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第1052話 『これから合流するよ その1』



 マリンはまだ調べたいものがあるからと、王宮書庫に籠った。



「もしも明朝の対決、ボクの助けが必要なら遠慮なく言ってくれ。でもご存じの通り、ボクは!料理は得意じゃないんだ。味見とか食べる事なら得意だけどね。だからそれでもボクが必要なら、いくらでも手は貸すよ」


「ありがとう。それじゃあ、必要になったらお願いするね。また後でね」



 イーリスは、この後少し政務があるとの事で別れた。


 そんな訳で私はクロエを連れて、エスメラルダ王妃の部屋へ行って彼女に会った。そして先ほど、デリザ・ベートが私の部屋まで来て、言ってきた事を伝えた。



「明朝8時、ダンスホール。対決内容は、お料理ですね。解りました」


「それじゃ……」


「待ちなさい、アテナ」


「なんですか」


「あの者達に、勝てるのですか?」


「勝負は時の運ですから。それは……やってみないと解りません」


「そうですか。お料理の得意な者なら、わたくしの連れてきたメイドの中にも何人かいます」


「ありがとうございます。でも二回戦から、また自由にメンバーチェンジしていいのか解らないから慎重に選びたいです」



 これは、あくまでも一戦目。二戦目も当然ある訳だし、そして決着がつかなかった場合の三戦目。デリザは二回戦以降の勝負について、何をして決着をつけるのか言わなかった。だから、料理だけに比重を置くのは得策じゃないと考える。



「なるほど、解りました。それでは、勝つことに努めなさい」


「あの、もう一度、聞くけど……この縁談は反故にしていいのね」



 頷くエスメラルダ王妃。



「わたくしは、腹を立てています。これだけ馬鹿にされたのは、ヴァレスティナを出てからというもの初めてです。ですから、あの小娘共に、ギャフンと言わせてやりたいのです。もちろん、あの変なふざけた宮廷魔導士ガスプーチンや、フィリップ王もですよ。ですから、この勝負勝って、見返してやりなさい。その後に、縁談を反故にするというのなら、今は痛快です」


「……解った。縁談を反故にしたら、私はまた旅に出るけど……」


「冒険者ですか……下らない。でも、好きにすればいい。その代わり、呼ばれれば必ず王国へ帰ってきなさい。それがあなたのお父様、セシルとの約束なのでしょう」



 私は頷いた。そして部屋を出ようとした所で、もう一度振り向いて聞く。エスメラルダ王妃。



「そうそう、それとね」


「なんです?」


「この王都にね、私の用事が済むまで待ってくれている仲間がいるの。その仲間を、ここへ連れてきてもいいかな?」


「それは下賤の者でしょう」


「私は、姉妹のように思っている子達よ」


 …………


「解りました。勝負に勝つ為であるならば、致し方ないですね。許可しましょう。明朝、王宮へ連れてきなさい」



 今からじゃないんだ……でもここは王宮だし、ましてや他国。仕方がないと言えば仕方がない。マリンやクロエは特別だった。


 今度こそ部屋を出ようとすると、今度はエスメラルダ王妃に呼び止められた。正確には私ではなく、クロエが呼び止められたんだけど。それには驚いた。



「クロエ」



 クロエは驚いて、慌てて振り返って頭を下げる。



「お、王妃様!! なんでしょうか!!」


「クロエ……この後、あなたはどうするのですか?」


「え? ど、どうするのかとは……」



 いきなりの質問にクロエは混乱する。私は笑って言った。



「この後の事よ。エスメラルダ王妃は、あなたに、この後ちょっとお暇? って聞いているの。フフ、ね、そうでしょ?」



 そう言ってエスメラルダ王妃を見てウインクすると、彼女は完全に私を無視した。キッキーー、ムッキーー!! 何よ何よ何よ!! そういう所!! そういう所が良くないのよ!! 私は、こうやって歩みよったりもする事があるのに、なんなのよその態度!! ムガーー! ムガーー!



「これから少し、お茶でもしようと思っています。メアリー王妃にも誘われました。クロエ、わたくしの共をしなさい」



 ええええ!! 本当に扱いが違う!! でもこんなエスメラルダ王妃は、これまで見た事がなかった。驚きを隠せない。お父様やモニカだって、こんな彼女を知ればきっと驚く。


 クラインベルト王国にある、ブレッドの街という喫茶店が盛んな街。そこで生まれ育ったクロエ。優しくて可愛い女の子だけど、王族でも貴族でもない。あのエスメラルダ王妃が、そんなクロエに興味をこれほどまでに示す……っていうか、ここまで気に入っているのにはかなり驚いた。


 なぜだろうとも思ったけれど、実は理由なんてないのかもしれない。エスメラルダ王妃が、ただ単に気に入ったから……それが一番解りやすい答えなんじゃないかって思った。


 クロエはかなり戸惑っている。



「どうするの?」


「どうしましょう!? でもわたし、これからアテナさんと王都へ……」


「ウフフ……王妃様が誘ってくれるなんて、なかなかないよ」


「そ、そうですよね。こんなわたしを、王妃様が誘ってくださるなんて」


「後でメアリー王妃ともお茶するらしいけどね、フフフ」



 小刻みに震えるクロエ。あはは、って笑っちゃ駄目だよね。普通なら誰でもこうなるよ。



「こっちは大丈夫だし、また後で会うでしょ。今日はエスメラルダ王妃と一緒に行動すればいいんじゃない? これも経験だと思って」


「経験……はい! 王妃様、それではご一緒してもよろしいでしょうか?」


「もちろんです。それじゃ、クロエはわたくしと行きましょう」


「一応言っておくけど、クロエの目の事。気をつけてあげてね」


「解っています。何度も言われなくとも、それくらいの気配りは私にもできます」



 なぜいつも、こんなにプリプリと怒っているんだろう。私もエスメラルダ王妃に対して、同じようなものだけど。



「それじゃ、エスメラルダ王妃。クロエをよろしくお願いします。じゃあまた後でね、クロエ」


「はい、アテナさん」



 クロエをエスメラルダ王妃に預ける事になった私は、1人で王宮の外へ出る門まで向かった。そして門番に外へ出たいと話し掛けると、今度はすんなりと通してくれた。きっと、お姫様達との対決の話が、フィリップ王から皆に伝えられているのだろう。


 門を抜け、王都に出る。


 メインの大通りにまで行くと、そこには溢れる位に人が行きかっていた。クランベルト王国もガンロック王国も、ドワーフの王国だってそうだけど、王都ってどこも賑わって活気があるよね。



「さーーて、それじゃ、ルシエル達を探しますかね!」

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