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第1051話 『対抗馬 その4』



 謁見の間での事から、数時間が過ぎていた。


 翌朝、私達はこの国の3人のお姫様と、カミュウ王子の縁談相手の座をかけて対決する事になった。


 今は、自分の部屋に戻ってクロエとマリンと一緒にいる。あと、イーリスも。



「まったく、大変な事になっちゃった。さて、どうしようかな」


「ふむふむ、ボクが書庫に入り浸っている間に、そんな面白い事になっていたんだね」


「それを言うなら、書庫とディディエがいる調理場とでしょ。行き来しているのは、知っているから」



 マリンに突っ込みを入れると、彼女は照れ臭そうに頭を摩った。まったくもう……迷惑おかけしますって感じで、苦笑いを浮かべながらイーリスを見ると、彼女はぜんぜん気にしていないといった様子で笑って返してくれた。


 イーリスは私達3人が座っているベッドに、ボフンと同じように乗っかった。



「それでアテナお姉様。これからいったいどうされるのかしら? モラッタさん達との対決は、ドキドキしますけど、勝算についてお考えを伺いたいですわ」


「勝算ねえ……」



 心配しているというよりは、ワクワクした表情のイーリス。私の見た所、パスキアの王族の中で一番好奇心旺盛なのは、間違いなくこのイーリスだろうなって思う。あと、それにしても今更だけど……私の事をお姉様って……



「イーリス、それはそうとお姉様って?」


「あら、おかしいですか? でもアテナお姉様がカミュウと結ばれれば、アテナお姉様はこのパスキアで住むことになるだろうし、そうしたら私の正式なお姉様になるんですもの。だから、別に可笑しくはないでしょ?」



 フフンとなぜか自慢げに答えイーリスに対して、マリンが突っ込みを入れた。



「確かにそうだけど、気が早ーーい」


「そうかしら。お姉様やお兄様はどう思っておられるか解らないし、セリューお兄様に至っては、アテナお姉様に負けてほしそうだけど、私はアテナお姉様を全力で応援しているのよ。絶対勝つと思っているんだから。だから、何もおかしくはないのよ」



 イーリスはそう言って、更に身を乗り出す。目の前に転がっているマリンを少し押して、そこに割り込むと私に近づいてきた。



「押すなよー、押すなよー」


「なにそれ? もしかして、押して欲しいってふりなのかしら? まあいいわ。それで、アテナお姉様は、あの3人にどうやって勝つのかしら。クロエとマリンも参戦するの?」


「わ、わたしは目が見えないし、きっとなんの役にも立たないから……」


「ボクもボクもー。だって魔法使っちゃ駄目って言われでもしたら、ボクきっとクロエより何もできないよ。大食いなら少しは自信あるけど、食べるの遅いしね。なぜって? そりゃ、味わっているからさ」



 うーん、始まる前からあまり乗り気じゃない2人。それでも私が手伝って欲しいって言えば、手は貸してくれるだろうけど……



「フフフ、やっぱり。なんなら、私やディディエが手を貸すわよ。メイドの中にも、運動神経とか、ちょっとしたスキルを持っている者も何人かいたと思うし」


「ありがとう、イーリス。でもまだ何をやるのか解らないし、それに全くあてがない訳じゃないから」



 そう。こういう勝負事に関しては、凄くノリノリになってくれる仲間が私にはいる。



「そう、じゃあ心配いらないわね。私はアテナお姉様の味方なんだから、なんでも言ってよね」


「ありがとう、イーリス」


 コンコンッ



 話が一旦落ち着いた所で、ドアを誰かがノックした。もしかしてエスメラルダ王妃? それともエドモンテ。


 私達は、ベッドから降りると服を整えて返事をした。ううん、マリンだけは転がったまんま。でもまあいいか、マリンだし。



「どうぞ」


「失礼します」



 あれ? エスメラルダ王妃でもエドモンテでもない声。



 ガチャリッ



 部屋に入ってきてのは、カミュウの縁談相手の座を争って、対決する 3人のお姫様のうちの1人だった。確かベート教育大臣の娘、デリザ。



「デリザさんね」


「ええ、アテナ王女殿下」


「アテナでいいわ。だって、今は私達、ライバルでしょ、フフフ」



 寝転んだ所から、起用にズッコケるポーズをとるマリン。戦う相手が訪ねてきたのに、おめでたい事を言っているとでも思っているのかもしれないけれど、もともと乗り気じゃないし受ける気もなかった縁談。


 でも誰かと勝負とか、対決とかする事になってくると、正直楽しくなってきている自分がいる。こりゃー、誰かさんの事を悪く言ってられないな、あはは。



「では、お言葉に甘えさせて頂きます。アテナ様、明朝8時。この王宮内にありますダンスホールにおいでください。そこでまず、第一戦目を行わせて頂きたく存じます」


「ダンスホール……もしかして、最初の対決は舞踏会でのダンスバトルね」



 クロエが驚きの声をあげる。



「ダ、ダンスバトルって……そんな感じのダンスじゃないんじゃないですか?」



 笑い転げるイーリスと、マリン。あれ? でも間違ってはないよね。



「ダンス勝負……それも考えましたが、ダンスなら殿方の協力必要になります。ですが先にモラッタさんが申し上げました通り、この勝負は女子のみで行う事にしましたので、急遽お料理で勝負したいと思います」


「お、お料理!? って、ダンスホール関係なくない? それだったら、食堂とか調理場とかそういう所で勝負した方が……」


「こちらにも、都合というものがあります。正直申し上げますと、もともとわたくし達も一戦目は、ダンスで勝負するつもりでしたので、既に陛下に申し上げましてダンスホールをお借りしてしまいました。今から場所の変更はできません。ですが、心配はございません。料理に必要なものなど全て、事前にダンスホールに搬入致しますので」


「の、のでって……」


「それとアテナ様側の助っ人に、どなたがつかれるのか解りませんが、ディディエさんには審査員長をお願い致しますので、彼女は助っ人には認められませんので」



 な、なぬーーー!!


 デリザは言うだけ言うと、私達に一礼し、王女であるイーリスにもう一度深々とお辞儀をすると部屋の外へと出て行った。


 い、一回戦目は料理対決かあ……私はちょっと自信があるけど、どうしようかな。



「どーするの、アテナお姉様?」



 イーリスは目を輝かせて、次の展開に期待している。まったく、人の気も知らないで。


 するとクロエがこちらを向いて言った。



「アテナさん!」


「え? はい。な、なーに」


「こうなったら、仲間を招集しましょう。頼りになる仲間を!」



 クロエのいう仲間。言うまでもないかもしれないけれど、今別行動をしているルシエル達の事だった。

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