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第1064話 『早朝から待ち合わせ』



 ――――翌朝。パスキアの王宮。


 私の部屋のドアを、誰かがノックする音で目が覚める。



「う、うーーん。だ、だれ?」


「失礼致します」


 ガチャリッ



 ドアを開けて部屋に入ってきたのは、この王宮のメイドさんだった。自然と彼女の着用しているものに目が向く。パスキア王のメイド服も、クラインベルトと同様に国特有のものだった。しかもうちに負けない位に可愛いデザイン。


 王宮メイドというのは、色々な場所で国王や王妃と共にしたりするので、何処の国も結構メイドさんの身に着けているメイド服には、こだわりを持っている。


 そう言えば、昔私もセシリア達が身に着けているメイド服を着たくなった事があって、彼女に無理を言って着させてもらったっけ。それをモニカに見られて、凄く呆れられた顔をされたのを覚えている。フフフ。



「おはようございます。5時でございます」


「ご、5時かーー。起こしてくれて、ありがとう」



 そう言えば昨日の夜、自分の部屋に入る前にメイドさんに、5時に起こしてくださいとお願いしたんだった。


 早朝は空気も澄んでいるし、早起きすると何か時間を得した感じがして好きなんだよね。けど、起きるのは苦手なんだよ。


 まあキャンプという趣味を持っているから、それでもそれ位の時間に起床する事は多々あるんだけどね。でもだからと言って、得意ではないんだよ。眠いよーー。って、なんだかマリンみたい、フフフ。


 無理やり身体を起こすと、起こしてくれたメイドさんににこりと笑いかけた。



「はあーー、ありがとう。もう、起きます」


「はい、それでは」



 メイドさんが退出すると、私もゴソゴソと服を着替えて準備をし始めた。



「…………やっぱり、ねむーーーい」



 ここが森の中とか湖畔とかなら、いい感じの早朝を迎える事ができるんだけどな。王宮だもんね。


 王宮に相応しいドレスアップではなくて、いつもの格好。つまりは、冒険者スタイルに着替える。愛用のマントも羽織り、二振りの愛刀『ツインブレイド』も腰に吊った。パスキアの王宮は、クラインベルトと同様に帯刀が認められている。


 だからと言って、なぜ剣まで持ち歩くのか。それはやっぱり、いつも肌身離さず持ち歩いているので、落ち着くから。



「さて……と、ルシエル達はもう来ているかな。でもちょっとその前に――」



 部屋を出ると、マリンとクロエが使っている部屋へと向かった。ドアの前まで行くと、ノックする。



 コンコンッ



 ……返事がない。



 コンコンッ



「……は、はい。どなたでしょうか?」



 クロエの声。



「アテナだよ。部屋に入っていいかな?」


「アテナさん! え、ええ、どうぞ」


「それじゃ、入りまーす」



 ギイッ



 部屋に入ると、ベッドの上でクロエが起き上がってこちらを向いていた。その隣のベッドでは、マリンが眠っている。とても気持ち良さそうな寝顔。



「フフ、クロエ。おはようございます!」


「は、はい、おはようございます!」


「今日は、これからカミュウ王子との縁談相手の座をかけて、モラッタさん達と勝負をするんだけど……」


「ええ、そうですね。でも8時からですよね」


「うん、そうなんだけどね。先にルシエル達と合流しておかないとさ。皆に助っ人に来てもらう事になっているから」


「え? じゃあルシエルさんの他に、グーレスやルキア、ノエルさんもここへ?」


「うん、来るよー。もう来ているかも。これから迎えに行くんだけど、どうする? クロエも行く? でも早いし、このまま眠っていてもいいけど」



 クロエは、フフフと笑った。



「もう、起きてしまいましたから」


「そうだよね、ごめーん」


「いえ」


「それじゃ、行こうか。服を着替えるのを手伝うわ」


「え? ええ。でも、大丈夫。自分で着替えられるように、近くに服を置いているので」



 クロエの眠っていたベッドの直ぐ横には椅子があり、そこには綺麗に畳んだ服があった。クロエはそれに手を伸ばすと、着替え始めた。


 クロエがお着換えをしている間に、私は眠っているマリンの横に倒れ込む。目の前にマリンの顔。



「マリン!」


「ぐう、ぐう、ぐう……」


「起きてる? チュウするよ」


「…………ほう、チュウとな……チュウって、アレだよね。チッスだよね。できるものなら、どうぞ」



 マリンはそう言って、口をとがらせてみせた。



「起きてたんだ」


「今、起きた……でもまた寝るよ。眠いからね」


「一緒にこない? ルシエル達も来るよ」


「うーーん……気が向いたら後でいくよ。ボクの事はほうっておいておくれ。でもどうしても助けが必要になったら呼んで。直ぐに飛んでいくから」



 そう言えば、マリンは連日、この王宮の書庫に通っているんだっけ。



「もしかして、今日も書庫に行くの?」



 頷くマリン。目は、相変わらず横棒線。開くつもりもないみたい。



「何をそんなに調べているの?」


「別に……本が好きなだけだよ」


「そう? 私はてっきり、連日通っているから、何か調べものでもしているのかと思った」


「ぎくり」


「あれ? 今、ぎくりって言った」


「い、言った? ボク、そんな事、言った? 言ってないと思うけど。こういう王宮にある書庫などは、極めて貴重な本が収められていたりするからね。知識欲、それに尽きるよ」


「そうなんだ」


「……あと……もしかしたらと思って、ある調べものもしているんだけど……」


「なにを?」


「ぐう……」


「こら、話の途中で寝るな」


「寝てた? ボク、今、寝てた? おかしーなー、まあいいや。実はね、ボクは、このままアテナと共に旅を続けるつもりはないんだ」


「知ってるって言うか、聞いた。でもそういうと、なんだか冷たく感じるな」


「ごめん、上手く言えないだけ。ボクも寂しい」


「それも知っている。セシリアや、テトラの事を気にしてくれているのね」


「そう。テトラとセシリアは、ボクの大切な友人なんだ。もちろん、アテナもそうだけど……でもアテナはとても強いし、しっかりもしている。そしてルシエル達がついている」


「解っているって。その時が来たら、私はあなたを止めはしない。でも行く時は必ず声をかけて。それとまた気が向いたらでいいから、あの子達も連れて戻ってきて。セシリアやテトラとも一緒に、キャンプや旅ができれば楽しいと思うし」


「解った」


「それで、もしかしたらと思って調べていたものってなんなの?」


「ああ……実はね……ぐう」


「ここでまた、寝るんかいっ!!」



 マリンにペシリと突っ込む。そこでクロエが着替えを終えた。


 まあマリンの言っていた事がどうしても気になるなら、また後でいつでも続きを聞けるしね。私はクロエの手を引いて、王宮の出入口の方へと向かった。

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