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第1017話 『ルシエルの尋問』



 村の皆、フィッシュメン達は物凄く怒っていた。怪我を負ったものもいたけれど、幸い命に別状のある者はいなかったので、私達は必死になって村を襲った男達に報復しないようにと説得をした。


 族長、それにフーナさん、ザカ、ウオッシュさんが協力してくれたので、どうにか皆の怒りは収まった。


 村に侵入してきたのは、4人の冒険者。【ソードマン】、【モンク】、【プリースト】、【ウィザード】。今は全員を縄で縛って、村の広場の木の下に座らせている。誰かが牢に入れろと言った。族長は、判断に困って同じ人間の事だからと言って、私達にどうすればいいか聞いてくれた。


 男達をどうするかについては、ノエルはあまり興味はないようだった。だからルシエルが代わりに答えた。私もそれでいいと思った。だってルシエルは、いつも私をこちょばかしたり、時には意地悪したり、からかったりしてくる事もあるけれど、それでもここぞという時は凄く頼りになるし……正しい判断ができる。



「えっと、こいつらは後ほど解放する。それでいいか?」


「ナ、ナンダト?」


「ワレラノ、ムラヲ、オソッタノニカ!?」



 ざわざわと声が聞こえる。ルシエルは、溜息を吐くと皆の前に立った。



「じゃあ、こいつらどうする? 殺すか? こいつら皆殺しにするか?」



 捕らえられた4人は、意識を取り戻していた。だけど縄で身体を拘束されて動けない。ルシエルの発言に、恐怖していた。自分達は、これからフィッシュメン達によってたかって殺されると。


 私には、どうすればいいか解らない。だけど、彼らはもう戦意を喪失している。もし皆が、この男の人達に報復をしようとすれば少なくとも私とカルビで、皆を止めようと考えていた。



「殺すなら、お前達がやれよ。こいつらには、一応オレ達がお灸をすえてやったし、もうこの村はおろか、森にも立ち入らないと約束させる。怪我人は出たが、死人はいない。これでよくないか?」



 再びざわざわと声が聞こえた。今度は族長が言った。



「ザカ。オマエハ、ドウオモウ?」


「オレ? オレカ。オレハ、ルシエルニ、シタガウ」


「ナゼダ」


「ルシエル、ルキア、ノエル、カルビ。ミンナトハ、キノウシリアッタバカリダガ、モウオデタチハ、トモダチダ。マモノモ、ニンゲンモ、ユウジョウニカンケイハナイ」


「ザカ……」



 ザカの言葉に私は、目を潤ませてしまった。見ると、ルシエルも同様でノエルは照れ臭いのか向こうを向いている。



「ダカラ、ルシエルタチニ、コイツラノショグウヲマカセル。ソレデイイ」


「ソウカ。ナラ、ソウシヨウ。モンクガアルモノハ、イマノウチニ、ナノリデテクレ」



 ザカ、そして族長の言葉を耳にして再び広場はざわざわとした。でも族長に、反対意見を名乗りでるものはいなかった。ルシエルは、捕らえている男達に視線を落とす。



「だってさ。良かったじゃん」


「ひ、ひいい!! 助かった」


「助かってねーし」


「ひ?」


「まだ助かってねーだろ。お前らの処遇は、オレ達が決める事になったからな」


「でもさっき、解放してくれるって……」


「そうだ。確かに言った」



 ルシエルは、また面倒くさそうに溜息をつく。



「あのなー。じゃあ解放してやるが、別にただとは言ってねーよな。例えば、今からお前らを足腰立たない位にこちょばかして、地獄を見せてから解放するっていう手もあるんだぜー。ヒェッヒェッヒェ」



 悪魔に見えた。だって、ルシエルはよくアテナが見ていない隙を狙って、私やカルビをくすぐる。この前だって、30分位ずっとくすぐって、酷い目にあった。泣いてもなかなかやめてくれないし、私やカルビをこちょばかしている時の顔、まるで悪魔のように笑っているのだ。


 【プリースト】の男が言った。



「頼む。許してください。もう二度とここへはきませんし、フィッシュメンにも手を出さないと約束します」


「本当だな。誓えるか?」


「神に誓います」


「オレに誓え」



 4人共、何度も頷く。



「そうか。じゃあ許してやろう。でも、その前にいくつか知りたい事があるんだけどな」


「は、はい! なんでしょうか?」


「お前ら、何者だ? どうしてこの村を襲った? カトルを連れて行こうとしていたとルキアから聞いたけど、明らかにフィッシュメン達を襲っていたよな」


「それは……」



 ルシエルは4人の男達に近づくと、両手の指をクネクネと忙しく動かして見せつけた。



「ひ、ひいいい!!」


「一つおっておくが、オレはハイエルフだ。ハイエルフっつったらアレだぞ、アレだ。嘘とかそういうのに、すんげー敏感だかんな。嘘つかれると、アレルギーのように反応するんだ。だから嘘ついても直ぐ解る。そして嘘ついたら、そうさなーー……2時間……いや、少なくとも5時間くらい、くすぐり続けてやる」


「ご、5時間!! じょ、冗談じゃない!!」


「そうだ、冗談じゃないんだこれは!! オレの指が先にオシャカになるか、お前らの脇腹や足の裏がオシャカになるのが早いか、それとも両方か。こいつは見ものだぜ。ヒャッヒャッヒャ」


「解った解った解ったー!!」


「話す!! 全部話すから許してくれえええ!!」


「そうだ、全部だああああ!! 全部話すから!!」



 フィッシュメンの村に、4人の男達の悲鳴が大きく谺した。

 

 ルシエルの狂気に満ちた顔。恐怖に顔を引きつらせる男達。その光景に村の皆は笑い、報復したいという気持ちを忘れた。それから男達は、自分達が何者でこの村に何をしにきたのか話始めた。


 やっぱり、こういう所。一見いつもおちゃらけて、ふざけているけど……ルシエルの、こういう所は素直に凄いなと思った。

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