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第1026話 『反対派』



 ――――謁見の間。


 扉を開いて中に入ると、そこにはフィリップ王や、その他、大勢の主だった者が集まっていた。


 メアリー王妃や、王子達、沢山のパスキアの家臣たち。でもその中には、何処となく雰囲気の違う人達も混ざっていて、ここに入ってきた私に突き刺すような目線を向けた。


 最初に出会った時からの一件から、カミュウとのキャンプの時の事もそうだったけれど、ずっと私の事を快く思っていないロゴー・ハーオン。彼や彼のような者が私に向ける視線とも、何か違っているように感じた。



「おおーー!! アテナ王女、来たか来たか。堅苦しいのは、抜きじゃ。跪かなくて良いぞ」


「陛下」



 私とエスメラルダ王妃、エドモンテはフィリップ王、そしてその妻であるメアリー王妃に対して頭を下げた。エスメラルダ王妃は、周囲をキョロキョロと見回すと、顔をしかめる。それからフィリップ王にまるで詰め寄るように進み出ると、その表情には明らかに不快感を表して言った。



「フィリップ王!! これは、どういう事ですか⁉」


「お下がりくださーい、エスメラルダ王妃。陛下は、まだ何も申されていませんぞ!」


「はあ? 無礼な!! あなたはいきなり現れて偉そうに、何者ですか!! どのような身分で、このわたくしに、そのような口の聞き方をしているのですか⁉」



 灰色のローブの男を、エスメラルダ王妃は見下すように睨みつける。フィリップ王が、慌てて間に入った。



「まあまあ、落ち着いてくだされエスメラルダ王妃。確かに今のは、余もこの者には不快な感じがした。詫びるのだ、ガスプーチンよ」



 ガスプーチン……そう呼ばれた灰色のローブの男は、ニヤリと不敵に笑うとエスメラルダ王妃に跪くと許しを請う。



「ハッハッハッ。確かに咄嗟の事とはいえ、口のきき方がよろしくありませんでしたな。失敬失敬! この通り救いようの無い程の無骨者でして、どうか王妃様の寛大なるお心でお許しくださいませ」



 エスメラルダ王妃はそれで気が済んだのか、ガスプーチンからフィリップ王へ視線を切り替えた。


 エスメラルダ王妃のいきなりの剣幕に、今度はメアリー王妃が間に入ろうとしたが、フィリップ王は問題ないと制した。


 いったいエスメラルダ王妃は、これほどまでに何を怒っているのか。それは私も、この部屋に入った時からなんとなく感じていた。玉座の間ではなく、ここが謁見の間であるという事も気になる。



「それで、どういうつもりなのですか、フィリップ王!!」


「流石は、あのエゾンド・ヴァレスティナの愛娘じゃな。既に察しておられるか。では、このまま黙っていても仕方がないしのう。紹介しよう」


「紹介?」



 フィリップ王は、ここに集まっている者達の前に進み出ると、声を張り上げて言った。



「こちらにおられるのは、クラインベルト王国のエスメラルダ王妃じゃ。そして共にいるのは、その息子エドモンテと娘アテナ」



 私の名前の時に、何人かが声をあげる。驚き……そんな感じの声。



「皆も知っての通り、アテナ王女は今回このパスキア王国に来たのは余の息子、カミュウとの縁談で来てくれたのじゃ」



 ううー、気まずい。この縁談……早く断ってしまわないと、いざ断る時に引き返せない事になってしまうかもしれない。そしたら私は意地でも断って、それがダメならルシエル達と合流して、この国から逃亡する事になるだろうから、とても気まずい事になってしまうかもしれない。


 何処かで、エスメラルダ王妃と折り合いをつけないと。


 フィリップ王は、自分の子供達が並んでいる方へ振り返ると、カミュウに対して手招きをした。カミュウは、フィリップ王の隣にくる。



「こちらへ来るのじゃ、カミュウ」


「はい」


「カミュウはまだ10歳じゃ。縁談相手のアテナ王女は、16歳。その年の差は4歳じゃ。初めはカミュウの歳の事を考えると、ちいと早いと思いておったが……4歳差であれば、なんの障害にもならんじゃろう。何よりカミュウはアテナ王女の事を、かなり気に入っているでな。余もこの縁談は、とてもいい話じゃと思った」



 え⁉ う、うそ!! もしかして、話が進んじゃってる!? 会ったばかりの縁談相手を、キャンプに連れて行ったりしたんだよ、私は。


 しかも相手は、この国の王子様。あの時は、もう気持ちがキャンプをしたくてどうしようもなかったっていうのもあったけど、これでカミュウにはドン引かれるだろうから、願ったりだって思っていた。


 カミュウは、まるで女の子みたいに可愛くて……っていうか、彼の事を男の子って知らなかったら、10人中10人がカミュウの事を女の子だって思うだろうし、私なんかよりも可愛いって言われてもっといい人と出会えるはずだから……なんて思っていたんだけど……


 ううん、待って。これは、フィリップ王のパフォーマンス。そう思って、カミュウにそうだよねって確認の為に目をやると、彼とはっきり目が合った。そしてカミュウは、私と目が合うと、なぜか頬を赤らめた。え? まさか?


 フィリップ王は、私を一度見た後に、エスメラルダ王妃に視線を移した。



「じゃがな。困った事に、このカミュウとアテナ王女の縁談を、断固反対する者がいてのう。なんと今日はその者達が一斉に、王都へ押し寄せてきおって、困った事になったんじゃ……」



 え? それなら別に反対してくれた方が私にとっては、願ったり叶ったりなんだけど。カミュウとも今回は、縁がなかったという事で、丸く収める事ができる。


 だけどエスメラルダ王妃は、わざわざクラインベルトからパスキアまでやってきた理由がある。他国との縁談。以前から時間をかけて、私を利用してパスキア王国との良い関係を望んいた。だからこの位じゃ、決して諦めない。



「フィリップ王。それで、どういう事ですか? 何処の誰だかは知りませんが、その者達に反対されたから、この縁談を反故にされるというのですか? ならばわたくしは、ここへ何をしに来たのです? 今更このような事、とても認められませんよ!」


「い、いやあ、エスメラルダ王妃……そう怒らんでくれ。そのー、なんと言うか……余の話を最後まで聞いて欲しいのじゃが、まずはその今回のカミュウとアテナの縁談を反対する者達を紹介させてもらおう。一同、前へ出るのじゃ」



 フィリップ王の言葉を聞くと、エスメラルダ王妃の目前に4名の者が進み出た。


 1人は先程、ガスプーチンと名乗った灰色のローブを着た魔導士風の男。そして残る3人は、驚くべきことに女の子だった。


 しかも1人はとても身体の大きな女の子で、腕もパンパン、凄い筋肉質だった。アマゾネスにも見える、だけどとても可愛らしいピンクのドレスに身を包んでいた。

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