世紀末にさようなら
明日世界が滅ぶんだってと誰かが言った。それは私だったかもしれないし、自分の中のもう一人の自分だったかもしれない。
だとすれば、とっても痛い子だと思う。ちりん、ちりんと鈴の音が鳴れば滅びの合図。風も吹かずに鳴る鈴の音はどこか透明のようでいてただ気持ちの悪い音に聞こえる。
「あ、また一つの町が滅んだ」
「滅んだって何で?」
「滅んだのは滅んだんだよ」
「だから何で?」
「滅ぶって何?」
「一つの町が無くなっちゃうこと」
「それが滅ぶ?」
「そう、【町が滅ぶ】んだ」
自分一人だけの遊びには誰も入ってこれない。言葉遊びも、滅びの唄もすべて自分だけの世界のもの。だから実際には世界は滅んでいない。
何度もその話をしていると、ずっとそんな事ばかり考えているように思えるけれど、実際に考えていることは同じことばかりなのだから仕方がないし、自分なのだから思考回路は同じである。
二重人格でもなければ、自分を二人に分けているだけの二人遊び。
「ねぇねぇ、君は誰と話しているの?」
ふっと私の前に影が差した。
「誰って私だよ」
「だから、その私って誰? ぶつぶつ言っててめっちゃ気になったんだけど」
「私は私。心の中の私だよ」
「変だからやめな」
「私の中に入ってこれるのも私だけ。あなたが入ってきたのは予定外だ」
「そう言われても気になったし……」
いまから殺そう。
何を殺す?
それは……ね……。
「今日から私とあなたはお友達?」
話しかけてきたのだからその責任は取ってほしい。
人殺しをしたのだから。
正確には、自分を殺したのは自分。
痛くない、痛くないと悲鳴を上げるのも痛い痛いと悲鳴を上げるのも。
全部全部自分のせい。
だったらいっそ殺せばいい。
一緒に。
死のう?
次の日、二人は遺体で発見された。
心だけを抜かれて。
死神の手紙をもらったから、心がなくなった。
でもそれでいい、その死神の仲間になったから。
ね?
うれしいね、さっちゃん。