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第1011話 『友好的な種族』



 ヌマグロを仕留めた。


 っと言っても、実際に仕留めたのは、ノエルとルシエル。そしてザカの活躍。沼の中でも、あれだけの凄い速さで私達を乗せて泳げる能力があったからこそ、狩りを成功する事ができた。


 ルシエルが私の背中を乱暴に叩いた。


 バシバシッ



「はっはっはっ! やったなー、面白かったなー!」


「い、痛いです! 強く叩かないでください」


「あ、わりい」


「それに仕留めたのは、ルシエルとノエルですから。私は何もできなかったです」


「いいじゃないの。オレ達、チームなんだから。一丸となって、ヌマグロと戦ったんだ。だから皆の手柄だぜー」



 ノエルとザカ、カルビもこっちに歩いてきた。



「そうだな、ルシエルの言う通りだ。あたしらはチームだ。だが最後の決め手は、間違いくあたしの一撃だったけどな」


「なんだと⁉ 違わーい! オレのシャイニングフェアリーアローだよ!!」


「いや、違うね。あたしの一撃だ」


「にににに、なにいいいい!! オレの手柄を横取りしよってからにいいい!!」



 あれ? さっき皆の手柄って……



「お前が、あたしの手柄をとったんだよ!! 解んねーのか?」


「解んねーよ!!」


「も、もう、もうもうもう! やめてください!! 私が悪かったです! 変な事を言ってごめんなさいでした。そう、私達はチームで一丸となってヌマグロに勝ったんですよね! アテナだって、この場にいたらきっとそう言ってますよね!」



 2人共、はっとした。そして反省した様子で力なく俯いた。



『……う、うん。そうでした。ごめんなさい』



 2人の言い合いに必死で割って入って止めると、ルシエルとノエルは落ち着いてくれた。


 アテナがいないから、皆もちょっといつもの調子じゃなくなっていたのかもしれない。私もそうだった。だから、気持ちを切り替えた。



「オオーーイ! ヤッタノカー!」



 誰かの声。見るとザカが、村にいるフィッシュメンの戦士達を、ぞろぞろと連れてきていた。ウオッシュさんもいる。



「マサカ、ホントウニ、ヌマグロヲシトメルトハ……オドロキヲカクセナイ」



 ルシエルが笑った。



「なっはっはっは。まあ、我々にかかれば、こんなもんですよ」


「トニカク、ミゴトダ。デハ、コレカラワレワレハ、ヌマグロヲ、ムラニハコブ」


「え? それなら、オレ達も手伝うぜ。なあ、ルキア、ノエル」


「はい、もちろんです」


「ああ、力仕事なら、得意分野だ」



 ウオッシュさんは、首を横に振る。


「イヤ、ハコブクライハ、オレタチガヤル。オマエタチハ、サキニムラヘモドッテ、クツロイデイテクレ。キョウハ、ゴチソウヲヨウイスル」


「ごごご、ご馳走だとおおお!?」



 ルシエルがよだれを垂らして興奮し始めたので、私はハンカチでルシエルの口の周りを拭いてあげた。



「ザカ、オマエモダ。ゴクロウダッタ。サキニ、モドッテイテクレ」


「ワカッタ。ソウスル」



 続々と『ヘドロプール』にやってくるフィッシュメンの戦士達。横たわる大きなヌマグロを見て、皆歓喜の叫びと驚きの声をあげている。



「ソレジャ、ムラニモドロウ」



 ザカの言葉で、私達はザカの村へと戻った。


 村に到着すると、族長が私達の帰りを待っていてくれた。一緒にいるのは、カトル君。私は彼に駆け寄った。



「カトル君!!」


「…………」



 もう手枷も何もされていない。族長は、私達との約束を守って、カトル君を解放してくれた。



「ありがとうございます、族長」


「ヤクソクダカラナ」



 族長は、ザカに目をやった。



「ニンゲントフィッシュメンハ、トモニモナレルトワカッタ。ダガ、フウフニハ、ナレナイ。フーナニハ、ウオッシュガイルシ、カトルニハ、コレデキッパリトアキラメテホシイ」



 カトル君は、牢から解放されたというのに肩を落としている。きっともう、フーナさんと一緒にはなれないから。でもそもそもフーナさんにとってカトル君は友人みたいな存在で、人生の伴侶としては見てはいない。


 カトル君もまだそれが受け入れられないとしても、心では理解しているのか何も言い返さなかった。



「ソレデ、ヨケレバ、ヌマグロヲミゴトニタオシテミセタ、ユウカンナルニンゲンノセンシタチヲモテナシタイ。ゴチソウヲヨウイスル。オウトヘカエルノハ、アシタニシテハドウダ?」


「ご馳走!! なあ、ルキア、ノエル!! 族長さんが折角、ご馳走用意してあげるって言ってんだからよー!! このまま一泊ここでしてかねーかな。いいだろ、宿代も浮くしよー。なっ、いいよな!」


「で、でも、ラトスさん、きっと心配してますよ」


「一日位、大丈夫だって。どうせ、もう陽が暮れるし……この森は、暗くて薄気味悪いだろ? 朝早く起きて、王都へ戻ろうぜ。な」



 どうしよう。ノエルを見た。



「いいんじゃないか、それで。確かに直に夜になる。危険は避けれるなら、避けた方がいいというのは道理だしな。王都へは、早朝戻って報告すれば、特に問題ないだろう」


「そうですか。それじゃ、そうしましょう」



 本当の事を言うと、私もこの村にもう少しいたかった。ザカやフーナさん、ウオッシュさんに族長。その他にも、フィッシュメンの皆さん。彼らから見たら、獣人である私も相当珍しい種族かもしれないけれど、皆とても親切に接してくれている。ザカもフーナさんもとてもいい人だし、この出会いを大切にしたい。


 ザカは嬉しそうな顔をした。



「ギョギョ! キマッタ。キョウハ、ウチデイッパクダ。デモソノマエニ、ソノカラダ、ドロダラケ。ヨゴレヲオトセ。ソレカラ、ゴチソウ、ウタゲガマッテイルゾ」


「やったああああ!! イエーーイ、宴だーーー!!」


「ちょ、ちょっとルシエル。そんなに浮かれて、みっともないですよ!!」



 ルシエルと一緒になって、はしゃぐカルビ。そして宴と言えば、お酒が飲めるかもしれないからか、ノエルもまんざらではないというような顔をしていた。


 もちろん、私も――


 それに、カトル君ともっとちゃんと話して、フーナさんに対する気持ちに整理をつけてもらってから、王都へ送り届ける事ができればいいなと考えていた。

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