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第1061話 『もう一度、あのお店へ』



 話が纏まった所で、ルシエル達とまた別れた。


 明日は、モラッタさん達とカミュウ王子との縁談相手の座を賭けて、対決をする事になっている。早朝6時頃、ルシエル達には王宮に来てもらう事になっている。


 私はルシエル達と別れた後、カミュウと共に王宮へと戻る事にした。モラッタさんの家に行って、勝負に関する事を話して、こんな感じになったよーって、皆にも伝えないといけない。


 マリンとクロエ、そしてエスメラルダ王妃とエドモンテにも伝えなきゃだしね。あれでも一応今は、こっち側だし。


 王宮に向かって歩いていると、カミュウが私に言った。



「良かったの?」


「まあ、良くはないけども、あれ以上喰い下がってもモラッタさんも、あれ以上こっちに歩みよってくれるとは思えないしね。デカテリーナさんや、デリザさんもいなかった訳だし、余計な事は言わないんじゃないかな。だけど助っ人は5人までで、勝負開始までならエントリー自由っていう、ルールを取り付けたし良しとしよう。私一人でも負けるつもりはないけれど、5人まで協力者を呼んでいいなら絶対に負けないよ。だってルシエルや、ノエルはAランク冒険者だしね。それがそのままお料理に通用するかは置いといてだけど、あはははは」


「そうじゃなくて、ルシエル達の事」


「ルシエル?」


「うん、ルシエルもそうだけど……ルキアは、さっきアテナと別れる時にとても寂しそうだった」


「ああ、あの子はしっかりもので責任感の強い子だけど、実は甘えん坊で寂しがり屋だから」


「今日は皆と一緒に宿に泊まれば……」


「いいの。だってルシエル達とは、この先もずっと旅を続けていく訳だし、時間は沢山あるから。今は、ちょっと別行動をとっているだけだよ。こういう事は、前にもあったしね」


「……そう、アテナがいいなら、僕は別にいいけど……」



 あれ? しぼんじゃった。


 沢山の行きかう人々の中を歩いていく。丁度、お城の門が見えてきた所で、カミュウは足を止めた。道の真ん中。



「どうしたの、カミュウ? お城はもうそこでしょ、王宮に戻らないと」


「それはそうだけど、もう少し……もう少しだけ、時間はあるよね」



 時間があるかどうかと聞かれると、ある。まだ時間は昼過ぎを回った辺りだし、陽も落ちてはいない。天気だっていい。



「何処か行きたい場所でもあるの?」


「ア、アテナと最初に寄ったキャンプの専門店。あの店にもう一度、アテナと行きたい」


「え? ああ、あの倉庫みたいな、いい感じのお店ね。うん、カミュウが行きたいならいいよ。私が大好きなものばかり取り扱っているお店だから、願ったりだけどね」


「そ、そう! なら、行こう!」


「え? あ、ちょっとカミュウ!」



 カミュウは、私の手を握って走り出した。そして、例のキャンプ専門店に辿り付くと入口にかけられたオープンの看板を確認してから、中へと入った。


 店内には、色々なキャンプをする為の道具や、冒険者に必要なアイテムなどがずらりと並べて売られている。



「わあーー。やっぱり、テンションあがるねーー」


「楽しい?」


「うん、そりゃ楽しいよ! だって、私の好きなものだもん。でも、いいの? カミュウは、それ程興味もないでしょ?」


「ううん、興味あるよ」


「え?」


「アテナと一緒にキャンプをした。それで初めて、キャンプが楽しいと思った。そりゃアテナと一緒だからっていうのもあるけれど、同時にキャンプの面白さにも気づいたんだよ」


「そうなんだ。へえーー、嬉しいな。キャンプってさ、私も最初はぜんぜん興味なくて、ある人の影響で好きになったからさ……同じだね、フフ」


「え? ある人って……誰?」


「私の師匠。剣もそうだし、キャンプもそう。私に色々と、生きる術を教えてくれた人かな。私の姉、カミュウも名前は知っていると思うけど、モニカも師匠から色々と教わっているんだけどね。実はとっても凄い人で、SSランクの伝説級冒険者なんだ」


「で、伝説級冒険者……Sランク冒険者は聞いたことがあるけど、SSランクなんて聞いた事がないよ」


「えへへ、でもあるんだよ。ちゃんと実在します。トリスタン・ストラムかブラッドリー・クリーンファルトなら、きっと……ううん、間違いなく知っている名前だから。2人にヘリオス・フリートって名前を、聞いてみるといいよ」


「ヘリオス……フリート」



 ああ、駄目だ、駄目。師匠の話をすると、変にテンションがあがっちゃった。


 師匠、今頃どうしているんだろう。確か、マリンは師匠とノクタームエルドで会っているんだよね。その時に魔物の活動が最近、活性化してきているって言って調査していたみたいだけれど……


 まあ、いいか。師匠も旅を続けていて、私も旅を続けているという事は、またいつか絶対に何処かで出会うはずだから。フフフ、そう言ってもう既に、知らない間に何処かですれ違ったりして、出会っているかもしれないけれどね。


 そんな事を思いながら、目の前にあるランタンゾーンに目を移した。いくつものランタン、安価なものから高価なもの、お洒落に特化したものから実用性重視のものまで様々に陳列されていた。


 うーーん、やっぱランタンいいよねー。私はどちらかって言うと、実用性重視な性格なんだけど、お洒落も正直いいよね。キャンプで使うと、そのランタンがお洒落だった場合、それを設置した場所がばえるって言うか、凄くいい感じになるのよね。


 例えば、何もない苔むした岩の近く。そんな場所の近くでキャンプを設営し、そこにランタンを置く。すると夜になってくると、その苔むした岩が、ランタンの暖かな灯りに照らされて、よりいっそういい感じの雰囲気をかもしだしてくれる。それに浸りながら飲む、お酒や珈琲もまた格別に美味しかったりするんだよね。


 うーーん、困った。


 そう言えば私達のパーティーメンバーに、クロエも加わったし、新しいテントも購入しなきゃって思っていたんだっけ……こりゃ欲しいものを全て見繕うと、かなりの散財になるかもしれないな。

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