゆるりとお寛ぎくださいね。飲んだり食べたりしたいものがあれば、メイドに申し伝えてください。アテナお姉様がモラッタさん達と対決する場所、ダンスホールはここから近いですし、時間ギリギリまでいてもいいかもですわね」


「ええ!? そうなんだ。イーリス、ありがと……」


「やったーーーー!! うっへーー、こっちのデカいソファーは、オレ様のもんだーー!! ギャハハハ!!」



 許しがでた途端に、目の前の大きなソファーに、一目散に走っていくルシエル。デジャブ……っていうか、カルビと一緒じゃない。恥ずかしい。


 ごめんねって苦笑いのままイーリスを見ると、もう彼女はカルビに夢中になっていた。


 部屋は広く、今ルシエルが大きなソファーの上でボヨンボヨンと身体を弾ませて遊んでいるけど、同じソファーが他にもいくつかあった。そこへルキア、クロエ、ノエルが座った。

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