86話 知る者知らぬ者
「タミーさん……ちょっと引いちゃいます」
「嘘!?」
「そりゃそうでしょうよ……後半なんか……」
「ジンにまで言われるとは……私も落ちぶれたわ……」
俺に対してキツイ返しが来ないくらいマーヤの一言が心に突き刺さった様子だ。
「でも納得したわ。アンタと別れた後、マーヤが活力のない顔してたのが最近になって戻ってきた感じがしたのよね……最初なんか毎晩ジンの名前を呼びながら泣いてたし」
「タミーさん!?」
「本当になんでアンタがいいんだろうね。私にはさっぱりわからないわ」
そりゃマーヤと釣り合えるくらい自分が有能とは思ってないよ。
でもその話が本当なら浮かれてしまう。
「話を戻すわ。マーヤの嫉妬の件は、少なからずアンタのお陰で連絡先の交換が出来たから少しは許してあげるわ。でも問題は複合エレメントを持っていてその素質を伸ばそうとしなかったことが許さないのよ」
失礼な話ではあると思うが、俺が複合エレメント持ちだってことはギルドの加入試験に判明したものだ。
どれだけ使える魔法が初級魔法以下であろうと使える魔法の種類が5種類以上なだけで複合エレメント持ちとして騒がれた。
結果、全て初級魔法以下でだと判ると
『騒がせやがって』
『全部初級以下で魔物相手に使えない』
『唯の目立ちたがり屋だったか』
その場にいた人達には呆れられた。
でもこの魔法は孤児院入るまでの生活、その後も頼っていた俺としては悲観することはなかった。
それに、クリアアトランティスに編入になり、始めは魔法のレベルを上げる努力をしなかったのは事実であり、タミーが言っていることに間違いはない。
「そうだ、複合エレメントって判断された後、その素質を伸ばす努力をして来なかったのはー」
「違う」
マーヤが会話に入り俺の方を見て話始める。
「違うよ。なんで否定してるの?私が夜の見張りをするようになってから魔法の練習してたじゃん」
「あれは練習って言わないよ。結局数日しかやってなかったし」
「数日しかやってなかったんじゃなくて数日しか出来なかったの間違いだよ。何度も出せる魔力以上出そうとして何度も気絶してたじゃん」
そう、初めてココアをマーヤにあげた夜以降、少し時間に余裕が出来、魔法のクオリティを上げる為に練習し始めた。
結果、何度も気絶し、マーヤに迷惑をかけた。
自分が出せる魔法以上のものは出ず気絶すること数日。
これ以上体に負担をかけない為にとマーヤに止められた経緯がある。
結局、俺の魔法は初級以上にならずに終わってしまった。
「確かに魔法は上達しなかったけど、ジンはあの時努力してたよ。短期間だろうと成果は上がらなくても、苦しんでその時出来ることをしたんだよ?ジン本人が肯定しないとダメだよ。私はそういった所も含めて2ヶ月間一緒にいたんだから知ってるんだよ?」




