第1055話 『これから合流するよ その4』
冒険者ギルドに立ち寄り、ルシエル達の行動を調べた。
ルシエル達は、私が王宮に行っている間にも、この王都の冒険者ギルドでいくつか依頼を受けて、こなしていたみたい。そして今、受注してはいないからこの都内の何処かにはいるはず。
だけど王都というのは、かなり広い。建物だって沢山あるし、人の数も尋常じゃない上に常に賑わっている。
特にルシエルは金髪エルフで、わりかし見つけやすい見た目はしてはいるけれど、王都という場所は何処もかしこも他からやってきた人達が沢山いたりする場所なので、やっぱり見つけ出すのは困難だったりする。
うーーん、困った。困ったよね。
ルシエルと別れる時に、最初に待ち合わせの場所とか、連絡を取り合う手段を予め決めていたら良かったんだけど……
後の祭り。決めていなかったものは仕方がないし、今更言っても仕方がない。後ろばかり振り返らずに、今は前を見ないとね。
とりあえずルシエルと合流する為に、一つ一つ見つけ出す為の事をしていく。そうすれば、距離は確実に縮まってはいくはずだから。でも勝負は明日だから、なんとか今日中にはルシエル達と合流を果たしたい。
もしも最終的に見つけらなければ、マリンに泣きつくという手もある。マリン程、凄い魔法使いなら、きっとこの王都内からルシエル達を見つけ出す探索魔法みたいなものも使えるかもしれないし、あのコナリーさんと一緒に泉でキャンプした時に、クロエに使ってみせた古代魔法を使って欲しいと頼む。それなら間違いなく、マリンならルシエル達を見つけ出してくれるんじゃないかなーって、私は確信している。
だけど、最初から頼るのは面白くない……っていうか、向上心というものが薄い気がするし……まずは自分で探し出してみたかった。冒険者ってのは、そういうのが得意な職種だしね。
そう、それに闇雲ならアレだけど、ちゃんとあてがあるのだ。
「それで次に来た場所が、酒場か」
「そうよ。冒険者なら、情報はここで探すのが基本だったりするからね」
「みたいだね。でも冒険者が酒場で情報を得るって、魔物退治についてとか、お宝探しとかそういうのだったりするイメージが強いけど」
「よく知っているわね。確かにそうかもね。でも酒場は色々な人達が集まるし、そこにいる人達のほとんどが情報好きだったりする。絶対って訳ではないんだけれど、私の経験上はそうかなーって感じ。あと、そうね。私のその仲間なんだけど、ルシエルとノエルっていうハイエルフとハーフドワーフの女の子なんだけど、お酒が大好きなの」
「なるほど。冒険者ギルドで依頼を受けていないのなら、ここでお酒を飲んで楽しんでいるかもしれないっていう事か。でもこの王都には、こういう酒場はそれこそ山のようにあるよ」
「だから、まずここからじゃないかしら」
流石に王都中にある酒場を全部回るつもりじゃないけれど、さっき言ったように酒場には情報と情報好きが集まっている。ルシエル達がいない酒場でも、彼女達の情報が手に入る場合もある。
って、色々考えているよりも行動だよね。
「それじゃ、カミュウ。一件目の酒場、入ってみよう」
「うん、解った」
最初の酒場は如何にもって感じの店構え。結構な年期の入ったお店で、目を這わせるとボロくなっている場所も多々あるけれど、活気はある感じ。
ギイイッ
扉を開けて中に入る。すると、店員が声をあげた。
「いらっしゃいませー」
店員の方を向く。その向こうのテーブル席。そこには、ハイエルフとハーフドワーフ、そして獣人の女の子が座っていた。足元には、子ウルフもいる。
私はその光景を見て、店に入るなり派手にズッコケてしまった。カミュウが私にかけよる。
「ど、どうしたの、アテナ? だ、大丈夫?」
「え? あ、うん! ありがとう、カミュウ。それでとても言い出し辛いんだけどね」
「う、うん。何かあった?」
私は、彼女達が座って何やら楽し気に会話している方を指さして言った。
「あはは、いきなり見つかっちった」
「え? ええええ!! あれ!? あそこにいるのが、アテナの仲間?」
「そう。あれが仲間。あの獣人の女の子の足元にいる子ウルフ、カルビって言うんだけど、あの子も私のかけがえのない仲間だからね」
ワウ?
ルシエル達は、何をそんなに楽し気に話をしているのか解らないけど、会話に夢中になっていてこっちに気づいていない。だけどやっぱり人間に比べて、段違いに聴覚や嗅覚が優れているせいか、カルビはいち早く私の存在に気づいた。
ウウウ……
あっ、ヤダ!! 可愛いクリクリお目目でこっちを見てる!! なに、そのちょっと首を傾げるしぐさ!!
ワウーーー!!
カルビと暫く見つめ合っていたけれど、ついに我慢ができなくなったのか、カルビは動いた。私の方へ一直線に駆けてくる。それに気づくルシエル。
「お、おい、カルビ!! どうしたんだ? 店の中だぞ、ちょっと大人しくしないといけな……って、アテナ!!」
カルビが気づいて、次にルシエルが私に気づく。そしてノエルとルキアも同時に私の方を見た。私は駆けてきたカルビを捕まえてワシャワシャすると抱き上げて、ルシエル達のいるテーブル席の方へ行った。
ルキアは嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねる。
「アテナ!! アテナじゃないですか!! もう、随分と会ってないような気がします!!」
「あはは、そうだね。私もルキア達と同じ気分だよ」
今度はノエルが言った。
「それで、もう例の用事は片付いたのか?」
首を横に振る私、そして後ろで立っているカミュウをこちらに呼びよせると、「とりあえず、何か注文しなきゃだし、座ろうか」と言って座った。
もちろん、全員の注目は私と共にしている謎の美少女、カミュウに集まった。フフ、実は男の子なんだけどね。




