82話 夜の会話
宿屋を出ると冷たい風が俺の皮膚を撫でていく。
冷え込んできたとは思っていたけど、これからさらに冷え込んでくる季節。
オーガ討伐までに雪が降ってきたら移動面、戦闘面で悲惨になる。
その前に討伐できればいいんだけど……
今は、マーヤを早く送ってあげないと。
今回は近くで良かった。
「ジン……」
「あ、起きた?」
「うん……急に寒くなってきたから……って私のせいでゴメンねジン」
「別にマーヤのせいってわけじゃないと思うよ。お酒を飲ませた側にも原因あるし……俺が席を外さなければ断ってあげられてたんだけど」
「でも、お酒飲んだことなかったから飲んでたのは変わらなかったかな。それにこうしてジンがおぶってくれたし良かったかな」
俺としてもマーヤをおぶることができて良かった、とは口が裂けても言えない。
マーヤが言っていた通り、俺はムッツリなのかも知れない。
それにしてもあれだけ飲んでいたのにこんなに対話できるとは。
酔いも覚めるのも早い体質なのかも。
「そういえばマーヤ、体調は悪くない?気持ち悪いとか……」
「寧ろフワフワして気持ちいいかな、実際浮かんでるみたいだし。おぶられるってこんな感じなんだ」
「おんぶされるのは初めて?」
「小さい頃はあったかもしれないけど、物心ついた時からはないかな……お父さんはいなかったし弟がいつもおぶって貰ってたから」
マーヤがお父さんの話をしてなかったのはそういうことだったのか。
弟が産まれた後、もしくはその少し前に何かしらの理由でお父さんはいなくなったのかな。
「だから少し嬉しかったりするんだ。もしお父さんがしてくれてたらこうだったのかなって……」
「小さい頃ならもっと背中が大きく感じられたかもしれないね。俺の背中じゃ小さいかも」
「そんなことないよ。いつも私達の前に出ていつも身体を張って守ってくれた背中が小さいわけがないよ。ありがとうジン」
マーヤの腕に力が入り、より密着になる。
密着になることでマーヤの心臓音が聞こえる。
少し鼓動が早くなってる気がする。
「ねえ、重くないかな。もう歩けそうだし辛かったらもういいよ?」
「辛くないし重くないよ、嫌じゃなきゃこのまま宿屋まで送ってもいいよ」
「じゃあそうさせて貰おうかな、えへへ」
少しの時間、そのままの体勢でマーヤと宿屋に向かう。
密着しているおかげかお互いそれほど寒くなく宿屋に向かえた。




