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第1031話 『王宮から出て』



 エスメラルダ王妃の部屋を出ると、私は一度自分の部屋へと戻る。エスメラルダ王妃は、王宮から外へ出るというような事を言っていたので、それを踏まえて準備をした。



「うーーん、どうしようかな」


 コンコンッ



 部屋のドアを、誰かがノックする音。



「はーーい」



 エスメラルダ王妃も準備ができたので、私の部屋へ来たのだと思った。ギギっという音と共に中に入ってきたのは、クロエだった。



「あれ? クロエ!」


「アテナさん」



 イーリスは、いないみたい。



「あれ? イーリスかマリン、どちらかと一緒にいると思っていたんだけど」


「マリンさんは、また王宮の書庫に行くと言っていました。イーリス様とは、先ほどまで一緒にいたのですが……」


「いたのですか?」


「そろそろアテナさんが戻ってくるかなと思って……イーリス様にそう言ったら、部屋まで連れてきてくれたので、戻ってくる事ができました」


「そうだったんだ。でもどうしよう」


「どうしようというのは?」


「実はこれから、また出なくちゃいけなくて……」


「そうですか。じゃあ、わたし、自分の部屋で待っていますね」


「ちょーっと待って、クロエ!」



 部屋から出ようとしたクロエの腕を、慌てて掴んだ。



「やーっぱりちょっと待って。ちょっと待っていてくれる?」


「え? あ、はい」



 クロエを引き止めた所で、通路の向こうから一人の女性がこちらに向かって歩いてきた。ウィンプルを被っているので、もしかしたら修道女かなと思った。因みにウィンプルっていうのは、シスターだけじゃないけど、女の人が頭から被ったりする、頭巾のようなもの。


 けれど、服装は修道女にはとても見えない。お洒落で気品のあるものだった。いったい誰だろう。


 その女性は私の前まで来ると足を止めて、クロエに目をやった。



「なんですか、この子は?」


「え⁉ エスメラルダ王妃!?」


「また抜けた声を出して。あなたは、何を言っているのですか?」


「それはこっちのセリフです! なぜそんな恰好をしているのですか?」


「そんなの決まっています。縁談の件、これからどうするか。わたくしは、その話をパスキアの者に聞かれたくはないのです。ですから、その心配がない場所へわたくしを案内しなさい」


「あ、案内しなさいって……でも王宮の外に出るなら、ゾ、ゾルバとか鎖鉄球騎士団を連れては行くんでしょ?」


「必要ありせん」


「ひ、必要ありませんって……」


「ゾルバは目立ちます。それに鎖鉄球騎士団を連れて行けば尚更です。王宮の外に出るとしても、わたくしにはあなたがいるので心配はありません。あなたは、とても腕が立つのでしょう?」


「まあ、そりゃ……ええええ!!」



 まあ、これでも一応Aランク冒険者だし、Aランク冒険者って言えば超上級の冒険者って事だし……更に私の師匠は、あの伝説のSS級冒険者ヘリオス・フリートだし……全く腕に自信がないって言ったら、嘘にはなるけれど……


 動揺している私の顔を見て、エスメラルダ王妃はイライラとし始める。



「わたくしはもう行けますよ。さあ、行きましょう。さっさとしなさい」


「さっさとしなさいって……もう、本当に勝手なんだから……エドモンテやお父様が知ったら、絶対腰を抜かすよ」


「あなたが黙っていれば、知る者はいません」


「そりゃそうだけど」



 腰に二振りの剣を差すと、ザックを背負った。また戻ってくるから、荷物の大半は置いていく。だけどザックを持っていくと、何かと便利で安心だったりする。何か欲しいものが手に入っちゃったとしても、スって入れておけるしね。


 部屋の外に出ると、クロエの手を握った。



「じゃあ、行きましょうか」


「ちょっと待ちなさい、アテナ」


「え?」


「その娘は、なんなのですか?」


「なんなのですかってクロエですけど。彼女は、クロエ・モレット」



 クロエを睨みつけるエスメラルダ王妃。でも何か考えているみたい。さっき、マリンとの事があったから、クロエも実は凄い魔導士とかそういう可能性があるかもしれないって考えているのかもしれない。



「先に言っておきますけど、クロエは普通の可愛い女の子ですから」


「普通の女の子。まさかとは思いますが、もしかして平民ですか?」


「へ、平民? まあ平民って言えば平民ですけど」



 平民と聞くと、エスメラルダ王妃はクロエを更に睨みつけた。まるで親の仇のように、鬼の形相で。でもクロエは目が見えない。その場の雰囲気で、快く思われていない事に気づいてはいるものの、いいのか悪いのかエスメラルダが睨んでいる顔は、見えていない。



「もういいでしょ。それじゃ、行きましょう」


「ちょっと待ちなさい、アテナ。もしかしてこの平民の娘も連れて行くというのですか?」


「そうですよ。クロエは私の仲間。それにパスキア人でもないし、私達クランベルト王国の民よ。一緒にいても全く問題はないでしょ」


「それでも、わたくし達の会話を聞いているでしょう!」


「聞いているけど、それがなに? クロエに聞かれたとしても、彼女は誰でもかれでも勝手に話の内容を話してまわる子じゃないし、信頼できる子だから。だからクロエ1人ならいいでしょ? こんな条件も呑めないっていうのなら、私はもう自分の部屋に引き返すから」



 クロエは、心配そうな顔をして私に何か言おうとした。だけど、心配ないよとクロエの手を優しく握る。



「そこまで言うのなら解りました、勝手になさい。その代わり、あなたはわたくしの言う通りに歩いてもらいますよ」



 いう通りに歩くって……まさか、腹が立つからって、私に逆立ちさせて歩かせたりそんな事を……ってそうじゃないよね。あはは。


 要は、王宮の外に出て、行きたいところがあるという事かな。もしくは、できたという所かもしれない。


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