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3話 料理が好きで、ピアノが趣味です
電車に乗ってSNSを見ていると、マッチングアプリの広告が流れてきた。
ドラマティックなプロポーズや結婚式のストーリー。
ふと上を見上げれば、結婚式場の広告。
スマホも電車の広告も私に結婚をオススメしてくる。
いや、これは自分の意識が「結婚」や「婚活」に目を向けやすくなっていているからかもしれない。
どちらにせよ、私はそういうことが気になる歳になったのだ。悔しいが認めるしかない。
もし私が婚活に行って「料理が好きで、ピアノが趣味です」「子どもがてきたら専業主婦になって家庭を支えたいです」と言ったら相手はどんな顔をするだろうか。私は昭和にフィットした女だったのかも知れない。いや、「飯」「お茶」と夫(仮)に指示されてもマジで無理だから令和でよかった。
世間がステレオタイプな女性像を変えようとする雰囲気が高まるほど、自分の肩身が狭くなっていく感覚がする。
駅に着くと、スーツでピシッと決め、ヒールを響かせて歩いている女性がいた。
私はぺったんこのパンプスでペタペタと歩きながら、こんな私も嫌いじゃないのよと、背筋を伸ばした。