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第1032話 『助け舟』



 私とエスメラルダ王妃とクロエは、とりあえず王都へ出る為に、王宮の出入口門へと向かった。



「アテナ様!? ちょっとお待ちください!」



 王宮の出入口にいる、門番に止められる。



「いや、そのあの……ちょっと王都にね」


「いや、お待ちください。王都にって……まさか外へ出られるのですか?」



 門番はそう言って、私とクロエの後ろにいるエスメラルダ王妃を見る。私は素早く動いて、門番の視界を遮った。



「あははは、まあそういう訳だから通してくれるかな」



 怪訝な顔で、何か怪しむ門番。



「アテナ様が王都に出られる事は、陛下はご存じなのですか?」


「え? それは……」



 言葉に少し詰まると、エスメラルダ王妃は声を荒げて言った。



「だからなんなのです? わたくし達はクラインベルト王国の者です。いちいち何処に行くのか、あなた方に説明しなくてはなりませんか? ええい、どきなさい!!」


「あなたは、エスメラルダ王妃!?」



 あちゃーー!! まずい!! 突破? いや、突破してどうなる? 別に追われている訳でもないし、ちょっとお外へ出ようと思っただけだし。でもこの分だと、止まられちゃうかもしれない。


 フィリップ王に知られて、外へいったい何をしに何処に行くのか聞かれてもめんどいし、運が悪いと誰か護衛につけるとかいってロゴー・ハーオンとか、ああいうのがついてきちゃう。だったら、嫌だなー。ただでさえ、エスメラルダ王妃とだってめちゃくちゃ気まずいのに……


 そう言って、巻き込んでしまったクロエに目をやる。門番とエスメラルダ王妃とのやり取りを見て、同様して少し震えているクロエを見て、こんな時なのに可愛いなーって少し安らいでしまった。



「何をしているのですか?」



 女の人の声がした。皆そちらに振り向くと、門番は声をあげて驚いた。



「ミ、ミネロッサ様!! それにメリッサ様!!」



 ミネロッサ・パスキアとメリッサ・パスキア。パスキア王国の第一王女と第二王女だった。因みに私やクロエによくしてくれるイーリスは、第三王女だね。



「これは、いったい何事ですか?」


「い、いえ!! 実はクラインベルト王国のエスメラルダ王妃とアテナ王女殿下がこのような格好で、王宮の外へ……」


「それは、駄目なのですか?」


「いえ、ですが一応陛下に確認をとりませんと……」


「なぜです?」


「なぜと申されましても、勝手に……」


「エスメラルダ王妃とアテナ王女は、クラインベルト王国人です。パスキアにいらっしゃっているのなら、この国のルールに従わねばなりません。ですがお二人の外出は、わたくしがお願いした事なのですのよ」


「え? ミネロッサ様が⁉」


「そうです。お二人は、カミュウとの縁談でこの国に遥々いらっしゃってくださいました。もしアテナ王女がカミュウと結ばれる事があれば、アテナ王女は我がパスキアの王女になります。とうぜんそれを踏まえれば、王宮のある王都やそこで暮らす民を、事前に見て頂いた方が良いのは当たり前ですわ。ですから、それも兼ねてお願いしたのです」



 ミネロッサはそう言って、メリッサを見た。



「確かあなた、持っていたわよね」


「ええ、お姉様。丁度一枚」



 メリッサはそう言って、手に持っていたゴージャスなハンドバックから紙を一枚取り出して私に手渡してきた。



「えっと……これ、なんでしたっけ?」


「ちょっとアテナ様。お話しましたのに、もうお忘れになるなんて。楽しい方ですね」


「あははは、楽しい方です」



 あり?


 困ってエスメラルダ王妃を見ると、彼女は見事なまでの無表情。助けを求める目でミネロッサを見た。



「それは例の……お話していましたお店のパンフレットですわ。今日、そこへ伺うのだと、おっしゃっていましたわよね。つまりそういう事なのです。このことは、わたくしと妹のメリッサが、エスメラルダ王妃とアテナ王女に是非、寄ってくださいとお願いした事なのです」


「そ、そうでしたか。そうとは知らず、大変失礼を致しました。それでは、問題ありません」



 門番はまるで狐につままれたような表情で、道をあけてくれた。私はミネロッサとメリッサ、2人の王女に頭を下げるとエスメラルダ王妃とクロエと共に、王宮の外へ出た。


 なんだかなー、2人の王女様に借りができちゃったなー。でもそれを言ったら、イーリスなんかもっとお世話になっちゃったしなー。


 街に出る。沢山の人々。そう言えば、まだお昼前だしこんないいお天気だもんね。



 ドンッ


「てめえ、何処見てんだ! こんな所で立ち止まってんじゃねー! ったくよー」


「今、なんと!? このわたくしに対して、何処を見ていると⁉ 下賤の身でありながら、このわたくしに対して!!」


「ああーー? なんだと? 今、なんか言ったか? おい、ババア!!」


「バ、ババア!? このわたくしに対して、ババアなんて!! 許せません、誰かこの不届き者の首を刎ね……」



 私はエスメラルダ王妃の腕を掴んで強引に引っ張った。もう片方の手では、クロエの手を握っている。



「ちょ、ちょっとアテナ!! 待ちなさい!! あの、無礼者を処断しなくては気が済みません!! 離しなさい!!」


「はいはいはい、もういいから。だいたい、さっきの人は、あなたの事を王妃だなんて知らないんだから、しょうがないでしょ。嫌なら、王宮にいる。もしくは鎖鉄球騎士団かパスキア四将軍に護衛をお願いして、街に出るしかないわね」



 そこまで言うと、流石のエスメラルダ王妃も理解をしたようで大人しくなった。だけど、さっきの男に対する怒りは収まってはいないみたいで、ずっと男のいた方を振り返っては、睨みつけていた。


 なんだかなー。

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