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第1000話 『可愛いお魚ちゃん』



「ザカよ……オレは、お前に惚れちまったみたいだぜ」


「ルシエル、オデモダ。オデモ、オナジダ」


「その艶めかしいフォルム。大きなお目目、最高だぜ!」


「オマエモ、ソノキイロノカミ、スゴクキレイ」


「黄色じゃなくて、金色な」


「キンイロ」


「うーー、やっぱそこはよーー。いい感じに言ってもらわなきゃよー、アレだろ? よっしゃ、もっかい最初からやるぞ」


「イイゾ。ヤロウヤロウ」



 私は今、フィッシュフォレストにあるフィッシュメンの住む村、ザカの家にいる。


 どうにかして、カトル君を王都に連れ帰らないといけなにのに……彼は今、この村の牢獄に入れられている。理由は、この村に住むフーナというフィッシュガールを好きになってしまって、その子を勝手に村から連れ出してしまったから。


 フィッシュガールっていうのは、お魚の魔物で、雄はフィッシュメンという。どちらも色が違うだけで、見た目は雌がやや大きいという位で、特には変わりがないように見える。


 どうにかして、カトル君をここから連れ出す方法を考えなくちゃいけないのに、ザカの家にきてから、ルシエルとザカはずっとあんな感じで、フィッシュメンとエルフの恋愛物語とか言って小芝居……というか、遊んでいる。



「ああー、ザカさーーん。ザカさーーんは、どうして! どどどーしてザカさーーんは、ザカさんなのよん!」


「オオー、ルシエール! ルシエールハ、ドウシテ、ルシエールナーンダ?」


「ハア……」



 2人を見ていると、溜息が出た。もっと真剣に考えないといけないのに。



「っもう。さっきから何しているんですか、ルシエルとザカは」


「え? さっき言ったじゃん。これは、フィッシュメンと、エルフの恋愛物語ごっこをだな。ぷくくくく……」


「ルシエル。ワラッチャイケナイ。ギョホホ。ヒトノコイジヲ、ワラッチャイケナイ。カトルハ、フーナノコトヲ、シンケンニ……ギョホホホホホ」



 ルシエルもザカも、フィッシュガールに恋する人間の少年の話が面白いみたい。ずっと、この調子。



「2人共そんなに笑ってー。駄目ですよ」


「だって、仕方ないだろ? そんなの普通ありえないだろーがよ」


「アリエナイ、アリエナイ」


「ほら、ザカも言ってんじゃん! お互いに違う生き物だからな。見た目だって、相当違うし」


「そ、そうですか? 例えばさっきから、カトル君のフーナさんに対する思いをからかっていますけど、ルシエルだってザカとこんなにも仲良しじゃないですか」



 そう言うと、ルシエルとザカは目を丸くした。そして2人は急に仲良く肩を組んだ。



「そりゃ、ザカとは友達になったからな」


「トモダチ、トモダチ」


「友達にはなれる。でも流石に恋愛相手にはならねーよ。アテナだって、よくカルビの事を恋人みたいな事を言っているけど、あれだって本気じゃねーって誰でも解るだろ? それはなんでだ?」


「え? だってそんなの……」


「人間とウルフだからだ。ありえないんだよ、人間とウルフが互いに恋をするなんてなー。だからカトルは、ちょっとおかしいんだよなー」


「お、おかしいって、そんなのいくらなんでも、カトル君が可哀そうじゃないですか⁉」


「はっきり言ってやった方がいいって。そんなんしてると、互いに不幸になるってな。ところで、ノエルは何処にいっちまったんだ?」



 そう言えば、ザカの家にお邪魔して少ししてからノエルは、「ちょっと行ってくる」と言って何処かへいってしまった。


 てっきりおトイレかなって思っていたけれど、もうかれこれ経っている。家の出入口の方を見ると、いくつかの影が見えた。ザカが大きな声を放つ。



「コラ!! ナニヲシテイル!!」


『ヒャアアアアア!!』



 ザカの大きな声に驚いて姿を見せたのは、フィッシュメンの子供達。一番小さい子を合わせて5人もいる。ピンク色の子は、女の子だからフィッシュガール。とても可愛い。



「なんだなんだなんだーー!!」



 ルシエルは、子供達を見ると嬉しそうな顔をして彼らに近づいた。すると子供たちは悲鳴を上げて逃げ出した。ザカは、大きく息を吐いた。



「ハアーー。ムラノ、コドモタチダ。オマエタチヲミニキタ」


「なるほど、人間が珍しいんだな。へえー、でも子供は可愛らしいな。後で、遊んでやろうかな」


「あまり無茶をして、虐めたりしないでくださいね」


「わーってる、わーっているって。相手は子供だぜー」


「本当ですかー?」



 ジト目でルシエルを睨みつける。ルシエルは、そんな私の視線なんてまったく気にもしないでザカの家から表に出ると、キョロキョロとさっきの子供達を探していた。



「あれ? でも人間ならカトル君がいるのに……」


「ロウゴクニハ、キョカナク、チカヅイテハ、イケナイキマリガアル。ソレニ、オデタチ、コワイニンゲンシカシラナイ。ダカラ、ルキアタチニ、キョウミアル」


「そういう事だったんですね」


『ギャアアア!!』


「うへへへ、逃げすか!! 捕まえてやるぞおおお!! このかっわいい、お魚ちゃん達めえええ!! ヒャヘヘヘヘ」


 ワウワウ!!



 あれ? 騒ぎが大きくなっている。


 私とザカは、慌てて家の外に出た。するとルシエルとカルビは、フィッシュメンの子供達を追いかけまわしていた。さっきのフィッシュガールの女の子には、カルビがまとわりついている。悲鳴。だけど、子供達の表情は笑顔。

 

 何事かと集まってきた他のフィッシュメンの大人達も、ルシエル達が村の子供達と楽しそうに遊んでいるのを見て安心し、笑っている。こういうルシエルの破天荒な性格は、凄いなって常々驚かされる。



「待て待てー!! お前達を捕まえて、干物にしてやるぞおお!! それはそれは可愛らしい干物ができあがるだろうなあああ!!」


「ニ、ニゲロー!! ヒトクイ、エルフダー!!」


「キャハハ」


「逃がすな!! 追えーー我が同士、カルビよーー!!」


 ワウワウーー!!



 カルビは、フィッシュガールの女の子に跳びつくと、顔をペロリと舐めた。女の子は、嬉しそうにカルビを抱きしめた。


 子供達だけでなく、ルシエルもカルビも凄く楽しそう……だけどこの分じゃ、暫くこのまま子供達と遊んでいるかもしれない。


 私は、ちょっと思った事をザカに聞いてみた。



「そうだ」


「ギョ?」


「そう言えば、カトル君はフーナさんの事が好きなんですよね。フーナさんは、カトル君の事をどう思っているんですか?」


「ギョーー。ソレナラ。コレカラ、ホンニンニ、チョクセツキイテミルカ?」



 カトル君が、種族を超えて好きになってしまった人。会えるなら、会ってみたい。それにカトル君を、ラトスさんのもとまで連れ帰る為には、彼を説得しなければならない。それなら、フーナさんの事を知っておいた方がいい。



「はい。フーナさんに会えるんでしたら、是非お願いします」


「ギョ! ワカッタ! マカセロ!」

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