97話 リュウとケイの見据え ーケイサイド②ー
「ケイもやってみるか?割りと楽しいもんだぞ?」
「パス、俺は作るより食う方が性にあってるわ。それにしてもジンのやつ大丈夫なのか?これから出かけるんだろ?」
「ジンは9時半に切り上げて貰う予定だ。それにこれも10時までに終わる。……もしかしたらその前に食材が切れる可能性も出てきたから食べるなら今のうちに並んだ方がいいぞ」
ジンのことも考えた時間帯で切り上げか。
そういった気遣いは兄貴らしい。
「列にはシルが並んでるから大丈夫だ。それにしても『割りと楽しい』って出てくるか」
「ああ、ライジングサンズをお前に託した後、俺は何か料理店でも出店しようか考えるくらいに楽しいな」
「兄貴、冗談はよしてくれよ。まだライジングサンズも始まったばっかりじゃねえか」
俺にいつかライジングサンズを託してくれる話は有難いがそれはまだ先の話であって欲しい。
そもそもライジングサンズを組んでまだそんな日にちもたってない。
俺はまだ兄貴に何も返せてない。
俺はまだ兄貴に教わりきれてない。
俺はまだ何も兄貴を越えていない。
「そういう隠居発言は俺に完全にライジングサンズを託せるようになってから言って欲しいぜ」
「ハハ、なら早く俺が託せる所まで成長してくれ。お前は俺を簡単に追い越せる程のポテンシャルがあるんだからな」
「簡単に言ってくれるぜ……」
「簡単にやってくれよ、期待してるんだぜ?」
シンプルだが今まで言われた中で一番難しい要望だ。
しかし、こうして色々と話しかけてくれるとジンが言ってた勘を信用したくなる。
「やっぱりリュウさんにジンさんじゃないッスか。どうしたッスか?」
「それはケイに聞いてくれ、並んでる人がいるからな。二人分でいいな?」
「お願いするッス」
「そしたらそのまま受け取り口で受け取ってくれ」
「了解ッス!ケイさん、受け取りにいくッス!」
シルが俺の手を強く引っ張ってくる。
少し不機嫌そうにしている。
一人で並ばせたからか?
「おう……って引っ張るなよ、悪かった一人で並ばせて!」
「ケイさんの奢りッスよ!?」
「わかったって」
受け取り口で二人分の金額を払い、ジンからオムレツを受けとる。
「お待たせ、ケイ」
「サンキュー、うまそうだな」
「それいい出来だからうまいと思うよ。大分上手く出来るようになったし」
「こりゃ期待大だな、シル、早く食べようぜ」
空いている席にシルと座り、早速食べることにする。
「それじゃ頂くか」
「頂くッス」
スプーンでオムレツに切り込みを入れると、割れた所から半熟の卵が出てくる。
一口大に分け、口に運ぶ。
「……うめえな」
「うまいッスね!卵がフワトロッスよ!?」
ケイがいった通り、中の卵も勿論、外まで柔らかい。
塩、胡椒とシンプルな味付け、ただ塩辛くなく、薄味でもない、絶妙なバランスが取れている。
プラスにバターの香りがさらに食欲がそそられる。
添えられてるトマトソースを付け、もう一口。
トマトの甘酸っぱさ、ほのかに香るガーリックが、オムレツの完成度をさらに上げていく。
「ジンのオムレツもすげえけど、このトマトソースのレベルが高いな」
「昨日から思ったんスけど、ここの食堂の料理のレベル高くないッスか?」
「確かにな、昨日出された料理も全部うまかったし……その食堂からスカウトされる兄貴とジンはやっぱり料理上手かったんだな」
「リュウさんって本当になんでも出来るんスね。少し嫉妬するッスよ」
「気持ちはわかるわ」
それにしても、凶鳥討伐の任務でジンと偶然にも会えてよかったなと染々思う。
別にジンが作った料理に何かしら強化魔法があるとかそういうことは無いが、こうした料理が食べられるってだけでやる気は出るし、不味い料理が出て来て精神的にやられることはない。
それでいて料理以外のこともサポートが出来て、兄貴の負担は軽くなってるはずだ。
「……正式加入してくれねえかな」
「何か言ったッスか?」
思っていたことが口に出てたみたいだ。
俺らしくもないか。
「なんでもねぇよ。それより早く喰っちまおう。今日はアレの日だろ?」
食べるのは大好きですが、食事描写も食レポも苦手です。




