表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

悪夢の始まり

 こんにちは。私の名前は佐藤愛。ぽっちゃり体系のしがない派遣社員です。だけど、長く連れ添っている夫もいて、可愛い愛犬もいて、楽しくやっております。

 しかし、これでも実は、一つだけ大きな悩みを持っていますが、本当は早めに病院に行っていれば、こんな事にはならなかったのに……。あぁ……。




 実は21の頃から、惣菜専門の食品加工会社の中にある工場で働いていますが、今でも常に人出が足りない状態が続いています。

 長期雇用の為、社会保険等も派遣会社の方でかけて貰っていますが、申告も現場である会社に許可を貰ってから、有給を使用しないといけない規則な為、一々上司やパートリーダーに申告しないといけなかったのです。

 正直言うと、申告する理由を言うのが面倒くさかった私は、生活費を稼ぐ為と思って、週6勤務の休み無しで働いておりました。


 それと、そこの会社は今住んでいる所から、ワゴンタイプの送迎車で移動すると、1時間かかる場所にあるため、朝がとても早い。なので、朝の6時半にはもう、送迎車がアパートの前に停まっているのです。

 私は頭がぼーっとする中、送迎車に乗りながら、貴重な1時間を寝るのに費やす形で、毎日を目まぐるしく過ごしておりました。


 しかし、工場に着いたら、指定の制服に着替えて仕事モードにもならないといけないので、疲れが常に溜まった状態での仕事は、今思うと、正直しんどかったです。


 それに加えて最近の私の部署は、事務の人らが何故か無理矢理びっちりにさせて、残業込みの予定表にしていく。その為か、自分ところだけ、びっしりと製造予定の商品が書かれた予定表を見ては、陰湿な空気が現場中に充満していた。

 中には、定時で帰れないと悟る人もいれば、常にイライラしては、メンバーに愚痴を漏らす人もいればで、正に十人十色と言ったところです。

 ここのリーダーの澤部さんも、最初に異動してきた時はよく笑う人だったし、私と違って普通体型で、皆にも優しく接したりと、良い所がある人。メンバーの平均年齢は60ぐらいの方が大半だが、みんな笑顔が素敵な人だったし、冗談も言い合う様な明るくて活気のある部署でした。


 それなのに、最近は忙しさと残業に拍車がかかっているせいか、みんな余裕が無くて忙しくて、誰かがミスしては誰かがピリピリとしている。

 私はその豹変具合に、とても怖さを感じているのが本音だ。だから、その中で休みを貰いたいと言ったものなら、周りからの無言の圧力に加え、すごい勢いで睨まれる事もあった。


 そんな環境の中、私は休まずに働いていた為か、よく上司や違う部署のパートのおばさんから褒められる事も多かった。

 確かに辞めていく人が多い中でのフル出勤は、自分でも鋼の心を持った鉄の女だな。と、思っていた。


 そして……


「愛ちゃん! 休まずに頑張っているね! はい!お菓子いっぱい持ってきたからあげるわぁ!」

「えっ!? あ。いつもありがとうございます!」

「いえいえ。いいのよォ~」


 目元を軽くブラウンで弄ってます、かの様な軽い化粧が印象的な違う部署のパート 吾妻(あづま)秀子(ひでこ)さん。このおばちゃんからは、よく、大量のお菓子を持ってきては、私に渡してくる。

 かなり気さくな方で、見た目は60代ぐらいの方。普段はみんな、会社で過ごす時は、帽子を含む全身桃色の制服を着ているので、あまり詳しい髪型は分からない。だけど、よく小さくて黒いバックを持ち歩いている印象だ。

 まるで、とあるアニメの青狸の四次元ポケットみたいに、バックから無限大にお菓子を出してくるのには、毎度驚いてしまう。


「いつも何時ぐらいに家出てるのさー」

「6時半には送迎車が来ますね……あはは」

「朝、辛くないんかぃ?」


 と、大阪のおばちゃん並みに訊ねてくる秀子さん。


「んまぁ。朝は辛いのですが、この仕事、とても楽しいので、長く続けられたらいいなと思っております」


 私はと言うと、常に眠たい眼を擦りながらも、満面な笑顔で対応していた。笑顔は何たって、何も出来ない私の唯一の特権でもあるからね。よく遠くにいる祖父母からも「太陽の様な笑顔だ」なんて言われたもんだ。


「そうだね! 愛ちゃんの笑顔、いつも明るいから元気もらえるわよ!」

「あはは! そう言って頂けると、とても嬉しいです! まぁ。強いて言うなら最近残業が多いのが悩みですが……あはは……」

「でしょーねー。あそこよく残業多いから大変だと、隣の部署で見てても思っているのよ」

「あぁ、そうなん……、ですね」


 だけど、眠気もあるので、しんどそうに答える私。


「でもね、何かあったらいつでも私に相談していいんだからねっ!」

「あ。ありがとうございます。お気持ち、感謝致します」


 そして、桃色の制服に身を包んだ秀子さんは、そう言うと、更衣室から出て行った。だけど、この人の会話も、険悪な環境に置かれている私にとっては、楽しみの1つでもあった。

 まるで、孫とおばあちゃんみたいな穏やかな会話が聞きたくて通っていたりもする。まぁ。何事もなく、このまま長く続けられたらいいな。と、この時は思っておりました。が……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ