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第10話 『冒険者ギルド登録』 (▼ルシエルpart)





 いや、まいった。

 

 流石に大変な事になってしまったと思い、藁にも掴む思いで何処かで聞いたフレーズを思い出して、それで謝罪をしてしまったが…………アテナはどうやら許してくれたようで良かった。もう怒ってない感じがする。


 後で騎士団に聞いた話なんだが……巷では、オレがやった事はストーキング行為というのだそうだ。全く窮屈な世の中になってしまったものである。それに、それをやってしまった理由も一応は説明して納得してもらった。


 ギゼーフォの森で、キャンプしていたアテナと出会って、知り合った事によりオレは、キャンプに興味が湧いた。テントを張って思い思いに過ごしたり焚火をしたり……キャンプで食べた飯は最高だった。それで、オレもキャンプをやってみたいと思った。キャンパーというやつに、なってみたいと思った。むしろ、もう自分自身をキャンパーだと思っている。見習いキャンパー。


 でも一人じゃどうすれば良いのか勝手が解らないし、アテナとは気があったし何よりアテナと一緒にキャンプをしたかった。だから、あの時アテナについていかなかった事を非常に後悔した。



「なぜ、あの時にオレはついていかなかった……」



 それから、暫くしてアテナが冒険者だという事を思い出した。オレは違う――――エルフの里には、冒険者ギルドなんてないからだ。


 でも、世の中には、冒険者になるエルフはそれなりにいたりすると聞く。


 アテナが冒険者だというのなら、オレも冒険者になればアテナと一緒にパーティーが組めるのではないか。勿論、アテナがいいって言えばだけど。そうすれば、一緒にキャンプも冒険もできると思った訳だ。



「それで……私を探して見つけたはいいけど、一度別れてすぐだったからタイミングが難しくなって、なかなか出てこられずにコソコソしていた訳ね」


「そ……そうだ。オレは、冒険者になってアテナとパーティーを組んで一緒に旅がしたい。キャンプや冒険を一緒にしたいんだ。一度、別れた後に、その気持ちに気づいたんだ。…………普通……冒険者は、パーティーを組んだりするんだろ? なら、オレとパーティーを組まないか? ……だ……駄目か? もしかして迷惑か?」


 こんな時、なんて言えばいい? こんなのじゃ、伝わらない。そもそもオレは、気持ちを伝えるのは、得意じゃない。……どうやって気持ちを伝えればいいんだ?



 アテナは、目を丸くし暫く考える素振りを見せたが、すぐににこりと微笑んで、



「わかったわ。いいよ。ルシエルが仲間になればこちらも心強いし、旅もキャンプもきっと今よりも楽しくなる。こちらこそ、よろしくね」



 そう言って、握手の為の手を差し出してくれた。すると、オレの目から大粒の涙がこぼれた。なんで? 涙が止まらない。


 アテナは、びっくりした様子でオレを優しく抱きしめて頭を撫でてくれた。



 …………うう……仲間っていいな。



 エルフの里では、オレの事を誰も…………



「はっはっはっ。良かったな。アテナ様のご厚意に感謝するのだぞ」



 赤い髪の女剣士が割り込んできて言った。


 ……確か、ローザって言う騎士団の。……っていうか、なんでこいつがいる⁉ 



「じゃあ、まず冒険者ギルドに行ってルシエルの冒険者登録を済ませよう。テント専門店に行きたかったけれど、それはその後ね」


「はっ! 承知致しました」


「そう言えばローザは、冒険者ギルドに登録してあるの?」


「いえ。私は、このクラインベルト王国の騎士団ですので、冒険者の登録はしておりません。ですが、特に問題はないでしょう。アテナ様に同行しておりますゆえ」


「様はやめて、様は。アテナでいいわ」


「御意! アテナさ……アテナ」


「ところでどうして、おまえが付いてくる?」


「おまえではない! ローザ・ディフェインだ。貴様だけでは、心配であろう? すでにこの街で問題も起こしているのだぞ」


「ローザ、ごめんね。ルシエルも悪気があった訳ではなくて……」


「いえっ! アテナさ……は、全く悪くはありませぬ!」



 あの騒動の後、オレとアテナはローザに騎士団の詰め所に連れていかれた。そして、早速一人ずつ取り調べ室で尋問するのだと言って、まずアテナが連れていかれた。

 

 そして、帰ってくるとローザ率いる騎士団は、アテナの子分になっていた。……全く驚きである。何があったのか? もしかしたら、サキュバスが使うようなチャーム的なスキルを使ったのかもしれないとも思ったが、ローザ達がアテナにいきなり従順になった以外は、特に変わりはないように見える。


 ふーむ。そうすると、考えられることは袖の下……しかし、この堅物そうなザ・騎士道のようなローザが袖の下で篭絡されるとは考えにくい。


 そう言えば、はるか東方の国の伝説で、キビ団子と言う団子で子分ができる話をきいた事がある。


 …………キビ団子か? もしかして、キビ団子なのか?



「ここよ。ルシエル、ついたわよ」



 あれこれ考えながら歩いていると、何時の間にか冒険者ギルドに到着していた。


 冒険者ギルドは、3F建ての建物で1Fがフロント兼酒場になっていた。壁には、賞金首や仕事の依頼などの告知した貼紙が無数に貼られている。


 フロントに付くと、受付嬢を呼んだ。



「この子なんだけど…… 1名、冒険者登録したいんですけど?」


「いらっしゃいませ。1名様の冒険者登録でございますね。それでしたらまずは、こちらをご記入くださいませ」


「はい。じゃあ、ルシエル」


「わかった」





 登録書類。


 名前――ルシエル・アルディノア


 種族――ハイエルフ


 職業――アーチャー


 …………etc





「それでは、冒険者登録料の大銀貨3枚お支払い頂きまして、ランクF冒険者登録完了になります」


「え? 金とるの?」


「は……はい。登録には、手数料として、登録料をお支払いいただきます」



 青ざめる。オレは、金なんて持っていない。そもそもエルフの里では、物々交換が主だった。どうしよう。



「まさか、おまえ……金を持っていないのか?」



 ローザの言葉に凍り付いた。



「ローザ! おまえじゃなくて、ルシエルね。一緒に行動するなら、ちゃんと名前で呼び合いましょう」


「ぎょ……御意! 申し訳ありませぬ。アテナさ……」



 ローザがそう言うとアテナは、微笑んで自分の荷物から大銀貨3枚を取り出して代わりにギルドへ支払った。



「アテナ! これは⁉」


「だって、お金持ってないでしょ? 冒険者になれば、仕事もできるしお金も入るから大丈夫。とりあえず、今日のところは登録祝いってことで私が負担するから心配しないで」



 なんてことだ。



「うううーーすまんーー」



 大粒の涙。大泣きするエルフが珍しいのか、ギルド内にいる周りの冒険者達が、何事かと見てくる。だが、そんな事はどうだって良かった。


 アテナには、色々恩ができたな。



「ルシエル。しっかりと、アテナさ……に感謝するのだぞ」


「言われなくても、わかっている!!」


「ところで、ずっと気にはなってたんだけど。ルシエルってさあ、どうしてエルフの里を出て旅していたの? もう冒険者になってしまったけど、冒険者になりたいと思ったのは私と出会ってからでしょ?」



 うっ……



「…………パパとママがね……若いうちにもっと見聞を広めておかなくちゃ立派な大人になれないってゆーからさ……」



 棒読みでそう答えるとアテナは、



「ふーーん、そうなんだ。パパとママがねえ」



 っと、オレが苦し紛れでそう答えているのだと、見透かしているような様子で答えた。目が笑ってないので、そうなんだろう。



 冒険者ギルドを出ると、次はテント専門店に向かった。










――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ルシエル・アルディノア 種別:ハイエルフ

クラスは【アーチャー】。精霊魔法も使える。お肌がプリプリピッチピチの114歳。長い髪の金髪美少女エルフだけど、黙っていればという条件付き。一人称は、「オレ」。野菜より肉が好き。とても立派な弓を所持しており、ナイフ捌きに関してもなかなかの腕を持つ。ギゼーフォの森でアテナと知り合い、ご飯をご馳走になる。それからアテナをストーキングしてエスカルテの街までつけた。そして、それに気づいたアテナに逆に追い回される事になり、事態は大騒ぎになって街の治安維持の任務についていた王国騎士団ともやり合う事になってしった。そして、問題を起こしたとして、その王国騎士団のローザ団長にアテナ共々拘束された。その後は、冒険者としてアテナとパーティーを組む。


〇アテナ 種別:ヒューム

Dランク冒険者で、物語の主人公。キャンプが趣味で、今は薬草を使用したお茶作りもマイブーム。ギゼーフォの森で知り合ったハイエルフのルシエルとパーティーを組む事に。これまで仲間を作って冒険者として活動した事がないので、ルシエル同様にちょっと緊張している。でも、これから楽しくなりそうな予感もしている。


〇ローザ・ディフェイン 種族:ヒューム

クラインベルト王国、王国騎士団の団長。現在はアテナが自家製の薬茶を売る為に立ち寄ったエスカルテの街の治安維持の任務についている。外見は赤い髪のショートヘアで凛々しい感じ。法を厳守する性格で、腕にも自信があって逆に太々しく見えたりもする。街で騒動を起こしていたアテナとルシエルを拘束し、詰め所で尋問する。アテナを尋問した後に態度を急変させた。二人の間に何かがあったものと推測できる。アテナとルシエルを釈放後、ずっと二人の後についてくる。っというか、アテナにべったり……


〇エルフの里 種別:ロケーション

エルフの里は、いくつもある。エルフやフェアリーが済んでいたりする場所で、ルシエルの言うエルフの里とはかつて自分が住んでいたいた里の事である。


〇冒険者ギルド

村にはあったりなかったりだけど、街にはだいたい冒険者の為のギルドがあり、冒険者はそこで様々な依頼を受注及び報酬を受け取る事ができる。依頼は、魔物退治に盗賊の討伐。商人の護衛や行方不明の家畜の捜索など様々。ギルドで依頼を受けるには、登録料を支払い冒険者の登録をする必要がある。冒険者への登録料は、大銀貨3枚で支払いと書類記入が済むとその場でFランク冒険者として登録される。


〇キャンパー 

【ウォーリアー】【ウィザード】【ランサー】【ソードマン】のように、ちゃんとしたクラスではない。本人が自称しているクラスのようなもの。キャンプを愛していて、趣味にしているもの。キャンプと一言にして言っても、色々な魅力がある。アテナは自分の事を冒険者というよりは、キャンパーとして周囲に認知されたがっている。だけど、冒険者と名乗る方が都合が良い場合がある。


〇アーチャー 種別:クラス

冒険者ギルドが、冒険者を区別する為に分けているクラス。アーチャーは、弓矢の扱いを得意としている。アーチャーの使う武器として、他にもボウガンなどがあげられる。


〇ストーキング行為 

特定の誰かをずっと付け回してまとわりつく事。やったらダメです。ストーキング行為は、やる方もやられる方も地獄を見ます。





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― 新着の感想 ―
[一言] 「青ざめる。オレは、金なんて持っていない。そもそもエルフの里では、物々交換が主だった。どうしよう」 物々交換する物を持っているのでしょう。それを売ったらいいやん。街に来たと言うことは、物々…
[一言] なるほど つまり、里に友達は居ないのね 性格のせいかな
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