表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/22

第八力 団結力

 善助が高校生になって迎える2度目の夏休み、本格的な受験勉強に入る前に家族で旅行に行くことになった。

 善助は海を主張したが、妹(優子)は高原でパラグライダーをしたいと譲らなかった。

 厳正なるじゃんけん3本勝負の結果、高原に行くことに決まり、善助はリビングのソファーに倒れ込んで悔しがり、優子は早速パソコンでどこの高原にするか、鼻歌交じりで調べ始めた。


 ☆☆☆


 優子の選んだ高原はオートキャンプ場で、善一郎の運転で向かった。

 昼食は優里が作った弁当を車中で食べた。

 車窓から流れる山並みを眺め、車内には優里の好きな荒井由実の音楽が流れ、善助と優子はタブレットでパラグライダーの乗り方を調べ、二人で手順を復唱しながらあーだこーだと話していた。

 優里は荒井由実を口ずさみながら、いい旅行になりそうだなと思った。


 前方に横転したショベルカーが道路を塞いでいるのを見るまでは・・・。


 優里がショベルカーを目視してから、車が停止するまでおろらく1秒くらいだっただろう。

 善一郎は車を止める否や、「優里さん!ショベルカーを手前に10メートル動かして!善助はショベルカーまで母さんを運んだら、ショベルカーの向こうにいる妊婦さんを100メートル前方に運べ!」と叫んだ。

 「えっ?!えーっ?!」とうろたえる優子に、「優子はとりあえず落ち着いてそこに座ってればいいよ。」と善一郎は優しく言った。


 車のドアを開けて出て行ったと思った兄の姿は見えなくなり、驚いたことにいつの間にか母はひとりで横転したショベルカーの横にいる。

 「お母さん!何してんの!?危ないよー!」と叫ぶ優子を、「大丈夫、大丈夫だから。」と善一郎は一生懸命なだめた。

 優子がハラハラしながら行く末を見つめていると、母はショベルカーの後方に回り込んだ。

 すると、ショベルカーがズリズリと動き出し、こちらに向かって10メートルほど動いたところで止まった。

 母がショベルカーの後方からまた姿を現わして、こちらにテケテケと走ってくるのを見ていたとき、車のドアが開いて兄が知らない女性を抱えて入ってきた。


 「父さん、どうしよう。気絶してたから連れて来ちゃった。」と兄は言う。

 ショベルカーから戻った母は「善一郎さん、あれくらいでいい?」と言う。

 状況が飲み込めずに頭を抱える優子をしり目に、善一郎は、「二人とも良くやった!中に入ってドアを締めて。」と言った。


 皆が黙って車内で待機していると、「ドドド―ッ」という音を立てて、先ほどまでショベルカーがあった場所に大きな岩が転げ落ちてきた。

 車内の一同が「おおーっ!」と声を上げたとき、善助が連れて来た妊婦さんが目を覚ました。

 善一郎は、優子に対して口の前に人差し指を当てるポーズをした。

 優子は聞きたいことは一先ずお預けなのだと理解し、一人で頭を抱えて唸った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ