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第1056話 『これから合流するよ その5』



 ノエルは、腕を組んで座っている。そしてルシエルとルキアは、交互に私とカミュウの顔を見ていた。ルキアが先に口を開く。



「アテナ、この女の子は、どなたなんですか? クロエとマリンは、一緒じゃないんですか?」


「えっとねー、マリンは王宮の書庫に籠りたいみたいで、置いてきた。それでクロエは、今日はエスメラルダ王妃と一緒にいるみたい」



 マリンの本や古代遺跡のようなものが好きなのは、もう皆が知っている。だから特に突っ込み要素はなかったみたいだけれど、クロエについては皆驚いた顔をして飛び上がった。



「え? クロエは王妃様と一緒にいるんですか? でもエスメラルダ王妃って、アテナとあまり仲が良くないですよね」



 ルキアもそうだし、ルシエルもそう思っている。クラインベルト王国からガンロック王国、そしてドワーフの王国はまあ助けてはもらったけど、ずっとエスメラルダ王妃子飼いのゾルバ率いる鎖鉄球騎士団と戦ったりしてきたから。

 

 だからエスメラルダ王妃は、私の義母というよりは敵であるイメージの方が、やっぱり強いかもしれない。そのエスメラルダ王妃とクロエが一緒にいる。皆、驚いても不思議ではなかった。



「ルキア、そんなに心配しなくてもいいんだよ。別に大したことじゃないから」


「で、でも……」


「なんか、私も驚いたんだけど……エスメラルダ王妃が、クロエの事を凄く気に入っちゃったみたいで。最初は別にそれ程でもなかったんだけどね。クロエが目が不自由だって解ってから、やたらとクロエを気遣うようになってね。それで今日は、一緒にメアリー王妃と会うみたい」



 また驚く皆。それもそうだよね。エスメラルダ王妃とメアリー王妃が会う中に、クロエも入っていくんだから。



「でも、別に特別深い意味はないよ。ただ単にエスメラルダ王妃が、クロエを気に入ったというだけだから。いつもピリピリしているし、誰にも気を許したりしない人だから、ちょっと私も驚いたけどね」



 そう言えば、パスキア最強と呼ばれる騎士の1人、ブラッドリー・クリーンファルト。彼と会って湖で話をしている時も、エスメラルダ王妃は、とても楽しそうで彼女にはとても珍しく柔和な表情というか、雰囲気の様子だった。


 …………なんか、パスキア王国に来てからの彼女は、これまでの彼女と違う気がする。なんだろうか。


 ルシエルが、不思議そうに言った。



「それでーー、何があったんだよ。用はまだ済んでないんだろ? なのに、どうしてオレ達を探していたんだ?」


「そうなの。実はね――――」



 私は、カミュウとのこれまでの縁談の話をした。そしてなぜ私の事を逆恨みしているのか、それとももともと快く思っていなかったのか、パスキア四将軍のロゴー・ハーオンとの勝負のこと。更に、ガスプーチンという胡散臭い宮廷魔導士の登場に、正式な縁談相手の権利を賭けて、このパスキア王国にいる3人のお姫様と対決する事になったことなどを話した。


 そしてその勝負が明日、朝から行われる事と、それでこちらも助っ人を集めないといけないということを説明した。


 ルシエルは、カカカと笑った。



「なーるほどー。それで、オレ達と合流をって訳か」


「ごめんね、皆。色々と突き合わせちゃって。この埋め合わせは、絶対にするから」


「そんなん気にするなって、なーそうだろ、ルキア、ノエル。オレ達は、面白ければいいのさ」


「私はいつもアテナの味方です。私で何か役に立つことがあれば、なんでも言ってください!」


「あたしも右に同じだ。そもそもあたしらは、仲間だろ? 小さな遠慮はするな。それと、なんだか対決っていうのは気に入った。ルシエルじゃないが、なんだか楽し気な予感がする」



 ノエルはそう言って、ルシエルと顔を見合わせてクククと笑う。っもう、まったく他人事だと思ってー。でも、凄く頼りになる。皆がいてくれれば、負ける気なんてしない。


 ルシエルが何かに気づいて、首を傾げた。



「ありゃ?」


「どうしたの、ルシエル」


「でもアレだろ? アテナはパスキアのカミュウ王子とは、縁談を進めるつもりはないだろ? なのに、そのーー対抗馬と対決をしたいのか? しかも勝ちたいって……どゆこと?」


「うん、ちょっと色々あってね、エスメラルダ王妃とも話してそうなったの」



 その事も話す。



「なるほど。でもそれだとなんか、カミュウ王子は完全に被害者だな。勝手に縁談話を持ち掛けられて、それを自分の親父(おやじ)さん……失礼、王様に受けなさいって言われたもんだから受けた訳で……でも両国の縁談相手達は、争う事ばかりに目を向けているし……アテナに関しては、ハナから結婚する気なんてないんだものなー」



 ルシエルの言葉に、ルキアとノエルも頷いている。



「確かにそうですね。カミュウ王子、可哀そうです。アテナの話を聞く限りでは、優しくて素敵な王子様の印象ですけど、それで余計にそう思っちゃいますよね。でもアテナがカミュウ王子と結婚したら、もう一緒に旅はできなくなるわけで、それは私は嫌です」


「あたしもそうだな。もしここでアテナがカミュウ王子と結婚ってなったら、このパーティーは解散かもしれないしな。あたしは、アテナに誘われたからこのパーティーの仲間になったんだからな」


「え? 私、ノエルを誘ったっけ?」


「あたしと勝負して、勝っただろ。あれだ」


「え? あれ……あれがそうなるんだ……なるほど」


「そうなるんだよ。それはそうと、そろそろ聞かなくてはならないと、あたしは思っていたんだがな。そっちの可愛らしいアテナの連れてきた女の子は誰だ? いい加減、紹介して欲しいんだけどな」



 皆の注目がカミュウに集まる。あ、そう言えばうっかりしていた。



「そうだったね、あはは。ごめんごめん。先に紹介しなきゃだったね。こちらは、カミュウ君です。このパスキア王国の第四王子で、一応言っておくとね、王子だからもちろん女の子ではなくて男の子だからね。つまりそういう訳。よろしくねー」


『え!? ええええええ!!!!』



 ルシエル、ルキア、ノエルの3人は驚きの声をあげた後に絶句した。そうだよね、まさかここに縁談相手でもあって、この国の王子様がいるとは、誰も思ってもいないよね。あははのはー。

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